2、ニセモノの罪悪感
拓也と付き合いはじめた次の日から、学校では愛はいちやく有名人になった。
質問ぜめで疲れる以外に難点がある。
それは、誰かから舞ではないとバレる事だ。
そのために拓也とは公園で待ち合わせして、そこからデートして帰る事が日課になった。
デートと言っても家に来ればバレるので、少しの距離だけど
それでも拓也はいつも幸せそうに笑ってる。
その笑顔は私に向けられたものじゃない。
考えれば考えるほどその事実は胸を苦しくさせる。
「で、拓也くんとはどうなの?」
悩んでる愛の顔を雅はジーっとみつめる。
「別にどうって…
特に何もないけど」
「どこまでいった?」
「手をつないだだけよ。
いつもいっしょに帰るだけだもん。
それに…」
拓也くんは私を愛してるわけじゃないし…
「うん?
何かあるの〜」
「ううん、何もない。
私もう行くね。
待ち合わせの時間だから」
無理矢理話を終わらせ公園へいそぐ。
公園は何やらざわついている。
「誰か待ってるんですか〜?
もしよかったらお茶でもどうですか?」
拓也くんをとり囲むように集まっている女の子達。
どうしよ…
呼んだほうがいいよね?
「た…」
叫ぼうとしたその時、
「俺、彼女いるから」
私を愛していなくてもその一言は私に勇気をくれた。拓也の言葉であたりが途端に静かになる。
今だ!
「拓也!」
声をあげた瞬間集まる視線。
うっ
何か間違えたかな?
呼び方がぎこちないとか…
「舞!
よかった、遅かったから心配したぜ。」
「ご、ごめんね
次からはちゃんとメールするね。」
「おう」
辺りにいた女の子は不服そうに離れていく。
「ちっ彼女もちかよ」
こわっ
いつの間にか不安な顔をしていたらしい私を、拓也くんが除きこんでいる。
「きゃ!
何?」
「いや、舞弱くなったかなーって」
あっやばい。
バレちゃう。舞は気が強いもんね。
「でも、俺的にはそっちのほうが好みだけどな…」
何気ない一言でもなれない愛は赤面する。
「その顔も好み。
ほら、帰ろ」
さっと差し出された右手を左手で握る。はじめて手を差し出された時はすごく戸惑ったけど、今は出される手がすごくうれしい。
繋いだ左手からは拓也くんの思いが伝わってくる。
愛しいっていう激しいくらいの思いが…
公園から別れる場所まではすぐで拓也くんといっしょなら尚更短くかんじる。
「もうついちゃったね」
「なぁ舞、明日ってヒマ?」
「ヒマだけど…」
まぁ土曜日だしね。
「映画のチケット二枚あるんだけどよかったら行かね?」
「行きたい。」
「じゃあ明日、10時にここに集合な!
じゃあまた明日。」
いつもどうり手をふりながら気がつく。
これってデートじゃん
かわいい服とかないし…
いつもならゆっくり歩く道のりを走りいそいで家に帰る。
家に帰ってすぐに自分の部屋のクローゼットをあける。
「どうしよ…
舞の服と全然ちがうし…」
でも借りたらバレるかな…
「そんなにクローゼットをみつめて明日はデートかなんかかね?」
「はぁ、まぁ」
ボーっとして、答えてから後ろを向くといつの間にか舞がたっていた。
「舞、いつの間に」
「さっき帰ってきたら愛の様子が変だったから。
にしてもデートか、彼氏できたんだね。
おめでと!」
何も知らずに優しく微笑む舞に
「ありがと」っとぎこちなく微笑む事しか出来なかった。
「そんな顔しなくても大丈夫だって。
舞に任せなさい。」
いきなり舞の部屋へつれていかられ、次々と服をコーディネートしていく。
「愛、ヒールはける?」
「無理!
こけちゃうよ。」
すると舞はパンプスを取り出す。
「よし、着てみて」
無理矢理着せられた服はキャミと肩だしのTシャツとショートパンツにニーハイ。
そして、パンプスのコーディネートだった。
「ズボン短すぎだよ。恥ずかしいし…」
「だからニーハイにしたんじゃん。
大丈夫だって、似合ってるから
髪の毛はシュシュ使ってポニーテールにしよ」
黙々と進めていく舞、それに愛は従うしか道はなかった。
人のコーディネートなのに自分の事のように楽しそうにコーディネートをする舞。
そんな舞をみていると罪悪感が芽生えてくる。
舞、ごめんね
でも私はあの優しさを知ったらなかなかてばなせない。
いずれ夢からさめる。
そんな事ぐらいわかってる。
でもね、バレるまで私に幸せをください。
その夜、愛は星ではなく、満月に願いをとなえた。