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74、ドラゴンブレス2


 人の住むエリアに近づいた為に、

 余計なトラブルをさけようと、

 人間の姿に変幻している。

 そしてその目には、異様な姿の城塞都市セイウが写っていた。


 城塞都市を無数の兵隊が囲んでいる。

 しかも城塞都市の門は閉められ、

 都市を囲んだ兵隊と都市は戦争をしているのかもしれない。

 この距離からではよくわからない。


 だが、一つだけ言えることがある。

 ………城塞都市を取り囲んでいる兵隊に、

 覚えたてのドラゴンブレスを打ち込めば、

 さぞ楽しい事だろう。


 覚えたての力を試してみたい。

 ………悪魔の誘惑だ。

 力を手にした者は皆こう思う。

 その力を使ってみたいと。

 だからあれこれと理由をつけて、

 正当化して、周りを騙して自分を騙して

 使ってみたいと思った力を使うのだ。


「上腕二頭筋。ちょっと聞きたいんだけれど」

「はい。なんでしょうか?」

「あの都市を取り囲む兵隊の群れに、ドラゴンブレスを叩き込みたいんだが、どう思う?」


 俺の言葉に上腕二頭筋よりも、一緒にいた女性が、


「いやいやいや駄目ですよ。あれ正規兵ですよ」

「そうか、駄目か」

「いいえ。ぜひともやるべきですじゃ。ついに覚悟を決めましたか」


 上腕二頭筋はハラハラと涙を流す。


「え?」

「我が教団が世界制覇に乗り出す第一歩としては、十分にありかと。指導者の偉大な力を見せつけ、世界を筋肉で制覇するのです」


 そういやコイツは、そんなトチ狂った事を言ってたな。

 説得されてたのに、まだ諦めてなかったのか?


 ………これは駄目だな。

 ブレスを叩き込むのは中止だ。

 何よりも、この脳筋の思考回路を聞いて、逆に落ち着いた。

 脳筋と同じ思考で行動すれば、

 俺まで脳筋になってしまう。


「と、とりあえず。あいつ等が何処の兵隊か知るのが先かな?味方かも知れないし」


 というか、俺にとって、誰が味方で誰が敵だ?

 チゴヤ商会は味方と見ていいが、

 チゴヤ商会と敵対してる第三王子も、

 俺には別に敵じゃないしな。


「は、は、は、簡単なことですよ。我等教団の勧誘に応じる者が味方で、勧誘を拒否した者が敵です。ちょっとあいつ等に死にたくなけば我等が同士になれと言ってきます」


 上腕二頭筋はいい笑顔でわらう。


「何処の邪悪教団だそれは?」


 コイツに聞いたのが間違いだった。

 というか、コイツは壊滅的に相談役には向いていない。

 武力極振りの脳筋に、軍師やらせるようなもんだ。

 それはこいつが駄目というよりも、

 コイツに相談してる俺が駄目だよな。

 

 コイツは軍師から解任だ。

 もう一人の女、名前知らんけど、を脳内で軍師に任命する。


「君はどう思う?」

「え〜と、城塞都市セイウはこの国の王都東を守る最後の砦です」

「そうだったか。あ〜前に聞いたかな」


 誰かに聞いたような聞かなかったような。


「国の中心部にありますから、他国と戦争をしていない今、ここに兵隊を展開出来るのは、この国の兵隊だけかと」

「う〜ん。やっぱりそうだよね」

「だからあの兵隊を敵に回すと、最悪国を敵に回すことになりかねません。最低限何処の所属かを調べるまでは、いざこざは避けるべきでは?」


 脳筋に比べて、女は意外と優秀だった。

 いや、脳筋と比べるのが間違いか。

 この女の言う事には一理ある。

 ………偵察か。

 俺はこの国の情報知らんから、

 偵察行ったところで軍隊の所属とかさっぱりわからん。

 何処の軍隊かもわからない所に女を向かわせるのも不味い。

 というか、そもそもこの女も信用できるかもわからない。俺が竜だと知られてる以上、売られかねん。

 となると、

 

 おい、ちょっと脳筋偵察に行ってこい。

 ………いや、だめだろこれも?

 ………………嫌な予感しかしない。

 だけども一番マシか?


「上腕二頭筋、偵察を頼む」

「御意」


 上腕二頭筋は、にっこり微笑んでポーズを決めた。

 返事と笑顔はいいんだよな。コイツ。

 

「え、じゃあ私しばらくドラゴン様と二人きりなんですか?私、食べられたりしないですよね?」


 そしてお前は何気に失礼だな。


「安心しろ。腹が減って、どうしても我慢できなくなった場合でも、馬車に積んである死体食べるから」

「全然安心できません」


 ホント失礼な奴だ。

 頭おかしいのか、コイツは。

 ここで、まともなのは俺だけだな。



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