探り探られ無我夢中
歪に動く世界。
歪に動く社会。
荒波は形を歪へと変えるのだよ。
◆
「本当に店内モニターの破片まみれだなぁ」
深いため息交じりに堤が言う。
一同が足が硝子を踏み、パキンパキンと鳴る。
(このおっさんに。他の誰もが、口を閉ざしてやがんのな)
重い空気に、空気の読めない彼も。
肌に感じたのか、
(あー~~俺。なんだって、こっちの連中と一緒にいんのかしらんw)
ほんの少しだけ後悔をした。
別にどうでもよかったのだが。
◇
『君は行った方がいいかな。ほら、後々のことか。諸々に色々と、あったりすることもあるからね』
◆
ここでも、彼の背中を押したのは。
井之頭豊だった。
あまりに真剣で、強い口調と強い目力に。
「はい」だなんて頷いた自分の弱さに舌打ちをした。
(絶対。俺だけ場違い人間じゃんか~~井之頭さんンん~~っ)
そこはゲームセンター《MOO》内にある。
3階フードコーナー。
「ま。商魂逞しいとはいかなかったようだね」
閑散とし、誰もいない場所になっていた。
堤は場所を見渡すと、
「まあ。ゆっくりと話しは出来そうじゃないか」
奥の大人数用の席に向かった。
「あー~~堤、室長??」
おずおずと手を挙げたのはアジサイだった。
「? はい。何かな? 無花果紫陽花君」
プレイヤー名《アジサイ》の彼は。
無花果紫陽花、である。
万年4位を愛着を込めて呼ばれ、親しまれ。
社内での評価は圏外だ。
しかし、勤歴5年の安定した評価に、頼れる存在でもある。
「仕事依頼がはいっちゃった、んスけどぉう?」
「いいよ。行っても」
「はい!」
「職務を全うして頂戴」
「はい!」
安堵の息を吐いて奔る無花果に、
「ああ! 今日のゲームでの報告書は明日までに3枚以上の提出して頂戴っ!」
大声で堤が叫んだことに、無花果の身体が、膝から折れかけてしまうも。
大股で、大きく手を振って走った。
(あれ。聞えませんでしたオチで逃れようとか思ってそうだな。絶対)
「常盤まさみ君は任務依頼は着てないかい? 大丈夫なの?」
「はい。今日は休日ですので」
「ああ。そうなの」
プレイヤー名《常盤御前》の彼女。
常盤まさみ、である。
彼女も同様に、社内での評価は圏外だ。
だが、彼女も安定した仕事内容と働きには定評がある。
「ですが。休日を無駄にしたくないので、報告書でいいでしょうか?」
「ああ。うん、いいよ。君は6枚以上でお願いするね」
「はい。それでは失礼します」
「うん。良い休日を」
淡々と上司に『休日を無駄にしたくない』と言い切った常盤。
(すっげぇ、姉ちゃんだな~~おっぱいもいい形だしぃ♡)
鼻の下を伸ばす百目鬼。
そんな彼を横目に、
「はい。この名刺のバーコード登録をしておいて」
常盤が名刺を渡した。
「? あー~~はい?」
受けとった百目鬼は常盤を見た。
「必ずよ? いいわね、百目鬼」
「っち!?」
肩を叩くと、来た道を戻って行く常盤。
彼女の離れて行く背中を、百目鬼も見送った。
(面倒ならはなっから、来なきゃよかったんじゃん?)
「その理由がありならw 私も――」
「ダメに決まっているじゃない。嫌だって言うなら、減給とか自宅待機とか仮せるよ?」
「……脅しですかw 怖い、怖いwwww」
会話と会話の。
腹の探り合いの中。
(本当に。絶対、俺は場違いなんですけど?! 井之頭さぁあん!)
◆
「へ?」
「だから。もう遊びに来るのは止めてって話しだよ」
「……ふぁあぃ」
井之頭の言葉に、さらに大粒の涙をこぼす翁。
(これが《蛇苺》なら、すごい量の《宝石》になるんだけどなぁ)
井之頭は肩を竦めて苦笑した。
(まぁ。全く違う家系だもんな)
ヴヴヴ――……
(ああ。彼からか)
井之頭が携帯を見た。
すると、相手は案の定の彼。
「ああ。そういうことかぁ……」
「? あにがれふふぁ??」
「ううん。なんでもないよ、翁君」
肩を叩く井之頭に、
「ほんふぉうふふすみふぇまふぇんれふた」
「ああ。まぁ。俺の店じゃないし、気にしない気にしない」
泣きじゃくる翁の様子と、一緒にいた井之頭は。
周囲から視線を痛いほどに向けられていた。
(弱ったなぁ)
目の下を掻くと。
(あまり。注目は浴びたくなんかないんだよなぁ)
《果樹》に変えた。
すると、周囲の視線はなくなった。
その異変に翁が気づきはずなんかないのだが。
「? あふぇ?? くうふ、かわっふぁった」
「!? そうかな? 翁君の気のせいだよ」
「ふぉふぁふぁなふぁ」
「ほら。ティッシュで鼻と涙拭きなよ」
上手く反らしつつ井之頭が手渡した。
目を細める井之頭の目を翁とかち合った。
「どうかしたのかい?」
「め」と翁が自身の目を差した。
「ねぶふぉくなんれふふぁ?」




