5:帝都の災厄
いつもと変わらぬ日曜の朝
違うことと言えば、今日が帝都高等学校の合格発表日だという事だ
ママと一緒に発表場所に向かう途中、帝都に避難警報の鐘が鳴り響いた
「カン、カン、カン、カン」
「津波警報発令、津波警報発令
都民の皆様は急ぎ避難場所への退避をお願いします!」
「原因不明の津波が迫っております。
急ぎ最寄りの避難場所への退避をお願いします!」
軍の兵士が叫びながら走り回っている。
津波に飲み込まれたら海に連れて行かれる。
過去、津波で大きな被害だ出たため、帝都の災害対策は進んでいる。
私たちも引っ越してて来た際に、役所の人から以下のように説明を受けた。
何か、避難指示が出た際はすぐに最寄りの避難場所へ退避すること。
避難場所とは帝都の地下迷宮である。
市内の各所に入り口があり普段は軍が入口を警備しているが、避難指示が出た際は入ることができる。
地下1層は安全で避難場所として緊急時に利用されている。
入口を閉じれば津波の侵入も大丈夫らしい。
帝都の設計と地下迷宮を作った人は同一人物と言われているが、詳しくは公表されていない。
周りの人の動きに合わせて私たちも避難場所へ向かって歩きだした。
「パパ大丈夫かな…」
パパは昨日から外出しており合格発表の場所で落ち会う予定にしていたのだ。
私がつぶやくとママは一瞬心配そうな表情になった。
しまった!
「ううん、大丈夫よね! パパだもの」
私はママを元気付けようとすると
「そうね」
と笑顔を見せたあと、
「心配だわ、私の作った都を壊したらお仕置きね」
と小さくつぶやいているのが聞こえた。パパがんばれ。
【警報発令の少し前、帝都某所】
「天子さま、帝都に津波が迫っております。地震の発生もなく、原因は不明となっております。」
「なに!して津波から都を守り切れるのか?
(あの方の作った)都を水浸しにするなど、もってのほかであるぞ」
別の報告が届く、
「津波の原因が判明いたしました。占い師によるとヨルムンガンドが帝都に向かってきている影響で間違いないとのことです。」
ヨルムンガンド・・・
なぜ奴がこんなところに、過去のフェンリルといいニッポンに恨みでもあるのか。
ヨルムンガンドはフェンリルの兄弟ともいわれる魔獣であり、ラグナロクの際に海から上がり、
災厄をもたらすと言われている。
過去、数度目撃情報があるが襲われた都市は全て滅んでいる。
「帝都の海岸防壁の作動許可を出せ!これは勅命である。
常備軍、近衛軍すべてに出動命令、ヨルムンガンドを都に上げるな。私も出るぞ!」
あのお方も帝都のどこかで我々を見ておられるのだ。無様な姿はみせられぬ。
【帝都海岸エリア】
「海岸防壁作動の命令がくだりました。」
「司令部への確認間違いないな?」
「はっ。天子さまよりの勅令であります。間違いありません。」
帝都の海岸の防壁が作られて数十年、初めてのこととなる。
副長が右の作動スイッチを、私は左の作動スイッチを入れる。
同時にスイッチを入れた後、暗証コードを入れなければ作動しない仕組みである。
ついに、防壁が作動した。
一瞬のうちに、海沿いに高さ50mほどの壁が地面からせりあがり、
何十キロもの壁が海と陸とを分断する。
「おおー」
「すげー、防壁が作動したとこ初めて見た」
「まじかっけー」
「ふ、ふ、ふ、わし帝都で初めて防壁を起動させたぞい。歴史に名が残っちゃうかも~」
【そのころパパは・・・】
今日はニーナの入学試験の発表日!
私は一足先に発表を確認するために合格発表掲示板の前にいる。
本当は一緒に見に行きたいのであるが、心配で心臓が持ちそうにない。
発表された瞬間に確認するため、前日から掲示板の前に泊まっていたのだ!
ついに、合格発表の張り出しが始まるその時、
「カン、カン、カン、カン」
「津波警報発令、津波警報発令
都民の皆様は急ぎ避難場所への退避をお願いします!」
「カン、カン、カン、カン」
なんという事でしょう、張り出しは中止され、皆、避難することになってしまった。
_| ̄|○
しばらく、結果が見れない悲しみに打ちひしがれた後、
原因である津波に腹が立ってきた。
とりあえず、海までひとっ走り、海岸につくと防護壁が作動していた。
まずい、
この壁に傷の一つでもつけたら、俺、ママにお仕置きされちゃう。
海岸防壁が完成したとき、壁をさすってうっとりしてたもんな~
どこの馬鹿が作動させたのだ、壊れたらどうすんだよ、プンプン。
とりあえず、防護壁を飛び越えると、津波が迫ってきているのが見える。
防護壁が津波で濡れないように、こちらからも海に向かって波を起こして相殺させることにする。
「おりゃ!」
海に手を突っ込んで波を起こす。
何度か繰り返すと迫ってきた津波はおさまっていた。
「自然も存外たわいない」
ちょっと余裕をこいてみると、突然蛇のような魔獣が海から襲ってきた。
「あーーー」こいつヨルムンガンドだ。
以前見たことがあった、トールが釣り上げて晩飯にするって自慢してたっけ。
てことは今回の津波の原因はこいつで確定だな・・・
前のりしてまで、待っていた合格発表を台無しにした張本人が目の前にいる。
私のドキドキを返せ、怒りに震えた私とヤツの目が合った
「今日がなんの日か言ってみろ」
「ギャワ?」
「もう一度聞く、今日がなんの日か言ってみろ」
「ギャワワ?」
「うちの子の合格祝の日だろうが〜〜!」
飛びかかってきたヨルムンガンドを殴りつけると、奴は水面を数バウンドした後動かなくなった。
「ふう~」
防護壁に海水一滴つかなかったし、原因もぶっ飛ばしたし、帰ろうかな。
合格発表見に行かなきゃ!
避難警報が解除された後、合格発表会場でパパと合流した。
少し、パパは疲れた表情をしていたけど、私たちを見つけるといつものやさしい笑顔で迎えてくれた。
今日はいろいろあったけど、みんな無事でよかったな。
結局、津波は来なかったし、人騒がせです。
そうそう。ちゃんと入学試験は無事合格してたよ。
あと、いつのまにか庭の池に大蛇が住み着き始めたみたい。
ゼフぃが大きな蛇?を引きづって来ていたから、多分その子なんだと思う。
仲良くなれるといいな。




