304、発情期204、もよう
キシキシビリビリと………
アキリアが捕まった球体。
そっちの空間の方向で、凄い音がしてる。
たぶん空間がひび割れたり割れたりしてる
そんな感じの音がしてる。
アキリアが抵抗してるのか?
もしそうなら………
良いぞもっとやれ。
てか、自力で脱出しろ。
あれだけ大口叩いたのだ
アキリアめ。自力でなんとかしてみせろ。
セーラには無力な俺。
アキリアを応援する。
心の中で………応援する。
口に出すとセーラが怖いから。
………なんか泣けてきた。
アキリア神核を持ったセーラは、俺にとってはまるで天敵。
俺は最強種の1角、ドラゴンさんの筈なのに………この無力さよ。
存在してるだけで、性悪説を信じてしまいそうになる、性格最悪アキリア。
そして……
俺が手に入れたい守りたいグドウ伯爵や、
恋敵のレオナルド侯爵。
俺は彼等の善戦に期待するしか無い模様。
俺は無力。
どうしてこうなった?
俺はもう、セーラを他の3人にまかせて、セーラ天敵問題が解決されるのを、ただただ待ちたいもよう。
なんて無力!?
でもこれは………
俺が悪いと言うよりも、相手が悪い。
どんなに俺が強かろうが、才能有ろうが、努力しようが、上には上がいるもんだ。
それに、天敵は何処かにいるもんだ。
愛とは天敵が捕食する行為。
もしくは天敵から捕食される行為。
そんなものに近いのかも知れない。
セーラを見てるとそう思う。
自己犠牲とか献身とか、どうもそういう愛に俺は餓えていた。
裸エプロンとか、クローンとか、調教とか、そういう愛はノーサンキュー。
何がなんでもキャンセルだ。
俺がグダグダ考えてるうちに、既に戦いは次の段階に進んでいた。
グドウ伯爵が空中のセーラへ
部下から受け取った槍を次々と投げ放つ。
槍はセーラとアキリアが封じ込められた黒い球体へと飛んでいく。
槍がドンドン飛ばされる。
セーラには、槍が当たらない。
槍がとどく前に、無数の腕を貫きつつも槍は威力を殺されてるのか、狙いが微妙にそらされている。
アキリアの閉じ込められてる球体へは、ブスブス槍が刺さっていく。
グドウ伯爵は、閉じ込められたアキリアを解放する気か?
それともセーラ共々、二人まとめて始末する気だろうか?
グドウ伯爵の考えは俺には理解しにくい。
他の3人よりは考えが読み難いが………
彼女はたぶんレオナルド侯爵以外にならば、勝てる気でいる。
神をも恐れぬ気の強さ。
それがグドウ伯爵だった。
その強さが眩しい。
良いぞ。
もっとやれ。
セーラをなんとかしてくれ。
グドウ伯爵は敵にまわすとアホほど厄介だが………味方陣営だと頼もしい。
何処かの大口叩いて捕まってる奴とは大違いだ。
敵も味方も選べるモノなら、よく選ばなきゃ駄目だよなぁ。
まるで巨大な泥団子でも作るかのように、アキリアを閉じ込める球体を作ってたセーラの影が………
飛んできた槍の群れに注意をひかれた。
そのペラペラした紙の様な姿で、グドウ伯爵を見て嗤った。
てか………アイツ。
なんで急に喋らなくなった?
怖いんですけど。
めっちゃ怖いんですけど〜〜〜。
戦闘開始とほぼ同時に、沈黙されるとかマジで怖い。
真剣で無言になったセーラは怖い。
本気になると叫ぶ人よりも、本気になると無言になる神のが、なんぼか怖い。
てか、ヤバイ。
思わず神に祈ってしまいそうになるが。
そんな助けを求める事すら出来やしない。
なんせ目下の敵は神だしね。
グドウ伯爵をロックオンしたセーラ。
スイっと無力化したアキリアから、グドウ伯爵へと意識をうつした。
すると………
セーラを中心にして空間に入ったヒビ。
それが更にどんどん広がる。
その新たに出来たひび割れから、次々と新しい黒い腕もはえてくる。
新しくはえた無数の腕達。
腕の半分はアキリアを閉じ込めた球体を更に囲み巨大になっていく。
また残りの半分はグドウ伯爵を掴もうと、そっちへと向かう。
空中でセーラの無数の腕と、グドウ伯爵が投げ続ける槍がぶつかる。
槍に貫かれた黒い腕が砕け散る。
だが………どんどん腕は空間のヒビから新しく生える。
威力は槍が上だが、手数は腕のほうが遥かに上だ。
グドウ伯爵は、槍投げでは迎撃出来ないと見たか、自らの左腕を空中のセーラへとかかげた。
すると次々にグドウ伯爵へと向かっていた黒い腕が消える。
黒い腕と言うか、セーラを中心に広がっていたひび割れすらが、どんどんと無くなる。
ヒビからはえた腕も消えていく。
俺はその様子を見て。
「あ、そうか!?」
グドウ伯爵のスキル。
わかったかもしれない。
前回戦った時はさっぱりわからなかった。
8つの頭と24の眼を持って、ようやく検討がついた。
たぶんグドウ伯爵のスキルは………
相手のスキル無効化系のスキル。
もしくはスキルコピー。
あるいはスキル操作の類だと、思う。
いわゆる相手のスキルを利用するスキルだ
それを盾代わりに迎撃に使ってる。
そうで無くては、今までに様々なスキルがグドウ伯爵に効かなかった説明がつかない。
………俺はアホか?
グドウ伯爵のスキルを、今更理解しても意味が無い。
今はグドウ伯爵をどうこうする理由が無いから。
セーラのスキルをこそ理解すべきだった。
なのにセーラへの打つ手はさっぱりわからず、やっぱり俺は誰かにセーラを丸投げしたいもよう。
ただただ思ったよりも、グドウ伯爵がセーラと戦えてる事が救いだった。
そのまま仕留めてくれんかね?




