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後編

 お気に入り登録ありがとうございます!!


 お金については、作者が庶民かつニートのため、テキトーです!

 来世の価値って、いくらなんですかね?



   ◇◇◇



「どうですか?たくさんあるでしょう。ゆっくり選んで頂いて構いませんよ」




 まさかの現金ポイント制に驚いた後。


 相変わらず胡散臭い笑顔の喪服男に連れて来られたのは、小さなスーパーマーケットだった。

 …真っ白い空間にポツンとある、その建物の違和感は半端なかった。


「何でスーパー?」

「買い物っていえば、スーパーじゃないですか?

 コンビニでも別に良かったんですが、少し手狭だったので」


 スーパーの中に入ってみると、確かにコンビニよりは少し大きいようだった。

 しかし、陳列棚には食品や日用品などは一切なく、どの棚にも文庫本のようなサイズの板っぽいものがズラリと並んでいた。


「どうぞ、手に取ってみてください」


 喪服男に勧められるまま、それに手を伸ばした。


 …何だろう、これ。板のように見えたけど、素材は石?

 レリーフというやつだろうか、綺麗な浮き彫り細工がしてある。

 美しい細工の真ん中には文字が書いてあった。


『美貌(最上):12億』


 ……………。

 何これ、目の錯覚?見間違い?

 

「ああ、それは美貌の最上級ですねぇ。ランクが高いので、お値段の方も少々割高になっていますが良いものですよ。間違いなく傾国の美貌を手に入れられます。買いますか?」

「買えるかっ!!…てか、高っ!?」

「まあ、最上級ですから。他にも“良”や“並”といったランクのものもありますよ」


 そういう問題じゃないだろっ!

 顔の美醜なんかに12億って、ふざけてんの!?


「人の価値観は様々ですからねぇ。

 借金をしてでも美しい顔を望む方もいらっしゃいますよ。そう多くはありませんが」

「はあ、借金?どういうこと?」

「おおっと、ワタクシとしたことが。ご説明していませんでしたね。

 ポイントは今世の所持金だと言いましたが、地獄で借金をすることもできるんですよ」


 ………地獄で借金。

 ものすごく縁起の悪そうな字面だ。リアルに返済地獄に落とされそう。


「担保も利息もいりませんよ。純粋にお金を貸して差し上げるだけです。ああ、もちろん返済義務はありますが」

「何その怪し過ぎる制度」


 めちゃくちゃ胡散臭いんですけど。


「いやいやいや、良心的な制度なんですよ。本人のお望みの額をお貸ししますし」

「限度額なしとか、さらに怪しいでしょ。返せなかったらどうなんの?

 それとも、皆お金で才能買いまくって、チート転生して金持ちになんの?」

「まさか!そんなことにはなりなせんよ。借金の額に応じて、その人生での運が悪くなりますから」

「………運が悪くなる?」

「はい。ほんとにバカみたいな額を借りちゃうと、運が悪すぎて生まれる前に死んじゃうんですけどねぇ」


 …っ!?

 それは詐欺だろっ!!


「いや、今のは極端な例ですよ。普通の借金ならそこまではいきませんって。

 そうですねぇ、例えば、天才発明家になろうとして借金した人なんかは、運悪く発明品を盗られてしまったり、そもそも発明のための費用が集まらなかったりっていうレベルですよ」

「……………で、借金返せなかったら?」


 喪服男は胡散臭い笑みを深めて、こう言った。


「そのときは文字通り、魂を売ってもらいますよ。………悪魔に、ね」



   ◇◇◇



 喪服男による、まったく使えない金融情報は聞かなかったことにした。

 ………悪徳過ぎるだろ。どこまでも救われない感じが地獄っぽいが。




 陳列棚には、本当に様々な才能や容姿の特徴が記されている商品が置いてある。

 想像力、推理力、判断力、歌唱力、コミュニケーション能力……などなど。

 ちなみに、どれも私の感覚で言うと、高い。めちゃくちゃ高い。才能などの種類にもよるが、だいたい“良”ランクのものは1千万以下、“並”は100万以下だ。“最上”は1千万以上だが、ピンからキリまでという感じだった。

 美貌はその中でもかなり高いほうだった。どうやら、人気の商品は高いらしい。

 喪服男曰く“需要と供給”の問題らしいが。………本当に世知辛い。


 そして、私のポイント――つまり所持金――は400万程度だ。正直、並ランクの才能をいくつか買えば無くなってしまう。

 良なら1つ買えるかどうかというところだろう。…最上に至っては、考えることのすらバカバカしい。




 なかなか欲しいものが見つからない。

 いや、正確に言うと、欲しいものはたくさんあるがお金が無いので買えない。

 

「ねえ、これって何の才能も買わなかったらどうなんの?何の才能もない人間になんの?」


 お金がないと無能になるとか…辛過ぎる。


「いえいえ、そんなことはありませんよ。こちらで購入された才能などはあくまでプラスアルファ、追加特典のようなものです。まったく何もできない人なんていないでしょう。得意なことはなくとも一つくらい人並みにできることがあるものです」


 私の突然の質問にも喪服男はよどみなく答えていく。

 …マニュアルでもあるのだろうか。それ程流暢な説明だった。


「才能などは持って生まれるものもあれば、後天的に身に付くものも多い。育つ環境などにも影響されます。容姿も同じです。両親から受け継ぐ、あるいは自らの努力によって手に入れる。

 ここの商品は“来世で必ず手に入る”という保証でしかありません」

「ふーん。じゃあ、もし両親から超絶美形な顔を受け継ぐはずだったのに、美貌(並)とか買っちゃってたらどうなんの?」

「ああ、その場合は商品の方が優先されますねぇ。残念ながら」

「……………」


 …つ、使えねぇ!!

 何となく思ってたけど、ほとんど詐欺じゃないか。この商売。


「別に、必ず商品を買わなければいけない訳ではありませんよ。

 ただし、その場合今世の所持金は次に繰り越しできませんので、無駄になってしまいますが」


 うっ、無駄になるとか言われると、買わないのは勿体無い気がする。


「まあ、何を選択するのかは大事ですよ。魔法などが無い世界に転生するのに、魔力(最上)とか買っちゃっても仕方ないですしねぇ」


 喪服男の指さした商品を見た。


『魔力(最上):35億』


「はあぁ!?何これ、高っ!!35億とかむしろ笑うわ!!」


 ここの商品を見てると金銭感覚が崩壊しそうだ。


「いやぁ、やっぱり魔力とかはねぇ。世界を破壊しちゃうこともありますから」


 世界を破壊できる魔力なんか何に使うんだ。魔王にでもなるのか。

 …本当に碌なモン無いな、ここ。


「ああ、もうっ!アンタの説明聞いたら、何買えば良いか余計分かんなくなった!」

「自分で聞いたくせに、勝手ですねぇ。

 何だったら、ワタクシのお勧めをお教えしましょうか?」


 …胡散臭い喪服男にアドバイスを貰うとか嫌過ぎる。第一、信用できない。

 しかし、このままじゃ全然決まらないしなぁ。


「参考程度にかる~い気持ちでお聞きになれば良いんですよ」

「……………………仕方ない、か」

「…ものすごく逡巡してませんでした?」

「だって、アンタ信用できないし」

「酷いっ!一体なぜ、この数時間でワタクシの信用が失われてしまったんですかっ?」

「初めからまったく信用してなかった」

「……………」


 てか、信用できるところが見つからない。

 喪服男は悲しみに打ちひしがれているようだが、そんなこと知るか。

 信用して欲しけりゃ、もうちょっと真面目になれよ。とりあえず、その胡散臭い笑顔をやめろ。



   ◇◇◇



「おほん。では、お教えしましょう」


 いつの間にか、立ち直ったらしい喪服男はわざとらしく咳払いをして話始めた。


「良いですか。どんな世界に転生し、どんな人生を送るとしても、大切になるのは自分の身体です。

 容姿や才能というものは、必ずしも人生のプラスになるとは限りませんが、身体の健康や丈夫さはあって困るものではありませんよ。まあ、後は肉体的な能力の向上とかですかねぇ」

「偉そうにしゃべりだしたわりに、言ってることはフツーだね」

「……………」


 うーん。でも、確かに身体は大事だろうなぁ。

 健康かどうかって、結構重要だと思うし。今度は長生きしたいし。…まあ、私が死んだのは事故だったけど。


「よしっ、決めた!!」


 この2つで良いや。別にあって困るモンじゃないし。


「へぇ、健康(並)と丈夫さ(並)ですか。良い選択だと思いますよ。どちらも生きるためには欠かせないものですしねぇ。まだ、ポイントは残ってますが、どうしますか?」

「…これも買う」


 私が手に取ったのは、俊足(良)。

 学生時代、短距離選手だった身としては“この才能が有ればなぁ”と思わずにはいられない。

 まあ、ただの自己満足かもしれないけど。自分のお金なんだし良いか。


「………ほぉ、俊足ですか…」

「何よ、文句でもあんの」

「まさか、選択は人それぞれです」


 喪服男の含みのある言い方にイラッとした。

 文句があるなら、はっきり言え。


「そんなにコワい顔しないで。美人が台無しですよ」

「喧嘩売ってんのアンタ」

「違いますよ。ほらほら、後ちょっと残っているポイントはどうするんですか?他にも商品はたくさんありますよ」

 

 喪服男に促され、もう一度陳列棚に目を向ける。

 

 でも、他に必要そうなもの思いつかないんだよね~。

 

 何これ、貯蓄能力とか皮肉か。おっ、根性はあっても良いかも。…この、やる気って何に対するものなんだろ。生きる気力とか大きなお世話だ。

 でも、残りのポイントで買えるものって並ランクばっかり。




「これなんか如何ですか?」

 

 そう言って、喪服男が渡してきたのは意外な商品だった。


 『縁(良):80万』


「…ちょっと安い?なんなの“縁”って」


 良ランクの商品で100万を切っているものは初めてだ。


「お安いのはイマイチ人気がないからですよ。良い商品だと思うんですがねぇ。皆さん、ご自分のスペックを上げることばかりに一生懸命になってしまわれるので。

 “縁”と言うのは、文字通り“人と人との巡り合い”のことですよ」

「まさに良縁ってことね」


 どうしよっかなぁ。

 喪服男の勧めに従うのは何となく嫌だが、“縁”って考えてみれば結構大事だよね。

 何より、安いし。


「じゃあ、最後はそれにするわ」

「ありがとうございます」


 結局、私が買ったのは4つか。多いのか、少ないのか分かんないな。


「では、最後にこれをお引きください」

「くじ?何なのこれ?」

「商品をご購入の方全員に引いて頂いている“運命のくじ”です。ちなみに、ハズレは無いですよ」


 喪服男の持つ“これで貴方も人生バラ色!?今すぐ引こう!!運命のくじ☆”と書いてある箱を見る。

 

 胡散臭さパネな、オイ。

 “☆”とかふざけ過ぎでしょ。…フツーに引きたくないんだけど。


「………引かないとダメなの、これ」

「ダメです。絶対引いてもらっているので」


 くそっ、私くじ運わるいのにっ!

 ええいっ、もうどうにでもなれ!!


 勢い良く箱に手を突っ込みくじを取り出した。


「…って、あれ?くじは?」


 取り出したと思ったのだが、手の中にくじは無かった。


「ああ、このくじは掴んだ瞬間に魂に取り込まれますので、何が当たったのかは来世のお楽しみになります」

「何それ、怖い。…変なモンじゃないでしょうね?」

「大丈夫ですよ。くじの中身は、ここの商品のどれかです」


 全然、大丈夫な気がしないのはなんでだ。


「それでは、そろそろ時間ですので。転生の扉を開きましょうか」


 喪服男がそう言った途端に、目の前に大きな扉が現れた。

 …壁も何もないのに、扉だけが宙に浮いてる。

 さっきの箱といい、何なの魔法?


「さあ、この扉を潜ると来世ですよ。心の準備はよろしいですか?」

「…良いわよ。今更、どうにもなんないし」

「潔いですねぇ。実に男らしい」

「オイ」


 喧嘩売ってんのか。


「やだなぁ、冗談ですよ。冗談」

「アンタの冗談は笑えないわ。むしろ腹立つ」

「酷いですねぇ。

 …では、名残惜しいですがお別れです」

「清々するわ」


 何だかんだと、長い付き合いになってしまった喪服男に背を向けて扉を潜る。

 扉の向こうは強い光が溢れていて、何も見えなかった。


 ただ、私の背後で喪服男が言った言葉だけが、強く印象に残った。



「いってらっしゃい、常磐さん。

 ―――――次の人生をぜひお楽しみください」





 誤字脱字があったらこっそり教えて下さい。

 読んでくださり、ありがとうございました。

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