29/37
6 限界
ぼろぼろになって部屋に戻ると、晶がいなかった。
いつもならドアから死角で、でも私には分かるところにいるのに。
驚いて探すと、部屋の奥の物陰に、隠れるように晶は小さくなっていた。
珍しいこともあるものだと抱き上げ、私は絶句した。
晶も私のように、ぼろぼろだったのだ。
見える部分はどこもあざだらけで、繕って直していた服は縫い目で裂けていた。
服にはところどころ血もにじんでいるようだった。
気配を感じたのか晶が目を覚まし、必死に涙をこらえてすがってきた。
それだけで、何があったか分かった。
きっと私がいない間に、晶も殴る蹴るの暴行を受けていたのだ。
もしかすれば、私と同じように・・・
私は晶を胸に抱き、あやしている間に決意した。
ここから逃げる。でなくてはいつか殺される。