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戦闘員とショタ事務員

派遣会社アンデット。ここの求人票を見たのは3年前だろうか。求人の説明にやる気があれば採用確定、早い者勝ち。そんな詐欺くさいものでも、当時はお金が必要だったのだから、ブラック?そんなの関係ねえって採用されなければ意味がないんだよって思ってたな。


ちなみに俺は1年持てば良いとされるアンデットに3年勤め、中堅社員としてそこそこの評価を受けているが、ただ悪運が強いだけなのだがな。たまたま、正義の銃弾が肩にかするだけの重症で済んだり、心優しい正義の味方は素手で俺達戦闘員を倒してくれたりと派遣先が良かっただけなんだ。


素手とはいえ防御力が1の紙よりも薄いぴちぴち戦闘服なんだから、手加減したわけじゃない攻撃の前じゃあばら骨が粉砕されるのも仕方ない。運が良かったのは、悪の組織の医療機関が充実していたおかげで完治したことだな。


しかしそのときの悪の組織は最悪の派遣先ワースト3に入るな。だってよ、どんなにひどい負け方をしても完治できるし、その度に戦闘員として現場に赴かなければならない。悪の組織が正義の味方に壊滅させられた時は精々したね、これで地獄から開放されるし、しばらくの間の休暇がもらえるのだから。


派遣会社アンデットは、一つの会社として成り立っている。派遣の登録をしている者たちはアンデットの会社員として扱われているゆえに、当然給金と休暇が与えられるのだ。派遣先で得た報酬がアンデットに行き、そこから六割を本人へ。残り四割が会社の維持費もろもろに行くようになっている。


それでもこうして戻って来れれば給金が支払われるし、会社には寮と賄いがあるから給金のほとんどを自分のために使える。戻って来られれば、また一時の幸せを満喫できるってわけなのよ。


俺はこうして得られた休暇で、遊楽に赴き女を買って、盛大に生を味わう。


そんな生活が続いたが、休暇がなくなって再び派遣斡旋所に向かわなければならなくなった。はたして今回の派遣先はどんなところなのどろうか、酒と女で気分が良かったから足取りは軽かった。


「ひっく、今回の派遣先はどんなとこだ?」


「バルドさん今回も随分と楽しまれたようですね」


「そんな軽口叩いてると、苦情出すぜー」


「酔っ払いのうわ言ですし、誰も信じませんよ」


こいつは派遣会社アンデットの設立当初から在籍しているという年齢不詳のショタ事務員だ。緑の短髪と顔つきから幼さが拭えないが、中身は口が悪いおっさんである。事務員をしているが、過去に戦闘員としての功績があるので、手を出そうとする輩はいない。


“ボクの研究材料になりたいなら、もう一度おいで”

新人のころに生意気でコイツにぶつかって言われたセリフを思い出す。


ショタ事務員は人体改造に特化したマッドサイエンティストでもある。


人気があまりなく、大概のやつらは他の融通の利く事務員から派遣先を選ぶのだがショタ事務員の出す派遣先は不思議と死亡率が低いんだよな。本人曰く、派遣先を紹介するにも人は選びたい。だから、悪評を振りまいて、ボロ雑巾のように叩き伏して、近寄りがたくしている。だ、そうだ。


「ボクを無視すると、派遣先がどんどん酷くなるケドいいのかな」


ショタは手元の紙を少しずつシュレッダーに掛けて行く。こいつはマジでやらかしてくれるので慌ててそちらに振り向いて身を乗り出してカウンター越しに引っ張る。


「荒事きらーい」


「どの口が、それを言う」


「で、酔いは覚めたかい」


「おかげさまで」


皮肉全開の顔で告げると満足そうに頷いて、俺に一枚の派遣先を提示してくる。その紙の募集要項には“勤続3年以上の優秀なものを求む”と書いてあった。確かに今年で条件を満たしているが、優秀とは人さじには言えないぜ。


「不吉全開、やめておく」


「てへ☆これしか紹介できる派遣先用意できてないのです」


「どういうことだ」


「ツッコミがなくて悲しいよ・・・。それはぜんぶ紙切れにしちゃって内容が分からない状態だから」


あ れ か ! !ほらマジでやっただろ!?ちくしょう。


「残念だけど諦めようね」


残念そうに思ってないだろこのショタは、仕方なく受け取り内容を見た。


「うげええええええ!!!絶対にやだ!この依頼、☆1じゃねえか」


☆とは正義の味方の強さを示したランクのことであり、最大で5とある。今回のは最低ランクの☆1。自らの武器の性能を把握し切れていない駆け出しの正義の味方ということで、物語もまたかなりの序盤ということである。


「あ、やべ、ミスった」そんな拍子で最大出力の必殺技をかましてくるようなところなんだよ。


「さあ、張り切って倒されてくるんだね」


ぬけぬけと決まり文句を言う。


「てめえお気をつけてとか、言えっていつも言ってるだろ。苦情だすぞ」


にっこりと笑顔しか返ってこないが、行く前の緊張がうまいことほぐれる。これだけでも正直助かる。だから、俺は良くも悪くもショタ事務員を信頼している。


そして俺は時空間転送ゲートに向かった。







お初にお目にかかります。


やまたのおうちです^^

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