5.お帰りを言いたいアキリア
新たに、変幻スキルをアキリアからもらった。
このスキルで、生きてるモノに化けると、
変幻中は魂の劣化スキルを一時的に無効化出来るらしい。
「もらったはいいが、これどう使えばいいんだか?」
(基本的には気合いだね。なりたい自分をイメージするのさ)
気合って言われてもね。
「人間になりたいって願えばいいのかな?」
(そだよ。慣れてる前前世の人間か、前世のドラゴンかゴッキーになりたいと強く願えば。簡単にいけるはずさ)
「Gには、ならない」
(まぁそのうちね。あ、でもアンデッド系列には、なれても変幻しちゃ駄目だよ)
「え?なんで?」
(魂の劣化スキル発動して魂削れちゃうから)
ああ。なるほど、それは確かに本末転倒だ。
要は生命のある物に変幻すればいいのか。
「わかった。それに注意して、変幻発動」
(さあさぁ変幻スキルで、君の欲望をみせておくれ)
欲望ってなんだよ。
む、体が縮む。
デカイ体がみるみる小さく。
鏡がないから、どんな体になったか正確にはわからない。
が、ドラゴンゾンビではなくなった。
自分の体をペタペタさわる。
うん。人間の男だな。
「俺の欲望ってなんだ?」
(変幻スキルは、本人の強いイメージを開放するからね。欲望が表に出やすいんだ。君は意外に普通だね)
「欲望も普通もなにも、基準がわかん無いしな」
(なんでさ?)
「そもそも昔の記憶ないしなぁ」
記憶を消されてるから、比較対象も無い。
判断基準がどうしようもないしね。
(ああそうか、記憶消しすぎちゃったか)
「うん。そういう事」
(記憶ほとんど無いと、まっさらで平凡的な人間になるのか〜。次からは、もっと記憶残して転生させないと、面白くないな〜)
「お前は、いったい俺の記憶を何だと思ってやがる」
くそう。
おもちゃ扱いか?
謀反おこすぞ。
(ドラゴンの巣に、何人か人間の死体転がっていたけど、見なかった?)
「ああ。マッマと、俺の前世の死に様が衝撃的すぎて」
(前から思ってたけど、そのマッマってなんだい?)
「母親のことだよ」
(いや、それはわかるよ)
「ん?」
(じゃなくて、どうしてそんな奇妙な言い方なのかな〜って)
ふむ。言われてみればなんだろな?
反射的に口から出てきた言葉だが………。
なんか馴染み深い。
「う〜ん。誰かに記憶を消されたから、さだかでは無いけど」
(遠回しに非難されてるね。僕)
「たぶん前前世くらいの、俺が住む世界では、そういう呼び方をしてたんだと思うよ」
(そんな変な世界に住んでたの?)
記憶が残っているかと聞かれると、答えはNOだ。
アキリアと会う前の記憶は、何一つ覚えてない。
「いいや。う〜ん。なんせ記憶が全然ないからなぁ」
(だよね)
「自分でも、何を言ってるのやら」
(そうかい。そうかい。気にしない。気にしない)
「まぁ良いか」
さほど執着もなく、あっけらかんとしたものだ。
記憶を無くす前の俺は、何してたんだろな?
何かと戦っていたのだろうか?
きっと巨悪を相手にしていたに違いない。
(ところで、人間の身体の使い勝手はどうだい?)
「うん?」
(違和感とかないかい。どっか痛いとか、動かしにくいとか?)
「ん〜と。ちょっと待って」
両手と両足を振って、様子を確かめるが、問題無い。
ドラゴンゾンビに比べて、パワーはガタ落ちしたが、小回りきいていい感じ。
あえていうと、ドラゴンの時に感じた、充実感が無いのが惜しいが、その他は問題無い。
大丈夫だと、指を立てる仕草をしたが、ふと思った。
「アキリアって俺の状況見えてるの?」
(ああ、こっちから丸見えさ)
「そうか」
深く突っ込むのはやめよう。
アキリアが覗き趣味とかもっていたら、いやだ。
知らない事は、あったほうが良いのだ。
(それで身体の調子はどうだい?)
「絶好調だ」
(そう)
「むしろドラゴンよりも調子が良いくらいだ」
(それは良かった)
「ステータスはどんなものかな?竜眼発動っと」
しかし何も起きなかった。
あれ?竜眼が使えない。
(まぁ今は人間だからね。竜の眼もって無いから)
「ああ、そうか変幻すると、スキルに制限受けるんだ」
(そだよ。特定種族限定スキルは使えないのもあるよ)
「他のスキルは使えるのかな?」
人間形態で使用不能なスキルは、確認しておかないと死活問題だ。
(ん〜とね。竜眼と魂の劣化は使えない)
「うん」
(あとはナンチャラ毒だけど使ってみる?)
「ここでためせばいいのか?」
(たぶん使えるけど、人間には猛毒だよ)
「ドラゴンゾンビ形態じゃ無いと使えないの?」
(使えるけど、君も毒で死ぬ)
「だめじゃん」
(使った瞬間、僕の元へ、ただいますることになるよ)
アキリアの声はウッキウキに弾んでいる。
駄目だコイツ。
「使ってたまるかよ、そんな危ないもの」
(え〜)
「自爆系列のスキルは手放したはずなのに」
(ニヤニヤ)
「変幻スキルとのコンボで、新たな自爆スキル誕生させちゃったじゃないか」
(お〜凄い才能だよ。よかったね)
凄いね〜っと喜ぶアキリア。
でもいらないな。
そんな才能。
「そもそもスキル名なんだっけか?絶対人間滅亡毒?」
(それはドラゴンの種族名混ざってないかい?)
「てかステータス確認する術が無いと、スキル名わからん」
(間が抜けてるね)
「ええい。そういうアキリアは覚えてるのか?」
(覚えてるというか、鑑定スキルあるから見えるよ。え〜とね)
アキリア鑑定スキル持ちか。
当然といえば当然だけど、なんかずるいな。
鑑定持ちにとって普通でも。
鑑定持たないものにとって、鑑定はチート臭強いな。
「いやまて。教えるな」
(なんでさ?)
「自爆スキル化したスキルなんて、忘れてた方がいい」
(え〜)
「どうせ使わないから」
危険すぎる。そんなん。
自決用の爆弾抱えて動くようなもんじゃないか。
なんか、やたら印象から察するに、ヤバそうな毒っぽい。
(使って自爆しなよ)
「しない」
(こっちに帰ってきてよ。そろそろお帰りって、言いたいし)
「どんな状況の、ただいまだよ。ソレ」
(僕はお帰りが言いたいんだよ)
やっぱりアキリアは頭おかしい。
俺の事を爆竹か花火と思ってやがる。