291、発情期161
なんだろう、この状況?
え?
もしかして俺は………
ママンを死なせないように気を使わなけりゃならないだけで無く………
セーラからもグドウ伯爵を守らなきゃいけないの?
前回はセーラと共闘して、グドウ伯爵と戦ってたのに。
セーラが今、神化して、どのくらい強くなってるかわからないのに?
今度はセーラからグドウ伯爵を守る?
てか………
そもそも俺がグドウ伯爵を守ろうとすると………
セーラの奴、高確率でキレるんじゃ………
不味い。
まて、待て待て待て。
考えろ。
俺の8つの頭はなんの為にある?
最悪の事態を回避し、幸福な未来を引き寄せるためだ。
その為に、俺は複数の頭脳を手に入れたのだ。
きっと………何とか良い考えが浮かぶはず。
力よりも知恵だ。
昔の人も言ってた。
泣いてる暇があるのなら、最善策を考えなさいと………
………
………………
………………………
力を信奉する竜が、力よりも知恵に頼ろうとした時点で、俺は相当追い込まれてるのだが………
イロイロ考えた結果。
あか〜ん。
コレはあかん。
コレはあかんで〜。
イロイロ知恵をしぼって考えた結果………
思わず関西弁が飛び出すくらい複数の竜頭達がテンパってしまう。
複数の頭をフル回転させて、幸福な未来を引き寄せようと、考え抜いた結果。
理不尽な未来ばかりが脳裏に浮かぶのだ。
すべての頭に………
最悪、ひき肉。
そう、ひき肉と言うかハンバーグだ。
怒り狂ったセーラの手によって………
ドラゴンハンバーグになる未来が、俺の8つ全ての頭の脳裏に浮かんで来た。
………
不味い。
すっごく不味い。
なんと言うか、カルト教信者が
現在進行形で、他のカルト教宗派に改宗してる所を………
元のカルト教狂信者に見つかるくらいヤバイ。
なに考えてんだ俺?
屋上で告白しようとしてたら、
二股かけてた別の彼女が校庭にいて
何故か手にナイフを持って
屋上に突撃してくるのを、屋上から見下ろしてるくらいヤバイ。
ヤバイ。
なんとか出来る気がしない。
神化前のセーラにすら、首輪を付けられて抵抗出来なかったのだ。
勝てなかったのだ。
神化して強化されたセーラに、かなう気がしないのだ。
泣いちゃいそう。
泣かずにイロイロ考えても………
いくら考えても泣きだしたい。
いや、まてよ。
これはもう………
ママンに人質に取られている元神アキリア。
アイツに、全てを託すしかないのでは無いか?
アイツは多分さ、出来る子だ。
アイツはセーラに対して特攻効果のある打つ手を持ってるらしいし。
前に自信満々で自慢してた。
が………
………現在進行形でママンに人質に取られてる、情けない姿のアキリアを見ると………
ソレはソレで分の悪い賭けに見える。
だが………
男には負けるとわかっていても、賭けることから避けられないレースがあるのだ。
下手に賭けて負けると、最悪ドラゴンハンバーグが誕生しかねない賭けだけれども。
ドラゴンハンバーグに転生しかねないけども。
それでも、アキリアに自分の命をかけようと思ってしまうほどに、俺は混乱して追い詰められていた。
今、ここでの最善手は………
やはり
キジも泣かずば撃たれまい。
なのだ。
撃つ手が思いつかないなら、此処は大人しくしろ俺。
良く考えてみればコレは………
一対一の戦いではない。
コレは巴戦だ。
ならば、自分以外の勢力が潰しあえば、例えば自分の力が足りなくても、活路が見いだせるかも知れない。
黙っていても、セーラ、アキリア、ママン、グドウ伯爵は潰し合う。
はずだ!
タイミングを見て、弱った相手を一人一人無力化していけば良い。
………四発の時限爆弾を、タイミングよく順番に繊細に解体していくのだ。
………そのうち2発の爆弾は、俺じゃどうやっても、現状では解除できそうに無いのは、考えないようにする。
アキリアとセーラ。
コイツラが潰し合ってくれなきゃ、ほぼツム。
二人が俺に負けるほど、弱ってくれるのが最低条件だ。
だから………
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
気配を殺せ!
絶対に目立つな。
コチラが標的にされたら、
消耗して仕舞えば、
勝算が無くなる。
何が何でも、自分以外の全てに消耗して貰うまでは、間違っても目立ってはいけないのだ。
だが………
『少し待っていてくださいねドラゴンさん。邪魔者を片付けますから………ふふふ』
セーラの声。
アカンわ。
ロックオンされてる。
「邪魔者って僕の事? ん? 誰が邪魔者だって?」
『ふふふ』
「そもそも、そのドラゴンは僕が手塩にかけて育てたドラゴンさ。黙って待つわけがない。僕に加勢するにキマってる」
「決まってない。勝手に決めるな」
アキリア。
アカン。
アイツはアイツで俺を盾にする気か?
俺はアキリアの、身勝手な言葉にブンブンと全ての首を振った。
駄目だアイツ。
アキリアの奴、俺を巻き込む気満々だ。




