51首切り騎士
「ウギャ、ウギャ、ウギャウギャウギャ」
ちび竜は上機嫌でよだれかけを装備する。
ナプキンを2つ折にして、
折り目のある方を自分に向けて膝に乗せる
両手にはナイフとフォーク。
目の前には王都で売られていた魔物肉。
ここは王都だ。
料理人も売られている魔物も最高のはずだ。
ウキウキ上品に肉を切り、上品に口に運び、
アグアグと食い散らかす。
「ウギャン」
「お口にあいましたか？」
「ドラドラちゃん美味しいかい？」
上品に右手で料理を掴み、左手で口に運ぶ。
上品にヨダレをたらし、口に肉を詰め込む。
あれ？
なんかおかしい。止まらない。
夢中になって肉を齧る。
「ミギャ？」
異変に気がついた。
明らかにレベルの違う肉がある。
赤く柔らかい肉が少量混ぜこまれている。
俺はその肉を指差し料理人にミギャミギャ聞く。
「気付きましたか？」
「ミギャ！ミギャ」
「それは流れ着いたエンペラークジラ死骸の肉です」
「ミギャ？」
「人類では倒すことの出来ない高レベル魔物です」
「ミギャ」
「たまたま死骸が流れ着いたので入荷できました」
「ドラドラたん。その肉気に入ったの？」
「ミギャ」
ブンブンと首を立てにふる。
「料理人。それのステーキを僕とドラドラちゃんに」
「はい」
エンペラークジラのステーキ齧る
柔らかく、食べる毎に力が漲る。
なんだこれ？
ありえん。
セルバンテスコレクションを遥かに超える充実感。
一瞬で食べ終わる。
たぶん、今まで食べた中で最も高レベルの魔物だ。
皿を料理人に渡しておかわりを催促する。
「ただちに、おかわりを用意します」
「ミギャ」
この肉は凄い。
一口食べる毎にガツンとくるぜ。
追加のおかわりを頼もうとしたところで、
「大変です。一階に魔人が侵入してきました」
「げ、迎撃しろ」
魔人？セルバンテスの事だよな？
セルバンテスに邪魔されてしまった。
おのれセルバンテス。
何してくれてるんだ。
せっかくのおかわりを。
「魔人を凶刃が足止めしています」
「爺やが。よし近衛も向かえ。返り討ちだ」
「御意」
「僕も後から行くぞ」
「おやめください王子」
「魔竜王剣があれば大丈夫だ。取りに行く」
あのやべードラゴンキラーか。
確かにあれがあれば、
魔人ともやりあえるかもな
「王子に数人護衛を、残りは魔人だ」
「おう」
「ドラドラちゃん行ってくるよ」
「ミギャ」
皿を王子に差し出して、おかわりを要求する。
「ドラドラちゃんにおかわりを」
「はい」
俺と料理人とメイドの三人だけが、部屋に残された。
黙々と運ばれる料理を食べる竜。
そこへ
全身鎧を着込んだ首の無い男が一人乱入してきた。
右手に剣。
左手に兜に覆われた自分の首を持っていた。
あるべきところに首の無い人間。
魔物か？
「ミ、ミギャ」
「く、首切り騎士」
「ヒイイ」
料理人とメイドが怯えた声を出して後ずさる。
むぅ。予想の外だ。
首切り騎士？
首切りって自分の首を切っとるやん。
左手に自分の首を抱えてる。
思ったよりやべー奴だった。
人間じゃなくね？
セルバンテスと凶刃に匹敵するとか言ってたな。
何より竜眼スキルを使ってみるも、
ステータスが見えない。
料理をモグモグしながらどうしよう？
と、考える。
と
一瞬で間合いを詰められた。
剣で首を一撃される。
ギャリンという音と共に吹き飛ばされた。
「ウ、ウギャァァァァ」
「か、硬いな」
切られた首に手をやると、大量の血が出ていた。
鱗ごと切られた？
ゾッとした。
見たところ首切り騎士の持つ剣は、
ドラゴンキラーでは無い。
ドラゴンキラー特有の嫌な感じがしないのだ。
良質な武器ではあるだろうが。
対竜特化武器では無い。
そんな武器で鱗ごと切られた。
もしも武器がドラゴンキラーなら、
首を落とされていただろう。
不味い。不味い。不味い。
自慢の鱗が、やくにたたない。
その上に剣速が早すぎる。
「ウギャァァァァァァァ」
コイツはたしか第二王子の部下のはず。
大声をあげて助けを呼ぶ。
高レベルの近衛兵を含め、
第三王子側の沢山の兵がいるはずだ。
気がつけばすぐに駆けつけるはず。
「無駄だ。下で魔人とやりあってる最中だ」
「ウ、ウギャ」
「助けは来ない」
セルバンテスなにやってんの〜〜〜。
セルバンテスのせいで料理を中断され。
セルバンテスのせいで殺されかけてる。
セルバンテスホントなにやってんの〜〜〜
