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5 愛しているということ
「愛してるだろ、もう充分」
薫は晶に言った。
子供が健やかに成長してくれることほど、親にとって幸せなことはないだろう。
元気でいる。ただそれだけで晶は姉を愛しているということになる。
独身で身近な子供もいない薫でもわかる。
「お前が元気に育つだけでお姉さんは幸せだ
充分愛してることになる」
「そう、なのかな……?」
愛していることを示す一番の方法は、相手を抱きしめることだと晶は思う。
大好きな姉はことあるごとに晶を抱きしめ、愛してると言うのだ。
けれども晶はあまり自分から姉に触れない。
元々甘えるほうではないのもあるが、執筆に忙しい姉を気遣うからというのもある。
甘えて邪魔をするわけにはいかないと思ってしまう。
だから晶は決めた。
姉を見つけたらまず姉を抱きしめようと。
自分にしてくれるのと同じ形で、愛していることを示すために。