第3話 入学式編その2 「式典」
俺と隼人はギリギリ体育館に滑り込めた。
式典は今にでも始まりそうだった。
先生が何人かこちらを凝視していたが、気にしない気にしない。
俺たちは後ろから2番目の端が二席空いていたのでその椅子に座った。
「ギリギリ間に合ったな」
にひひーと笑いながら隼人が言った。
「何人か先生に睨まれてたぞ。たぶん俺らが最後だな」
そんなことを言っていると、マイクのプツンという音が入った。
「では定刻になりました。ただいまより、国立東部東高校2X75年の入学式を始めます」
教頭のような風貌の初老の男性がそう言った。
この高校は新入生入場が省かれているので、いきなり国歌斉唱から始まった。
その後校長、来賓の挨拶と続いて新入生代表者の挨拶の時間になった。
「新入生代表、1年1組白羽柚菜」
「はい」
最前列の女の子が返事とともに立ち上がった。
遠目だが、髪はサラサラの長い黒髪をなびかせながら、凛としたたたずまいで壇上へ向かっていく。
回りが少しざわついている。
俺が聞き取れたのは、数少ない光の能力者だということ、試験の成績が2位を大きく突き放して1位だったということ、そして白光会の副代表だということだ。
白光会は、たまに耳にするくらいで、数少ない光の能力者の集まりであることしか知らない。
まあ、無能力者の俺には関係のない話だな。
「おい知ってるか?あの子光の能力者なんだよ。めちゃくちゃ可愛いし」
隼人が俺に耳打ちしてきた。
「可愛いかどうかはここからじゃ見えねえよ…。ところで光の能力者ってそんなにすごいのか?」
「お前知らないのかよ。多数能力の火・風・地・水・雷が8割に対して、2割の少数能力が無数にある中で性能に恵まれている光と闇の能力が二大勢力になってる」
「へー、すごいんだな」
「お前なんでこんなこと知らないんだよ…。常識だぞ?」
俺は無能力者だから能力者の事情はよくわからない。
同じ一年ならいつか絡むこともあるだろう。
そうこうしているうちにあたりは静まり返っていて、白羽さんが話し始めようとしていた。
春の息吹が感じられる今日、私たちは東部東高校に入学します。本日は私たちのために、このような式を挙行していただきありがとうございます。新入生を代表してお礼申し上げます。
高校生になるということに、まだ実感がありません。しかし、能力のことを本格的に学び、私たちの可能性を広げられる環境にあることに喜びを感じています。
この世界には無数の能力があります。私は光の能力を保持しておりますが、まだ世に知れていない少数能力や多数能力の可能性が無数にあります。この3年間で知見を広めていきたいです。
由緒ある東部東高校の一員として、責任ある行動を心がけていきます。校長先生を初め先生方、先輩方、ご指導をよろしくお願いします。
以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます。
丁寧にお辞儀をすると、拍手が巻き起こった。
拍手喝采の中、彼女は自席まで歩いていき、着席した。
その後入学式は滞りなく進行し、式典は閉幕した。