71チゴヤ商会への道3
脳筋が女性を口説いている。
ムカつく。
俺を魔物にぶつけたのも許せん。
………どうしてくれよう。
なんか女性のほうも、まんざらじゃなさそうだ。
このままでは上手くいってしまう。
あの脳筋顔はいいしな。
体つきも超一流だ。
筋肉好きには堪らんだろう。
ぐぅ許せん。
よし。
………………俺は大きな口で、
倒した巨大な魔物に食らいついた。
グッチャグチャ。バリバリ。
強靭な牙と顎で生のママ、鱗や骨まで噛み砕く。
できるだけ大きな音が辺りに響くように、行儀悪く。
異様で不気味な大きな音があたりに響く。
「な、何?」
「なんじゃあ?」
少し離れた場所にいる二人も、
ギョッとして此方を振り向く。
俺は魔物の血肉で汚れた顔で二人を睨む。
半開きの口からは魔物の血肉が見えるように。
できるだけホラーな感じで。
二人の良い雰囲気をぶち壊してやる。
「ひ。ド、ドラゴン!」
怯えろ。恐怖せよ。生物界頂点の一角。
ドラゴン様がここにいるのだ。
「は、は、は。大丈夫ですぞ。アレはウチのドラゴンです」
「あ、あなたの?」
「ウチの教団の最高指導者。良いドラゴンです」
「そ、そうなんですか?」
「もちろんさ」
そう言って上腕二頭筋は、怯える女性をドサクサに紛れて抱き寄せている。
てか、口調まで変わっている。
空いている方の手で、グッジョブと言わんばかりに、
ピースしてきやがった。
あ、あれ?
しまった逆効果。
俺は吊り橋効果的な、アシストしちゃった?
クソぅ。これはもうしょうがない。
筋肉の恋路を邪魔する俺は、魔物を食らって諦める。
モグモグ。あ、結構美味しい。
これはレベル50超えてるな、味的に深みがある。
レベル高い魔物は、食べると充足感があるんよ。
生でも美味美味。
巨大な魔物。全長4Mクラス。
体重はゆうに1トンを超えるだろう。
よく一撃で倒せたな?
もしかして上腕二頭筋って結構強い?
強いんだろうなぁ。でも鑑定はしない。
筋肉とか筋肉とか出るに決まってる。
魔物はガッツリとした食いごたえがある。
ここに置いていくのは勿体無い。
食い尽くす。
少し時間がかかるが筋肉に文句は言わせない。
俺をぞんざいに投げた罰だ。
「げぇ〜ぷ」
夢中になって、骨まで残さず食べ終えた。
案外骨の髄が美味いことに驚いた。
さてさて、上腕二頭筋はさぞ待ち草臥れている事
………………なんだぁアイツら?
もう、できてないか?
なんか筋肉達の様子がおかしい。
俺が魔物を、美味しく頂いてる間に、あの野郎。
美女を美味しく頂いてたんじゃ………。
いや、深く考えるのは辞めよう。
筋肉の恋路とか、どうでも良い。
チクショウ。
「護衛と馬を全て失ってしまって、馬車が動けず。荷物も死体もこのままにしておくわけにもいかずに、身動きが取れないのです」
「は、は、は。私にお任せください」
「任せろと言われましても」
「私が馬の代わりに馬車を引きましょう。
ビシリと、自分の近肉を見せつける上腕二頭筋。
マジカ〜。コイツ馬車を引くつもりか〜。
人間の死体も馬車に積むのに大丈夫か?
大丈夫なんだろうなぁ。
脳筋だし。
筋肉馬車が爆誕するの?
まぁ、馬車に俺も乗せてもらえるなら良いか。
別に急いでる訳でもないし。




