79ドラゴンブレス7
気分は、いつになく昂ぶり、好戦的になっていた。
俺が混乱している原因ははっきりしている。
カルナだ。
あいつが悪い。
グルル。アイツが俺の中に眠る、
竜の本能を刺激して仕方がない。
「齧らねば、何としてもカルナをかじらねばならない」
「な、何でアタシが狙われるのさ?」
白虎装備に、身を包んだ女カルナは明らかにビビっていた。
無理もない。
カルナからすれば、口からビーム吐く初対面の男に、
いきなり齧る宣言されたらそりゃそうなるわな。
「おお、あの女。指導者様のお眼鏡にかなったぞ。羨ましい」
「何と、指導者様はああいう筋肉がお好みか?」
筋肉達が好き勝手な事をいう。
だが違う。
「な、何だよ。私に、何する気さ」
「何だも何も、齧るに決まってるだろ。何を訳の分からないことを言ってるんだ?」
「なんでさ〜」
「ちょっ、ちょっと貴方イキナリおかしくなってるけどどうしたの?」
カルナと俺達の連れの女性が慌てている。
全くこれだから人間は、
大人しく齧られてしまえばいいものを。
「で、出会え。族だよ。侵入者だよ。皆きて、やっちまいな」
カルナが大声で仲間をよぶ為に叫ぶ。
誰が族だよ?
山賊はどっちだ?
「おう。族だと、カルナの大将どうし………おい。なんじゃこりゃ?こら筋肉痛共、お前等何をしやがった?」
「倒れてる二人には、マ、ソウル様の天罰が下ったのじゃ」
「何だ?何があった?」
ここはカルナが集めた軍勢のど真ん中だ。
カルナが一声かけるだけで、
ゾロゾロと人相の悪い男共が集まる。
たまに女も混じっていたが、
基本的には、むさ苦しいことこの上ない。
おっと、そんなのはどうでも良い。
正直言って、他の人間はどうでもいいのである。
俺の目はカルナに釘付けになっていた。
『ギユルルルルル』
「な、なんの音だ?」
カルナを見ると腹が鳴る。
ヨダレがたれる。
ギチギチと牙では無く、歯が鳴る。
不味い。
変幻スキルが溶けかけている。
俺の腹の音に気を取られた一瞬のすきをついて、
カルナに接近、
カルナの装備、白虎の毛皮でできたマフラーを奪う。
両手に持って、ガジリ、とマフラーに噛み付く。
美味い。というか、味よりも充足感が凄い。
ガジガジ。
ひと噛みごとに、至福感が体に満ちる。
これは、やめられん。
人間の歯では、白虎の毛皮を噛みちぎることはできない。
だが、この満足感はどうだ?
「あ、私の白虎のマフラーが」
カルナが文句を言うが、気にしない。
しゃがみこんでガジガジ齧る。
そんな俺を見て山賊達は口々に、
「お、おい。誰かマフラー取り返してやれよ」
「………男の唾液がついたマフラーとかいるのかな?」
「あれ自慢の白虎の毛皮製だろ。勿体無い」
「うへ〜。衣服マニアとかそういうの?あれ?」
「………カルナの大将よりも、その衣服に興味あるとか、どんだけだよ」
「バナナの皮だけ食べるようなもんか?」
「凄い変態じゃないか」
いつの間にやら、
とんでもない変態疑惑をかけられてしまった。
言いたい放題言ってくれる。
しかし、俺の至福の時間を邪魔さえしなければ、それで良いのだ。
『ガリ』
痛い。なんだ?
あ、歯が折れてら。
白虎の毛皮を、噛んでいた歯が折れた。
白虎の毛皮は、
人間の歯では噛みちぎることはできないのか?
………というか、歯が折れた痛みで気がついた。
正気に戻ったと言っていい。
俺、白虎装備にあてられて、また混乱してたな。
以前アキリアから言われてたのに、
すっかり忘れてた。
原因さえわかれば問題無い。
変幻スキルが解ける前に、新たに変幻をかける。
リトルドラゴンへとその体を変えた。
この牙ならば、白虎の装備も噛み砕けるはずだ。
ガジガジと白虎の毛皮でできたマフラーを噛み砕く。




