42、セルバンテスのコレクション
戦いはとりあえず終わった。
損害だけ見れば、負けだよなぁって感じ。
主力の執事セルバンテス隊ボロボロ。
セーラの妹の兵隊も敗走。
まぁ負けなかったから、良いのかね。
チゴヤ商会へと戻ってきた。
戦いに参加した人達は、手当てだなんだと忙しそうだ。
変に活気はある。
殆ど参加しなかったチビドラゴンの俺は、
チゴヤ商会の兵隊や傭兵から、
「お、おい。ドラゴンだ」
「すげー始めてみた」
「チゴヤ商会の今回の戦いの切り札あれかぁ」
違う。今回の切り札は魔女だった。
幻のショタコン砲は、
不発だったけれど、
発射されていれば。今頃王子は大変だったろう。
「でもドラゴンちっこいぞ。強いのか?」
「わからん」
「売り飛ばしたらいくらになるかな?」
「やめとけ。チゴヤ商会にお前が売られるぞ」
「行軍中ケルベロスの丸焼きを食べてたぞ」
「………人間食べないよな?」
「ミギャ」
「おい。反応したぞ」
「言葉わかるのか?」
兵士達に親指をたててやったら、
なんだか驚きの目で見られてる。
気分は良いよ。
シェフから、何か料理のリクエストは無いか?
と聞かれたので、食材を見せてもらうことにした。
シェフと二人で巨大な冷凍庫へと向かう。
「ミギャァァァァ」
冷凍庫の中は圧巻だった。
体育館数個分はあろうかという建物に、
処狭しと魔物が積まれている。
「驚いたかい?」
「ミギャミギャ」
「これ殆どが執事セルバンテスが狩った魔物さ」
「ミギャ?」
「かつて魔人と呼ばれた男のコレクションさ」
「ミ、ミギャン?」
「旦那様に会って丸くなったが、それまでは………」
「ミギャ」
「セルバンテスめちゃくちゃだったぜ」
「ミギャ?」
「狂人、魔人、悪魔。散々な二つ名持ってたよ」
「………………」
「めぼしいコレクションだけでもこれだからな〜」
「ミギャ」
「ま、俺は、レア魔物が料理できるから役得だけどね」
セルバンテス。そんなにやべー奴だったのか。
強いのは知ってたけど、
ヤバさは感じなかった。
デカイ倉庫に並ぶ猛獣や恐竜や怪獣のような魔物。
それらが今の執事セルバンテスとは、結びつかない。
ううむ。
ホントにヤベー奴って、
表には出さないものかもな。
「ミギャ、ミギャ、ミギャ、ミギャ」
「ふんふ、ふんふ〜ん」
シェフとチビ竜、上機嫌で鼻歌を歌う。
まぁそんな事よりもご馳走の山だから。
チゴヤとセーラから、
好きなものを食べていいと言われている。
シェフは好きな魔物を料理して良いと許可がでてる。
お互いにめったに無いチャンス。
せいいっぱい楽しむのだ。
なんて事を考えていた。
「こっちが特別保管室さ」
「ミギャ、ミギャ、ミギャ、ギャ」
上機嫌なのもそこまでだった。
甘かった。
チゴヤ商会の連中は、遥かに頭おかしかった。
「ミギャァァァァァァァ」
「ああ、まさかコレを料理出来る日がこようとは」
シェフは喜びに震えている。
料理する気満々だ。
だが
俺はそこにあった見覚えある姿に、
顎が外れそうなほど驚いていた。
そこには見覚えのある
アキリアが冷凍保存されていた。
 




