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荒野に建った城

掲載日:2026/02/04

 初め、その場所には何も無かった。ただただ、荒れ果てた荒野が続くばかりでそこには生き物の気配すらない。


 そんな場所にただ一人、元は高貴な身分であったというその男は、丁寧に結われた髷は手入れを怠りボサボサに、月代(さかやき)からも毛が生えてきており伸び放題の髭もあいまり、落武者のような様相すら漂わせる。


 男は、その荒野に建てられたボロ小屋で寝泊まりし、毎朝早くから日が暮れるまで山に入りボロボロになって帰ってくるとそのまま泥のように眠り、そしてまた山へと向かう。


 男が山で何をしているかというと、川を甦らせようとしているのだ。昔、この土地には川が流れていた。川に潤された土地には草花が芽吹き、それは美しい草原が広がっていたという。


 川の恵みを受けていたのは森だけではない。川はそこに暮らす人々の喉を潤し、作物を育んだ。


 しかし、ある日のこと。激しい雷雨に見舞われたその晩、人々は家に引きこもり、ギシギシと家が軋む音に怯えながら無事嵐が過ぎ去るのを待っていた。翌朝、小鳥たちのさえずりで目を覚ました村人たちは、無事嵐は過ぎ去り、いつも通りの朝が訪れたのだと胸を撫で下ろした。しかし、一人、また一人とその朝がいつもと違うことに気づいた村人たちの動揺はすぐに村中に広がった。


 なんと、川が枯れ果てていたのだ。昨晩の雨を考えると、川は増水し氾濫していてもおかしくはない。それにも関わらず川があったはずのその場所には僅かばかりの水たまりしか残ってはいなかった。


 調査の結果、昨晩の雨により川の上流で地滑りが起こりこの村に流れ込んでいた川を堰き止め流れを大きく変えてしまったのだという。


 村人たちはなんとか元のように戻せないかと思案した。しかし、自然の力は凄まじく、それに対して人は無力であった。人々が川を呼び戻そうとしている間にも、刻一刻と大地は枯れてゆき、作物は実らなくなった。ついに人々はこの地を捨てることを選んだ。そしてそれは、もう十年も前になる。


 そんな土地に一人の男がやってきた。きっかけは些細な諍いからだった。しかし、揉めた相手が悪かった。相手は時の天下人に気に入られており、天下人にあることないこと吹き込むと、あれよあれよと言う間に、男には枯れ果てた土地に領地を移し、その上これまで通りの年貢を納めよという無理難題が突きつけられた。


 元々あまり広くない領地でなんとかやりくりしていた男には、十数人の家臣に今後の生活の足しにと少しづつ包んでやると、手元にはほとんど何も残っていなかった。


 そんな男の噂を聞きつけた近隣の村の人々は最初、どうせすぐに諦めて終わるだろうと冷ややかな目で見ていた。


 しかし、毎日毎日、来る日も来る日もボロボロになりながら働く男の姿に、一人、また一人と心打たれ賛同し、いつしか百人を超えるほどの大所帯となり、ついには川を蘇りせることに成功した。


 人々は昔、この地を捨て移り住んだものやその子孫だった。先祖伝来の土地を取り戻した人々は、男に感謝した。そして、やっと帰れるようになった土地に自分たちの家を建てるより先に、皆で力を合わせ、殿様の住む立派な城を建てた。


 枯れた土地は、少しづつ、緑が芽吹きかつての姿を取り戻していった。昔と変わったことと言えばその中心に立派な城が鎮座しているということくらいだ。

『城が街より古い理由』というテーマで練習に書いたものです。けっこう気に入ったので投稿してみました♪一話完結。読み切りです。

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