44セルバンテスのコレクション3
シェフがセーラを呼びに行った。
その間、俺は福音スキルを連続で使う。
この異常事態の原因を知りたかったのだ。
が、やはり返事がない。
………目の前の氷漬けになってる黒い六本腕。
何処からどう見てもアキリアだと思うが………。
「おや?あなたは、どなたですか?」
黒い氷像を見ていると、
やってきた男に声をかけられた。
セルバンテスだ。
怪我をしているのか、包帯を巻いてるが、
何か気配がヤバイ。
何時もより殺気だってる。
「俺だよ。セーラといたドラゴン電太だよ」
「ど、ドラゴン殿?」
「人間に変幻できるんだ。知ってるだろ」
「そんな顔でしたか?」
「覚えてないか?平凡な顔だからな」
「確かに」
「何ならショタバンテスになっても良いぞ」
「やめてください。鑑定で福音スキルを確認しました」
ああ、それなら確実だ。
レアスキルだからな。
「それでセルバンテス」
「はい」
「これについて聞きたいんだが」
アキリアっぽい氷像を指さした。
セルバンテスは目を細める。
「ああ。これですか。懐かしい」
「コレは神だ。ここにあって良いものじゃない」
「か、神?」
セルバンテスが驚いた。
「知らなかったのか?」
「はい。只者ではないとは思ってましたが」
「どこで狩ったんだ?こんなもん?」
「では無く落ちていたのです」
「落ちていた?」
シェフも言ってたな。
「はい」
「いったいどこに?」
「今から20年以上前に、海辺近くの森の中にあったのです」
「生きていたのか?」
「いえ。この状態のまま、腐りもせずにありました」
「死体なのか?」
「ええ。脳をくり抜かれ、内臓もありませんでした」
「………それは」
「当時魔物の死体をコレクションしていたものですから、それもそのまま」
「なるほど」
冷凍保存された魔物の群れを見回す。
「ずいぶん集めたな」
「若気の至りです」
「俺が集めた魔物、食べてるが良いのか?」
「どうぞ、飽きてから、ずいぶんたってますので」
「飽きるのか?」
「はい。コレを集めた直後に旦那様に出会ったもので」
「これ、か」
「これが神というのは本当ですか?」
「ああ、死んでた俺をドラゴンとして、生き返らせた」
「これが?」
「コレと同じか、これに似たモノがしれないが」
「それはとんでもない話ですね」
「俺からすると、コレ保存してたセルバンテスが怖いわ」
「知らなかったもので」
サラッと答えるが、半端ね〜わ。
この執事。
「セーラはこれから福音貰ったのかもな」
「ソレは………」
「コレどうしたものか?」
「食べてもよろしいですよ」
「………食べるか。怖いわ」
「なぜです?」
「鑑定してみたかい?」
「鑑定不能でした」
セルバンテスでも鑑定不能って
やっぱアキリアの何かだな。
「だろうなぁ。こんなん食べたら命は無い」
「そうなのですか?」
「福音スキルで会話する神がコレと同じ姿だ」
「………」
「これ食べたら、何をされるか」
「ああソレは確かに」
「と、とりあえず。祀っとこう」
「はい。今なんと?」
「敬ってる感じにしとけば、良いんだ」
「そうなのですか?」
「ああ、おだてとけば、間違いない」
「わかりました。保存しつつ、祀っておきます」
セルバンテスは何か納得したように頷いた。
「うん。で、だ。これの次にレベル高い魔物ってどれだ?」
「どうするので?」
「食べる」
「ですか」
「うん」
「コチラのヘラクレスフンコロガシとか」
「いやいやいや駄目だろそれ」
「鉄頭巨大コウモリとか手強かったですな」
「く、まずそうだが、滋養ありそうだ」
「ハハハ。噛み切れますかなぁ?」
「むぅ強敵だ」
「私も苦戦したものです。ハハハ」
「むう。燃えて来た。シェフに料理頼もう」
「ソレは面白い」