魔女
セーラの部屋にて。
「セーラは助かるのか?」
「セーラ嬢は大丈夫だよ」
「ゾンビ状態治ってないじゃん」
「ま、呪いは解けたから時間がたてば戻るよ」
「ほんとか?」
「魔女を信じなさい」
「おい。くっつくな」
ヨダレを流す魔女に襲われそうになった。
その時扉がガチャリと、開く音がした。
「な、セーラの寝室で何をしてるのだ? お前等は」
見知らぬ、おじさんが立っていた。
全ての指にゴテゴテ光る指輪がついている。
まるで輝くメリケンサックのようだ。
「ハロー。チゴヤちゃん」
「魔、魔女殿? こ、これは。一体何を」
「ん〜とりあえず。セーラの解呪は終わったよ」
「な、なんですと。本当ですか?」
「安静にしとけば治ると思うから。お大事に」
「な、ホントに? 娘は助かったのか……、」
チゴヤは、安心して脱力したのか、その場に膝をついた。
ま、いつの間にやら娘の命が助かったら、そんなもんかな?
「魔女は嘘を………つくけど、コレはホントだよ〜」
「報酬のドラゴンの爪と牙は?」
「もらった。この子が届けてくれたよ。そこにあるよ」
チゴヤと呼ばれた男。
おそらくセーラの父親は、呆然とした様子だった。
無理もない。
娘が治ったと聞かされ。
娘の部屋には、治療しにきた魔女がいて。
血の入ったコップには、探していた爪と牙。
おまけに魔女は全裸の少年姿の俺を、
押し倒そうとしている。
「と、とりあえず、別の部屋で合体してもらえんかな?」
「おい。合体しない。助けろよ」
「合体するわ〜」
「それより服をくれ、裸でいると魔女から襲われる」
僕は、なにか勘違いしてる、おじさんにそういった。
「ダメ絶対。美少年は裸が尊いの〜」
「お前は黙れ」
「………はい。は、ツンな美少年には従います」
「………………」
魔女は大人しくその場のベッドの上で正座した。
セーラの父親よ。
そんな軽蔑の目で俺を見るな。
俺は正常だ。
悪いのは魔女だけだ。
部屋を移動して、服を貰い、着替える。
うん。
上等で地味な服だ。
新品らしく、肌触りが心地良い。
お茶をすると言う、チゴヤの用意した部屋へ向かう。
そこには、チゴヤ。
魔女。
セルバンテスの3人がいた。
「と、言うわけなの〜」
「そうでしたか。魔女どの、少年もありがとう」
俺は、ひらひらと手を振って返す。
どうでもいい。
セーラ以外には興味もないのだ。
執事のセルバンテスが、お茶を持ってきた。
前言撤回。
コイツには、殺されそうになった借りがある。
ので、
「ありがとう父さん」
と、セルバンテスに言ってやった。
空気が凍る。
ふふふふふ。
今の俺の姿は、変幻スキルで
セルバンテス子供時代(予想)だ。
外見だけで、俺とセルバンテスは親子の信憑性あるだろう。
ふふふ。仕返しにセルバンテスを苦しめてやる。
「は、美少年とイケオジがいる。父子。親子なの」
「せ、セルバンテスお前。た、たしかに、にている」
「………」
「セルバンテス」
「落ち着いてください。旦那様」
「し、しかし二人共エルフだし」
「私には産まれて数日で、喋る子供はいません」
………げ。
コイツに年齢バレてら。
セルバンテス思ったより有能。
コイツ鑑定持ちだな。
それも俺より強力な。
だが、まだ諦めない。
セルバンテスを騙す必要は無いのだから。
他の人間を騙せればいい。
「父さん。僕をまた、捨てるの?」
「………ま、また? せ、セルバンテスお前」
「こ、こんな可愛い子を捨てるなんて〜。私が拾いましょう」
「騙されないでください。からかわれているのです」
「しかしお前。あの見た目はどう見ても」
「スキルで化けてるのですよ。魔女様の同類でしょうか?」
「魔女と一緒にするな」
「同類っていうか愛人ね〜」
「お前は黙れ」
「ハイ」
魔女は素直に黙った。
本当にショタの命令には従うのか、この魔女。
闇が深い。
「ど、どういう事だ?」
「人をからかうのが魔女殿の趣味なのですよ。旦那さま」
「そ、そうか」
「それよりも。第三王子と戦争する理由はなくなりました」
「そ、そうだ。やめさせろ」
「はい」
「ところでショタバンテスは、これからどうするの?」
魔女よ。その呼び名は、
俺の事か?
「ん? 福音」
………やはり福音は発動しない。
「???」
「そうだな。まだ福音スキルが使えないからな」
「ふ〜ん。いつなおるの〜?」
「わからん。福音とセーラの回復を待とうかな?」
「ワタシとの約束は?」
舐め回すとか、頭狂ったアレか?
あのやくそくか?
「知らんな」
「魔女との約束を破ると呪うわよ」
俺にとっても約束は特別だけど、俺とコイツは約束して無いな。
「セーラに言ってくれ。約束したのは俺じゃない」
「騙したのね〜。私を利用するだけ利用して〜。飽きたらポイ」
「………」
「酷い〜。魔女を手玉に取るなんて。鬼、悪魔、詐欺師」
「全部違うし。抱きつくな」
「そんな事言って嬉しい癖に〜」
「………否定はしない」
「………デレた。キャーついにデレたわ。この子」
「変幻」
初期状態、平凡な人間に変幻してやった。
この姿でセルバンテスをからかうつもりだったのに。
逆にこの姿のせいでピンチだ。
このままでは俺が魔女に、何されるかわかったもんじゃない。
「あ〜ショタが消えた。え〜。なんでそんな酷い事するの〜?」
「少し黙れ」
「ヤダ。ショタの言う事以外は聞いてあげないよ〜」
「頭いたくなってきた」
「少し、おききしてもよろしいですかな。電太殿」
執事のセルバンテスが、質問してきた。
電太殿って何だ?
まともな名前みたいに聞こえる。
良い気分だが。
俺の名前は火力発電太だ。
鑑定スキルで見られたかな。
ま、質問くらいならいくらでも、後ろ暗い事もないし。
「どうぞ」
「貴方様は何者で、なぜセーラ様をお助けくださったので?」
「ああ、俺とセーラは福音スキル持ちで、なりゆきだ」
「で、ではセーラ様が言ってた伴侶というのは」
「そこら辺は良くわからない」
「と、申されますと」
「神っぽいのと、連絡が取れないから何とも」
「な、なんじゃと。するとセーラが言ってた伴侶とは」
「セーラが言うには、俺みたいだな。でも俺には心当たり無い」
チゴヤが息を呑んで、血相を変えた。
「み、認めん。セーラはパパと結婚するんだ〜」
「だ、旦那さま。落ち着いてください」
「これが落ち着けるかセルバンテス」
「お待ちを、電太殿は、そもそも人間ではないのでは?」
「よくわかったな」
「やはり。正体を教えてもらっても?」
「………やめておこう」
「なぜ?」
「………」
ふむ。俺の種族名。
なんだっけ?
「名乗れない事情があると」
「いや、単純に忘れた」
「やはり名乗れない事情があると言う事で」
俺の言葉を信じてないな。
疑り深いな。
「セルバンテスよ。事態はもっと単純だ」
「と、言いますと」
「自分の種族名を覚えていないのだ」
「………………嘘ですよね」
呆気にとられつつ疑うセルバンテス。
まぁそう思われても仕方ない。
「たまに思い出せるときもあるが、名前が長すぎてな」
「正体に戻って、見せて頂いても?」
「無理だ」
「なぜですかな」
「俺もセーラ同様、ある意味呪いを受け弱っている』
「え?」
「正体に戻ったら死ぬな俺」
「………まことで?」
「セーラと似たようなものだ」
「魔女殿でも解呪はできないので?」
「う〜ん。試してあげても良いよ。お礼もらうけど」
「強力な魔物を食わねば治らぬ」
「食べれば治ると?」
「ああ。なんか魔物肉食わせてくれ。そういや腹が減った」
セルバンテスは、なにか考える素振りを見せたが。
優雅にお辞儀をした。
「なにかリクエストはお有りで」
「強力な魔物がいい。別にお前でも良いぞ」
「お戯れを」
「まぁそうだな。いくら強くても人間は食べても誤差だしな」
「人間を食べた事がおありと?」
「直接は無いが、間接的にはある」
マッマが、俺の体で英雄食べてた。
「私もショタ食べたい〜」
「お前と一緒にするな。意味が違うだろ」
「そうだ。ショタ竜の血があった。のまなきゃ〜」
「飲むと死ぬぞ」
「望む所よ〜」
「多分セーラにかかってた奴より、強い呪いかかるぞ。あの血」
「望む所よ〜」
「その血。厳密にはショタの血ではないかもよ」
「………ちょっと。どういう事よ〜。また騙したの?』
「そういう事だ」
「わからないわ説明して〜」
「ショタでは無い血を飲んで死ぬぞ」
「わけがわからないわ。貴方。私を騙したのね〜」
「いや、勝手な勘違いだろ。血も返せ。あげてないぞ」
「嫌よ、まだまだショタの血じゃ無いと決まったわけじゃない」
「飲まなきゃ好きに使って良いぞ。飲むと死ぬから飲むな」
「横から失礼します」
食事の手配をしていたセルバンテスが戻ってきた、
「どうぞ」
「貴方の血は危険だと?」
「おそらくだが、人間には猛毒だと思うぞ」
「試されたことは?」
「無い」
「魔女殿で試してみては?」
「ちょっとセルバンテスどういう意味よ〜?」
セルバンテスは動じなかった。




