最終話 魔女は幸福の森の中
アシュレイは、結局騎士団長を辞し、騎士団からも身を引いた。
その際、国王から一代限りの名誉伯爵位を与えられ、それが今の彼の地位となった。
エルフィーナ・アゼール伯爵令嬢を妻に迎えたときは、グランディス公爵家が赤薔薇も白百合も手中に収めたと、社交界は騒然となった。
アシュレイは独立はせず、公爵邸の別館を住居に宛がわれた。が、それは貴族として必要な時のみの住まい。
広大な公爵家本邸の敷地内、木立に囲まれた小さな家に、二人は暮らしている。
「木々の中の質素な暮らしの方が、インスピレーションが湧くの」
エレナはそう言って、“雨森の魔女”としてカタリナのサロンに協力し続けた。
ベランダのカウチで刺繍をしていたエレナの横に、洗濯を干し終えたアシュレイが腰を下ろす。
「……それは、新商品かい?」
アシュレイがたずねると、エレナは少し頬を染めて首を振る。
「ううん、これは――これから生まれてくる、この子のためよ。
子供の無事と成長を願う、アゼール伯領伝統の模様なの」
エレナは目を細めて、だいぶ目立つようになったお腹にそっと手を当てた。
「……君が祝福を授けるのだから、きっと元気で生まれて強く育つんだろうな」
アシュレイも柔らかく微笑んで、愛しい妻を抱き寄せる。
エレナも愛しい夫にそっと身体をあずけた。
二人の手首には、そろいの魔石をあしらったブレスレットが輝いていた。
おしまい
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森の魔女と傷だらけの騎士の物語が、あなたの心に小さな灯をともせたなら、これほど嬉しいことはありません。
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