表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

パーティー結成(3日目) - ネットは意外に怖いらしい(4日目)

※※ パーティー結成 (3日目)※※


40…50…59……おしっ8時っ!


時計とにらめっこしながら8時を待つようになって早3日。

どうしよう、楽しいよ、これっ。


時間になるのを待って即アクセスしてゲームの中のアオイちゃんを呼び出す。


最初はもちろんレベル1。

街を出てすぐのスライムを倒すのにも死闘を繰り広げていたアオイちゃんもいまじゃレベル4になり、敵をサクサク倒せるようになっていた。


このゲームでは何もせずに座っていれば徐々にHPとMPが回復していく。


で、レベル1では1戦するたび座って回復していたのが、今では5戦くらいなら連続して戦える。


今日は思い切って1ランク上の敵を倒してみようと、青いスライムにわずかに混じる黒いスライムに向かって短剣を振り下ろした。


うあ…思ったより強いなぁ…。


自分も敵の攻撃って結構避けるんだけど、こっちの攻撃も避けられちゃってる。

さらに…敵の攻撃が当たった時のダメージが青いスライムより数倍痛い。


一撃で見る見る間に減っていくアオイちゃんのHP。

これ…死ぬかなぁ…。


あと3~4撃で倒せそうだけど、こっちもあと1撃食らったらHPが尽きそう。

死ぬと経験値が減っちゃうんだよねぇ……

あとちょっとなのに………


そのときピュルルンと音がして、淡い金色の光がアオイちゃんの周りをクルクル回った。


見る見る間に全快するHP。


そしてアオイちゃんの攻撃が3回ほど当たると、敵は水みたいになって地面へと消えていく。


ようやく落ち着いてみると、すぐ側に可愛らしい女の子のキャラが立っていた。


「ありがとうっ!」

胸の所に大きな十字架の模様が入った白いワンピース。

一目で回復魔法を使うプリーストとわかるその女の子にお礼を言うと、

「どういたしまして(^-^ 」

と、言ってもう一度ピュルルンと回復魔法を唱え、わずかに減ったアオイちゃんのHPを回復してくれる。


そう言えば他のプレイヤーさんと話すのは初めてだ。

そう言うと彼女も他の参加者と接触を持つのは初めてだと言った。


「せっかくなので…良かったらお隣で狩らせて頂いて宜しいですか?(^-^ 」

との彼女の申し出はもちろん喜んで了承する。


時折回復魔法をかけてくれる彼女に、何もお返しできないシーフの私が恐縮すると

「自分にだけ回復魔法かけても寂しいから…私の魔法が誰かのお役にたてるのって

それだけで楽しいんです♪(^-^ 」

と笑顔の顔マーク付きで答えてくれる。


なんだかいかにも癒し系って感じで、すっごく可愛い。


フロウレンス…というそのキャラ名は戦場で敵味方の区別なしに癒して回った白衣の天使ナイチンゲールから取ったそうだ。


「フロウって呼んで下さいね(^-^ 」

との言葉に、フロウちゃんと呼ばせてもらう事にする。


これまでも充分楽しかったんだけど、フロウちゃんとしゃべりながらやってると更に楽しい。

フロウちゃんが回復してくれるおかげで座る時間もすごぃ減って、倒せるペースも段違いに早い。


そうして二人でしばらく隣同士で雑談しつつレベルあげに励んでいると、いきなりピロンと音がしてログに

”ユートからパーティーに誘われました。"

の文字と共に

"入る/断る”

の選択肢が出る。


よくわかんないけどとりあえず入るを選択すると、自分のHPゲージの下に、ユートとフロウレンスのHPゲージが表示された。


『こんちゃ。急にごめんね』


いつのまにいたんだか、短いマントみたいな物を羽織った知らない男の子が立っていた。


その男の子ユートは一緒にレベルあげしてくれる仲間を探してる最中だと説明してきた。


なんとなくわかるようなわかんないような……良い機会だし実は戦闘の仕方以外はまだ色々わかってないという事を打ち明けると、フロウちゃんも同じくだったので、私達よりはかなり色々詳しいらしいユートはパーティの基本から教えてくれた。


このゲームでは4人までのパーティが組めて、パーティを組んでモンスタを倒すと、パーティ内の誰が倒しても全員に経験値が入るとのこと。


そしてユートのジョブのエンチャンタはパーティ内の人間に攻撃や防御や命中をあげる魔法をかけられるんだけど、自分自身が強いわけじゃないから、パーティーの仲間がいないといまいち冴えないらしい。

んで、仲間を探してたらおあつらえ向きに(?)私達をみつけたってわけだ。


そういうことなら、と、自分も微妙ジョブ(?)な私と、ソロだと火力ナッシングなフロウちゃんは喜んでその誘いを受ける事にした。


こうしてユートが加わって3人になった私達。

ユートの魔法はかなりすごい。

特に命中率アップは神っ!


今までスカスカだった格上の敵への攻撃もビシバシ当たる様になって、フロウちゃんと二人でやるよりさらにサクサクと敵が倒れていく。


あっという間にその辺りにいる敵がいなくなって、湧くのを待つくらいになってきた。



『私達…結構すごいよねっ!このまま魔王に一直線?』


こんな感じだったら魔王も楽勝な気がした。

ユートの魔法の底上げとフロウちゃんの回復があればなんでもできそうな気がしてくる。

勢い込んでいう私にちょっと苦笑しながら、ユートが言った。


『魔王行く前にミッション進めてかないとね』

『ミッション?』

あ~そういえばそんな事書いてあった気が…。

『そそ。魔王の所に行くには魔王退治のミッション受けないとだし、魔王退治のミッションを受けるにはミッション1から順番にミッション進めてかないと。

最初のミッションはプロローグの時に自動で受けてるはずだけど、二人とももう終わらせた?』


当然…パーティーも知らなかった私達がそんなもの進めてる訳がない。


それを言うとユートは

『実は俺もまだなんだ。どのくらいでクリアできるかわかんないけど、一応行ってみる?』

と提案してきた。


もちろん反対する理由があるはずもない。

私達はそのままミッションに挑戦する事にした。



ミッション1は簡単なお使いだ。

山の麓にいる兵隊さんに手紙を届けるだけ。

山は街から遥か向こう。

でもそこまで道が続いてるから道沿いに行けば迷わないはずだった。


でもね…実際の道もそうなんだけど、道ってクネクネ曲がってるのよね。

そこでイケイケ状態だった私達は、素直に道沿いを進めばいいのに、草むらを突っ切って直線距離を進んじゃおうなんて無謀な事を考えた。


そして途中までは調子良くてガンガン奥に進んだのは良いんだけど、草むらを駆け抜けようとした瞬間…

ズザザザザ~!!!って感じで、いきなり落とし穴みたいな物に落ちちゃった。



『ねえ…ここどこ?ユート』

落ちた先は洞窟みたいで、一応道は続いている。

どう考えても目的の山へではないんだろうけどね…

しかも少し先に見えるコウモリみたいな敵は私達が倒してたスライムよりは絶対強いと思う。


自分で聞いておいてなんだけど…ユートも絶対にこんな所まで来た事ないよね。


それを裏付けるように

『死んで戻るしか…ないのかな…』

と困った様に言うユート。


そんなちょっと深刻になる私達二人を尻目に、フロウちゃんは

「ん~でもさすらってればいつかはどこかに辿り着くのでは?(^-^ 」

と例のニコニコマークを残して颯爽と歩き出した。


『うあああ~!!フロウちゃん、待ってっっ!!!』

慌てるユート。

当たり前に横を通り過ぎようとするフロウちゃんに襲いかかるコウモリ。

一撃で瀕死を示す真っ赤な色に染まるフロウちゃんのHPゲージ。

うあああぁぁ~~~~~


私達が戦ってたスライムってこちらが殴らない限り攻撃してこなかったんだけど、ここのコウモリって近づくだけで襲ってくるのねっ初めて知った。

たぶん動揺してるんだと思うんだけど…フロウちゃんその場をクルクル回ってる。


敵の一撃でHP残り2だったフロウちゃん。

でもそれ以上減る事はなかった。

薄暗い洞窟の闇の中で青白く光る大剣が、フロウちゃんを襲ったコウモリを一刀両断にしたからだ。


それでもクルクルとハムスターのようにその場を回り続けるフロウちゃんに

「とりあえず自分を回復しとけ」

と声をかけたあと、その大剣を担いだイケ面キャラなベルセルク男はビシっと私達を指差して叫んだ。


「そこの馬鹿二人っ!

今すぐコウモリの群れに特攻して百回死んで来いっ!」


ええ???!!!

なに?なんなわけ?!

なんで初対面の人間にそこまで言われないといけないわけ??


「初対面でそれってあんた何様よっ?!!」


温厚な私でもさすがに怒りますよ?!

思わず叫ぶ私の横で、ユートはその男、コウに向かってペコリとお辞儀をした。


「パーティーメンを助けてくれてありがとう。

俺ら慣れてない上に、落とし穴に落ちてここにきちゃって戸惑ってるうちに絡まれちゃって…」


(とりあえずお礼が先。助けてもらったんだし、ねっ(^^)

と至極冷静にパーティー会話で言うユート。


…確かに……。


ちなみに…会話方法は全員に伝わる通常会話の他にパーティーだけに伝わるパーティー会話、あとは特定の個人にだけ話すウィスモードがある。


「フロウちゃんを助けてくれた事は…お礼言うわ。ありがとう。

でもいきなり百回死んでこいはないんじゃない?」


ムッとしつつも言う私にコウは当たり前だ、という。


「敵から後衛守るのが前衛の仕事だろうが。

後衛は装備できる防具も柔いし受けるダメージも違うんだからな。

前衛がちゃんと守んないとすぐ死んじまうだろっ」


おお~~そうなのか。

なるほど、ただの暴言野郎じゃなかったんだ。


「ごめんなさい…ゲームってほとんどした事なくて、パーティー組んだのも今日初めてだったから全然知らなかったの。これから気をつける。」


単に一緒にやるだけじゃなくて、ジョブによって役割っていうのがあったのね。

頭を下げる私に、わかればいい、覚えておけと、それでも思い切り上から目線で言うコウ。


そしてその後

「とりあえず…いれろ」

「はい?」

唐突に言われて首を傾げるユートにコウは

「送ってく。お前らだけじゃ帰れないだろ。

そんなレベルで来る所じゃないしな、ここ。」

と続ける。

「えと…でもレベルあげの最中だったんじゃ?」

恐る恐る聞くユートにコウは肩をすくめる。

「しかたないだろ。ここで見捨ててそこらで死体3つ並んだ日には寝覚め悪すぎる。」


……口は悪いけど良い奴らしい…。


ユートがコウをパーティーにいれると、ついてこい、とコウは先に立って歩き始めた。

そして道々説教めいた事も言いつつ、それでも色々教えてくれる。


『ここはだいたいレベル10くらいで少し強めに感じるくらいの敵がいる場所だ。

だから道々絡まれたらとにかく俺の近くにこい。

敵のタゲとってやるから。

で、敵が一度に2匹以上来たら、俺がタゲとって出口と反対方向に走るから俺と反対方向に逃げろよ。

そこからはなるべく敵から距離とって絡まれない様にな』


素朴な疑問…

『んで?コウどうすんの?死んじゃわない?』

『そりゃ死ぬな。』

『いいん?』

『それが前衛だから無問題。』


前言撤回……口は悪いけどすっごぃ良い奴かも…


そんな感じでコウについてトテトテと出口までの道のりを歩いていると、

フロウちゃんが唐突に口を開いた。


「あのぉ…何故帰るんですか?」


………え~っと………


返答に困る私とユートの代わりに、コウが答える。


『意味わからん。帰らないでどうすんだ?』

相変わらず口わるっ…


でもフロウちゃんはそんなぶっきらぼうな返答も全然気にならないらしく

「せっかくここまできたんですし…ここでレベルあげすれば良いんじゃないでしょうか?(^-^ 」

と、いつものニコニコマークつきでのたまわる。


それにため息とともに応えるコウ。


『えと…な、さっきも言った通りここはレベル10くらいの狩り場なわけだ。

んで?レベル4の3人がどうやってそこでレベル上げするって?』


「大丈夫っ!コウさんがいらっしゃいますし♪(^-^」


『へ?…いや…あの……いらっしゃいますしって……』

「コウさんが倒して下されば全員にちゃんと経験値入りますからお気になさらず♪(^-^」

『ちょっ…ちょっと待った…お気になさらずって言われても……』

「私も一生懸命回復しますねっ♪o(^-^)o」


フロウちゃんの波状攻撃にコウががっくりとその場に膝をついた。


『…負けた…。

…どこの……やんごとなきお姫さんなんだ?

思い切り上から目線で苦しゅう無いって言われてる気がしたぞ………』


俺様コウが俺様度で負けを認めてる……

フロウちゃんすごい……


まあこんな感じでなんとな~く(?)なし崩し的にコウも加わって集まった4人パーティー。

この日以降はずっと行動を共にする事になるのだった。










※※ ネットは意外に怖いらしい(4日目) ※※


翌日…いつものようにアクセスすると、街の広場でコウが待ってた。


『今日は…レベル上げ行かないの?』

見上げて聞く私にコウは

『ユートと姫を待て』

とだけ言って視線を広場の噴水の向こう、雑談をしてるらしい二人のウォリアに向けている。


私も暇だったのでなんとなく二人の会話に耳を傾けた。


男のウォリア、ゴッドセイバーがほぼ一方的に話してるっぽい。


「俺さぁ、今レベルトップだしー、ミッションもちょーやってるしー。

でもゲームだけじゃないしー。

リアルもマジパネェつーかー、俺、鈴木大輔って都立S高の2年なんだけどー、

ちょー背高いしー、ちょーイケメンだしー…」


延々と続く自慢話。

聞かされてるイヴって子も大変だなぁ…と思わず私も同情する。


あ、でもそう言えばオンラインゲームって一緒にいる相手も機械じゃなくて自分と同じように

キャラを操ってる人間なんだよねっ。


今更のように気付いて、ふと隣が気になった。


コウもユートもフロウちゃんも…本当にどこかに実在する高校生なんだ…。

リアルだとどんな子なんだろ~。


「ねえ、コウ…」

『…ん?』

「コウもさ…高校生…なんだよね?」

『だな。このイベントの参加者全員そうだって主催言ってたしな。』

「コウはさ、どんな感じなの?リアル。私はね…」

『ストップ!!黙っとけ、馬鹿!!』

私の言葉をコウはいきなり怒ったような強い口調でさえぎった。


「な…なによ…嫌なら無理に聞き出そうとまでは思ってないよ。でも私の事話すくらいはいいじゃない。

別に変な意味じゃないもん!」


変に誤解与えたかなという気恥ずかしさも手伝って思わず言い返す私に、コウはため息をついてそういうんじゃないと少し落ち着いた口調で話し始めた。


『ネット上だと相手も嘘つけるからな。下手に自分の個人情報漏らすと悪用されるぞ。

俺は自己申告がない限りキャラの性別イコールリアル性別として考えとく事にしてるから、お前も一応女だって仮定して話するけどな、男でもやばいけど女は絶対にやばい。

実際騙されて呼び出されて乱暴されたりとか、ストーカーされたりとか結構あるんだからな。

女は特に気をつけろよ。絶対に下手に相手を信用すんな。

ましてや誰が聞いてるともわかんない通常会話でリアル明かすなんて史上最悪の大馬鹿野郎だぞ』


そんな事あるんだ……。


『ん…わかった。気をつける』

『わかればよし』

また上から目線で物言うコウ。


いちいちカチンとくるような言い方をするけど、言ってる事が随分大人びててしっかりしてるよな~コウは。

ホントに私達と同じ高校生なのかな……。

そうこうしてるうちにユートとフロウちゃんがインしてきて、念のためとコウが私に言ったのと同じような注意をうながしていた。


二人が同じ様にその話にうなづくと、コウは街の外へ続く門とは反対側、商店街の方へと足を向ける。


『コウ~、そっち反対。外は向こうだよ』

と一応注意すると、コウは足を止めず

『反対じゃない。こっちで正解。お前ら初期装備で俺についてくるつもりか、装備買え』

と言って防具屋さんに入っていく。


『お金…ないんだけど…』

『今回はしかたないから買ってやる。

紙装備でうろちょろされても迷惑だからな。

これからはちゃんと金策もしろよ。』


相変わらず…俺様口調なんだけど、やっぱり異様に良い奴だ。


結局自力でレベル相応の装備を揃えてたユートは別として、金策も装備もぜんっぜん知らなかった私とフロウちゃんはコウにレベルに見合った新しい装備を買ってもらった。


なんていうか…言う事やる事、保護者というか…親みたいだなぁ、コウって。


そんな感じで、最後に入ったのになんとなくコウ主導で、コウがリーダーのパーティーって感じになってきた。

まあいいんだけどね。楽だしさ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ