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4 決断
いつまで経っても先生は手を離さなかった。
あたしは振り払おうとするけど全然だめだった。
「……美術教師のくせに腕力強すぎ」
「これでも中高はバスケ部だ。お前こそ腕力なさすぎだろう」
ふわりと甘い匂いがした。
先生の化粧品の匂いだ。
先生はあたしを抱きしめた。
頬に薄くて柔らかい胸の感触がした。
「本当は、何かあったんだろう?」
「…………」
「お姉さんに、何かあったんじゃないのか?」
「!!」
思わず身を固くしてしまい、それがわかったのか先生は語気を強めた。
「私は顔が広い。
友人には医者とか、学者とか、刑事もいる。
困っているなら、力になれる」
突然あたしの目が熱くなった。
はらはらと涙が溢れてきた。
先生なら、信じられる。
先生に、全部話そう。
あたしは先生を中に入れた。