ドラゴンの卵に転生したら、目玉焼きにされてドラゴンゾンビになった

4.新たなスキルをもらった

　俺は字面だけで人類滅ぼせそうな、ドラゴンゾンビになってしまった。

　魂がガンガン削れるアンデッドスキルのおまけつき。

　兎にも角にも、このまま命を失うわけにはいかない。

　早く完全に生き返りたい。

　なんとかドラゴンの巣より這い出てきた。

　俺は辺りを見つめる。

　荒れ果てた荒野だったが、それでも太陽の光は眩しく、その光を浴びると気持ちが良かった。

「俺、アンデッドになったのになぁ。それでも太陽に心動かされるのかぁ」

　感動した。

　太陽って凄い。

　感動したまま、福音スキルを使う。

　アキリアの情報が必要になる。

「アキリア。どうすればゾンビ状態から復活できる？」

「ん〜、そうだね」

「難しいのかい？」

「いや、強いモノを大量に食べるだけでいいのさ」

「なんだそれだけで良いのか？」

　思ったよりも条件は簡単だな。

　それじゃあ、そのうち生き返れるな。

　ちょっと安心した。

　回復可能か、回復不能可で、安心感が段違いだ。

　いずれ回復可能な傷なんて、傷のうちには入らない。

「ああそうだ。これから人間がここに来るから食べちゃえば」

「へ？　なんで人間が？」

「討伐したドラゴンの死体を回収しに来るはずさ」

「な〜るほど。俺が死体使っちゃったけど」

「君を見つけたら、君を仕留めに来るさ」

「あああ。そうだよなぁ」

　アキリアは、あっさりととんでもない事を言う。

　人間にねらわれる？

　その人間を食べろと？

　抵抗感あるなぁ。

　くっそ。

　俺の竜生、ハードモード継続中じゃないか。

　しかも、これから来る人間は、俺のパッパを倒した連中かもだ。

　勝ち目があるのか、はなはだ疑問。

　俺レベル5だし。

　大破してるし。

　そう思ったが、口には出さないでおく。

　アキリアがウキウキしてるしな。

　水はささんとこ、

「ねぇ？　どうするの？　どうするの？　超弩級戦艦人類絶対滅亡腐竜だっけ？　プププ。カッコイイ」

「おいやめろ。なんか恥ずかしい」

「強そうじゃん」

　強そうだけれども。

　何かいやだ。

　アキリアに笑われてるし。

　俺自身、種族名覚えられないし。

「つーか俺は今、姿の見えないアキリアと会話してるけどさ」

「うん」

「この会話って、第三者からはどう見えてる？」

　たしか福音スキルで話してるらしいけど？

　他人には、俺の会話とアキリアの会話、聞こえるのかね？

「僕が君の頭に念和飛ばしてるんで」

「ほほう。俺の会話は」

（君は道端で一人、トリップしながらブツブツ言ってる感じかな）

「俺やべー奴じゃん」

（そうだね。他人の前で福音使うと、そう思われちゃうね）

「あああ、たまにいる、独り言言ってる、やべぇ奴扱いされるのか？　注意する」

　ホント、注意しないと電波さん待ったなしだ。

（それよりも今は寿命が………。諦めてコッチに戻って来るかい？）

「いいや。アキリアの提案に従って、人間食う」

（やる気になった？）

「つーか死体のフリする。人間油断する。騙し討ちする。勝つ。食べる。」

（それは………ズルい。てか、なんでカタコト？）

「気にするな。俺ドラゴンゾンビ系だし。死体のマネはお手の物だと思う」

　これはいい作戦だろ？

　ビビるだろうな。

　倒したドラゴンの素材を回収しようとしたら、ドラゴンゾンビでしたって。

　凶悪な罠だ。

　あ、なんかワクワクする。

（いいね。いい作戦だね）

「だろ。ところで、僕の余命は、あとどれくらいあるんだ？」

（ん〜なんで？）

「余命知りたいのは当然だろ。戦闘中に時間切れとか、洒落にならんし」

（………ん〜。あと大体数分の命かなぁ）

　おい？　こら。

　数分？

　あと余命数分ってなんだ？

　それいきなり計画破綻してるやん。

「おい待て、どういう事だ」

（どうと言われましても）

「このままだと、俺死ぬじゃん」

（一度こっちに戻っておいでよ。また生き返らせるからさ）

「嫌だ。わざわざ、そっちに行くために死ねるか」

　駄目だコイツ。

　基本的に、死に対して忌避感が無い。

　あっさりと俺に待ち伏せさせて。

　時間切れで死亡。

　俺を殺すためのミスリード仕掛けてきやがった。

「いや、それよりも寿命伸ばす方法は？」

（だから人間食べれば？）

「それで何日くらいもつんだ？」

　正確な時間を知らないと、

　同様のミスリードで殺されかねん。

（ん〜。一人食べれば2、3秒は寿命が伸びるんでないの？）

「100人食べても、数分の命しか伸びないじゃないか」

　人間食べる意味あるか？

　それ？

　アキリア確実に俺を殺しにきてないか？

（ん〜と。じゃあ、新しいスキルあげるよ）

「スキルでなんとかなるのか？」

（変幻スキルって変身スキルあげるよ。それで一時的に人間になればいい）

「するとどうなる？」

（アンデッド以外に変身している間は、寿命減らないよ）

「まじで？　そんなんあるなら、はじめからくれよ」

（う〜ん。ゾンビになるとか思わなかったし）

「その作戦でいこう」

（じゃ福音スキルで、君に変幻のスキルを譲渡するよ）

　便利だな福音スキル。

　他のスキル生えてくるスキルって最高。

「おう。頼む」

（あ、でもスキルを持てる数は、最大で五個までだからね）

「何と。スキルスロット上限5個かい」

（何か一つ、スキル手放さないと、持てないよ）

　まじか。

　スキル所持制限縛りあるんかい。

　俺の持ちスキルは、

　福音、竜眼、忌々しい魂の劣化、道連れに、ナンチャラ毒、

　だったか。

「魂の劣化を手放そう。これまじでいらんな」

（うん。それアンデッドには外すの無理）

「あ、やっぱりか。俺ドラゴンゾンビだわ」

　腐って破れたドラゴンの羽をバサバサする。

　空は飛べない。

　残念。

（それ一度生き返らないと、外れないから）

「まじか、早く生き返りたいぜ」

（あと福音も、僕が会話出来なくなるから外さないで）

「お前との会話必要かな？」

（酷い。まぁ福音外すと変幻スキル、譲渡できなくなっちゃうしね）

　なんと。

　それなら外せないか。

　スキルもらえるスキルとか、優等生スキルだし。

「ああ、なるほど。となると鑑定の竜眼は残したいし。残り2つって何の効果だっけ？」

（道連れは、自爆の凄いやつ）

「いらない」

（都市一つ自分ごと吹っ飛ばせるよ）

「いらない」

「ナンチャラ毒は、都市一つ潰せる毒を撒き散らすスキル」

　あかん。

　両方使いどころが難しすぎる。

　両方いらない。

　そんなの2つ持ってるとか、俺頭おかしい。

「何だよそれ。いろいろと駄目だろ」

（まぁ種族名からして、超弩級に物騒な竜だしね）

「むぅ」

（で、どうする？）

「効果が似てるスキルあるし、道連れいらんな」

（え〜使えば、きっとキレイな自爆するよ）

「キレイでも、自分が死んだら意味がない」

（自爆はロマンだよ）

　いや、わかるよ。

　確かに自爆のロマンはわかるけどさ。

　自分で使うのは躊躇うだろ。

　アキリア馬鹿なの？

「いやイラン」

（そっか。じゃあ道連れ外すよ）

「ああ」

（そして、はい変幻スキル。精神力あれば、なんにでも変幻する事ができる神スキル）

「おお、めっちゃ便利そう」

（ただし精神力と、イメージ力がめちゃめちゃ必要）

　え………なんだそれ？

「精神力？　イメージ力？」

（かなり使うの難易度高くてさ。扱い難しいよ）

「変身に気合いる系かぁ」

（けど、変幻中は、魂の劣化スキルで魂は削れるのを無効化できる）

「そうか。それは助かる」

　なんか凄そうだ。

　だけどアキリア。

　また何かたくらんでないかな？

　コイツの行動原理はよくわからんが、怪しい。

「どうしてそんな便利スキルをくれるんだ？」

（ん、かわりに回収する、君の自爆スキルが、結構レアスキルだし）

「そうなの？」

「うん。それに変幻スキル見てて面白いし」

「面白いって具体的には？」

（これへこんでるときに、うまく使うとさ）

「ああ」

（ゴッキーになったりするんだよ）

　思ってたより、ろくでもない理由だった。

　やっぱりアキリア駄目だ。

　邪神かなんかじゃあるまいか？