305、発情期205
あれ?
ガツンだのバリンだの、物凄く物騒な音のしてた球体。
アキリアの入った球体が、いつの間にか静かになってる。
アキリア、お前も黙るのか?
それとも死んだとかじゃ無いよな。
まさか………な。
アキリア人形の体は、そんじょそこらの強度じゃ無い。
俺が持ち出した狂ったドラゴンキラー。
あんな物騒で危険な物でなくては、キズすらつけられなかった像。
アレと同じ金属でできてるとか言ってた。
アキリアが身体の依り代にしたアノ人形。
いくらセーラでも、そう簡単に………
そう思いたかった。
そんな事を考えてるうちにもセーラとグドウ伯爵。
おそらくは、お互いに微塵も負けるなど、考えても無い2人の戦闘は続いていた。
「う〜む。介入出来ん。どうしたものか」
俺は当事者のはずなのに。
すっかり蚊帳の外のもよう。
手を出すと足を引張かねないからな。
8つの頭をフル回転させても、何も打てる手を思いつかない。
アキリア神核の縛りが、くっそ厄介だ。
手を出そうとすると、どうしてもアキリア神核を持ったセーラに強化バフを発動させてしまうと思う。
んな事になったらグドウ伯爵の足を引っ張りかねない。
「アキリアの野郎。神核だけでも敵にまわすと厄介なのか。アイツは本当にどうしようもないな」
俺が愚痴ってると………突然。
『な、どうしてここに?』
「…………………。当然………出来る…」
『く、しまった!?』
「……戦……挑……………目…離す…………度胸………い」
ん???
なんだなんだ?
突然頭の中にセーラの声が聴こえてきたが、その声は酷く焦ってるようだった。
あともう一人、セーラ以外の声もわずかに聞こえるような………。
『私はここで負ける訳には!?』
「……敵…しておいて…………目を離………」
『まだ、私には力が残っています』
「だか…さ〜。元…………ほうが…い……から…」
ん? アレ?
グドウ伯爵と戦っていたセーラの影が空高く上昇して行く。
と言うか離脱、逃げてるのか?
ペラペラのセーラの影が物凄いスピードで離れて行く
『ここで神の力を失う訳には………私には、まだヤラなければならない事があるのに』
「だ……さ〜。初………やって…………った…に。僕を倒す……優…す…………〜。優先…位間違ったね」
あ、わかった。
セーラと話してるの、たぶんアキリアの声だ。
何アイツ?
どこでセーラと会話してるの?
待てよ。
もしかしてセーラの本体の所にいるのか?
黒い腕が絡まった球。
アキリアが閉じ込められてるはずの黒い球を見たが、破られた形跡は無い。
だけど………次の瞬間
『ヤレヤレ。予定が大分狂ってしまったよ』
ゾッとした。
次に俺の頭の中にハッキリと聞こえた声。 それは、セーラのものではなかった。
聞き慣れた、アキリアの声だった。
「うっそだろ。て事は、セーラからアキリアの神核を取り戻してアキリアの奴、神に戻ったのか?」
『そだよ』
「うおぃ」
独り言に返事をされた。
急に隣でアキリアの声がすると同時に、軽く足を叩かれた。
目をやると、さっきまでと変わらぬ黒い人形姿のアキリアがいた。
ただ明らかに………さっき迄とは別物だ。
威圧感と言うか、存在感がさっき迄とは別物に変わっていた。
これが神化か。
さっきまで、ひょうきんな人形感覚だったアキリアの存在感が………
今ではまるで人間サイズの巨大ゴキブリ。
そんな禍々しいモノが隣にいるくらいには、ビビる存在感にランクアップしていた。
正直チト恐い。
いや駄目だ。
いかん。
コイツにビビってはいけないんだった。
アキリア神核を持ってる相手には恐怖してはいけない。
『そんなに驚かなくても………ていうか、物凄く何か失礼な事を考えてないかい?』
「急にオマエがトナリに現れれば驚くわ!」
動揺してるのをテンションでごまかす。
『ん〜〜〜。何か物凄く不敬な雰囲気を君から感じるな〜』
マジか。
コイツ俺の考えてる事を読めるのか?
いや、俺の態度にでてたか。
なんとか、ごまかせるか?
「そんな事よりも、セーラはどうなった? しとめたのか?」
正直アキリアよりも、そっちのが気になる。
まぁアイツは死んでも海神の元で蘇る。
心配は………しなくてもいい、か?
『それがしとめたのか、良くわからないんだよね〜』
アキリアは曖昧な答えをする。
「わからないってなんだ?」
『神核は取り戻したけどね。手応えが無かった。たぶん生きてるね』
「なんだそれ?」
殺さずに神核だけ取り戻したのか?
イロイロわからない事だらけだ。
『たぶん影のほうが本体で、本体がダミーだったのかなぁ?』
え?
マジか、セーラの奴。
セーラはペラペラの影が本体だったのか?
いや、それよりもアキリアだ。
「何故今更、神核を取り戻そうと思った?」
「手応えが無いってなんだ?」
「どうやってセーラに勝った?」
「セーラは生きてるのか?」
複数の首で同時に質問する。
『セーラって娘に僕の神核を預けておけば安全かと思ったのだけども………』
「なんかそんな事言ってたな」
『神化して調子にのったせいで、かえってあの娘は劣化してしまった。あれじゃあ安心して神核を預けておけないからね。神核を回収させてもらった』
とんでもない事をサラッと言いやがる。
悪魔かコイツ。




