私の中の天使と悪魔
「おいおい、いつまで悩むつもりだよ」
「大丈夫ですよ。悩みに悩んで出した結論はきっと良いものになるに違いありませんから」
「悩みすぎると逆に良くねぇんだよ! さっさと決めろ!」
「私はあなたの味方ですからね。ゆっくりお考えになってください」
そう私の脳内で言い争いをする天使と悪魔。私は今大きな決断を迫られているのだ。
「でもね、聞いてくれる? 天使さんと悪魔くん。私はね今までずっと我慢をしてきたのよ」
私は自分の思いを訴える。
「我慢してきたぁ? 何だよ、我慢するのが一番偉いって言うのかよ?」
「我慢は偉いと思いますよ。なかなかできない人も多いですからね。まずは彼女の努力をしっかり認めてあげましょうよ」
「天使は綺麗事しか言わねぇから嫌いなんだよ」
「あら? 綺麗事は私からすれば美しいと思いますけど? 欲望のままに生きていらっしゃる悪魔さんたちに比べれば」
「はあっ!? 調子に乗ったこと言ってんじゃねぇぞ! おい女。この下級天使の言うことは参考にならないから絶対に聞くなよ。」
「下級天使とは失礼ですね。いいえ、あなたはとても心の綺麗な方ですから、私の言うことだけ聞いていればいいんです」
「……は、はあ」
「話を戻しますが、あなたはここまで我慢できた心の強い方なんです。ですからこれからも我慢が利くはずですよ」
「我慢なんて続けても良いことねぇんだよ。お前、一番の幸せが何か分かるか? 自分に正直に生きるってことだよ」
「……自分に……正直に生きる……」
「我慢を続けてきた努力は確かに認めてやる。でもな、それを続けて精神や体を壊したらその我慢も無意味なんだよ」
「……まあ、それは一理ありますね」
「だろ? おい、女」
「は、はい!」
「お前は十分頑張ったよ。そろそろ解き放たれてもいいんじゃねぇか?」
「悪魔くん……!!」
私は大きく頷くと、震える手でそれに手を伸ばした。ゴクリと唾を飲み込む。
そして大きく口を開けてーーーー
「……美味しいっ……!!」
***
「ねえ、良かったの? 彼女ダイエット中だったんでしょ?」
「そんなこと知らねぇよ。てか、絶対にこいつの中でも目の前に置いてあるシュークリームは無視出来なかったんだろうよ。俺たちに意見を求める前に、食べることは決まってた筈だ」
「あの彼女がせっかくここまで我慢してきたのに……。残念だね」
「まあ、いいじゃねぇか。こいつ、食べた途端に脳内のイライラが全部消えて、幸福感で満たされてやがる。今日まで頑張ってきたんだし、たまには息抜きも必要だろ。……それにお前みたいに綺麗事を言う訳じゃねぇけど……こいつの幸せが俺たちの幸せなんだろ?」
「……まあ、それもそうだね」