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295/306

295、発情期195、気がついて欲しかった

 

 俺はそろそろ動き出しそうなレオナルド侯爵を探そうと目で周囲を探る。

 すると………

 いつの間にやら兵隊達の配置もかなり変化している事に気がついた。

 グドウ伯爵の城を中心に、城を守る配置の黒い鎧数百人。

 グドウ伯爵の兵隊。


 更にその黒い兵隊を囲むように、攻める千人を軽く超えるママンの白い鎧の兵隊。


 レオナルド侯爵は必ずその中に紛れてるはずだ。


 ………エエイ、兵隊共が邪魔だ。

 しかも………状況は動いてる。

 兵隊どもは慌てふためいてる。

 セーラの声が、この場全員の頭に届いたらしい。

 自称神の不穏な言葉。

 正直怖いわな。


 兵隊達は陣営に関係なくそれに困惑。

 ビビって泣き出すものもいる。

 祈りを捧げるものまでいた。

 セーラに祈りを捧げてもな………


 くそっ。

 混乱して兵士がランダムに動き始めたから、兵隊どもが余計じゃまになる。

 レオナルド侯爵を視認できない。

 気配すらつかめぬ。

 奴が何か企んで無いかの確認が出来ない。


 そうだ!

 グドウ伯爵は相変わらずレオナルド侯爵を補足してるのか?


 グドウ伯爵を観察すると………

 グドウ伯爵はママンの兵隊達のいる、ある一点だけを見ている。

 そこか!


 だが、俺の目では侯爵を補足出来ない。

 グドウ伯爵め。

 8つの首と夫々3個の目を持つ24眼のドラゴンの俺よりも視力が良いのか?

 バケモンだね、まるで。

 ………

 ………………

 心がざわめく。

 自分よりも優れた目を持つ者へ嫉妬か? 

 いや、これは………チガウ。

 即座に自分の嫉妬心を否定した。

 なぜならば………

 胸が、ワクワクするから。

 この狂った状況下、グドウ伯爵を見た瞬間に胸にトキメキが走った。


 待ってろグドウ伯爵。

 すぐに手に入れてやる。

 絶望的な中での希望的感情。

 例えるなら、それは愛や恋の胸の高鳴りと言うよりも………

 まるでエロい本を買って、家に持ち帰る途中の様な胸のドキドキ感。




 ………あれ?

 もしかしてセーラの奴も………

 今の俺と同じ様なドキドキ感を持って、アキリアと向き合ってる?

 アキリアと戦い………報酬として………

 俺を賞品としてとらえて、見ているのでは無かろうか?


 ………あり得るな。


 てか、そうとしか思えん。

 ゆるさ〜ん。

 アイツはドラゴンをなんだと思ってるんだ?

 それもちっこいドラゴンならいざ知らず。

 俺はデカイ多頭竜だぞ。

 賞品や景品扱いは御免こうむる。


 ………その為にはアキリアには勝ってもらわんと………

 アキリアだよりの他力本願で、誇り高い竜の本能は死にたくなるが、まぁ………いい。


 今はアキリアの勝利を邪魔しかねないレオナルド侯爵の補足が先だ。

 その為には、邪魔な人間共を減らさねば。


 少々力を使うが、全力で破壊の限りを尽くして追い払うか?

 ………いや待てよ。

 その選択肢はありえんな。

 できるだけ力も使いたく無い。

 力の消費は敗北に直結しかねない。

 自分以外に力を使わせて、自分は無傷で最後の最後まで戦闘をさけるべきだ。

 そうでもしないと、神は出し抜けない。

 経験済みだ。


 ここは頭を使うか。

 

 俺は多頭竜、頭が良いのだ。

 その為に8つも頭があるのだから。


「う〜ん。う〜ん」


 今にも戦いを始めそうなアキリアとセーラを尻目に………

 イロイロと考えた結果。

 俺はママンの戦力を取り込もうと思う。

 ママンと俺が敵対する理由は、グドウ伯爵を生かしたいか殺したいかだけだ。


 最終的にはそこは譲れないが、最終段階にいたるまで、一時的にでも仲間に取り込めまいか?

 なんせ俺はママンの子供なのだし。

 ………信じてもらえるかは知らんけども。


 俺はママンへ近づく。

 勇気を出して話しかけた。

 

「頼みがある。俺はレオナルド侯爵を抑え込む。協力をしてくれないか?」


 俺がママンに近づき話しかけると、ママンは驚いた顔をしたが即座に………


「………断る。我が子の仇を取る。それ以外に興味は無い」


 提案を断られた。

 我が子?

 ヒャッハーか。

 あんな奴の価値など、今や俺の中では道端に生えてる野生の野良人参以下。

 大暴落しているのだけれども………

 ママンの中ではブチ切れ案件に発展する程の輝きを放つ存在らしい。


 その為にママンは、復讐を邪魔する俺をブチ転がしかねないんだけれども………

 そんな目で俺を見てるママン。


 双子でも、竜になった俺と人間のまま死んだヒャッハーの価値エラく違うな。

 まぁ俺が名乗りでてないからだけども。


 母の直感とかで気がつけないのか?

 ………生みの母なら、例えば子供が8本首の巨大なドラゴンになったとしても………瞬時に己の子に気がついて欲しかった。


 ………無理かな?

 ………無理だよなぁ。


 

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