286、発情期156
この状況でグドウ伯爵が、俺とママンよりも優先して気にかける事と言えば………レオナルド侯爵の事しかないじゃないか。
………
………………
う〜む。グドウ伯爵がレオナルド侯爵を気にかけてるのはムカつく。
腹が立つ。
と同時に、つまりはレオナルド侯爵はグドウ伯爵の視線の先に、隠れてるに違いないわけで………
そう思いついてしまえば話は早い。
俺にはレオナルド侯爵が、何処に隠れているかわからない。
だが、グドウ伯爵にはわかるのだろう。
つまりはグドウ伯爵の視線は、対レオナルド侯爵レーダーがわりに使えるわけだ。
………
コレは………チャンスだ!
仕留めるチャンス。
「ミギャン」
俺は嫉妬にかられ、グドウ伯爵の視線の先。
レオナルド侯爵が隠れているであろう場所、ママンの白い軍隊の一部隊へと、渾身のドラゴンブレスを発射した。
む? お、おう?
何故か会心の手応え。
反射的に嫉妬と怒りにまかせて放ったドラゴンブレスは、思ったよりもデカかった。
巨大な炎の弾丸。
正確なレオナルド侯爵の位置がわからぬ以上、高範囲を巻き込める巨大なブレス弾は好都合。
思わずニヤける。
大体レオナルド侯爵、アイツは俺にママンを押し付けて、自分は隠れるとは、卑怯な事この上ない。
………ま、俺が先に裏切ったのだけれども。
そんな昔の事は忘れたよ。
ドラゴンは細かい事は気にしないのだ。
とにかくアイツは、レオナルド侯爵は、グドウ伯爵をたぶらかす悪い奴だ。
俺の恋路を邪魔する奴は、俺に焼かれて燃えるといい。
思いがけず、巨大なドラゴンブレスを発射出来た事に、上機嫌になってワクワクしながら、巨大な炎の弾丸を見守り、数秒後の結果を待っていると………
突然の俺のドラゴンブレス接近に慌てふためく兵隊達の中から、たった一人、炎の弾丸に向かっていく者が目にうつった。
間違いない、レオナルド侯爵だ。
え?
アイツ何だ?
何故逃げずにドラゴンブレスの巨大弾丸に向かっていく?
と、何かを投げるような振りかぶった態勢から、レオナルド侯爵は、右手で俺のドラゴンブレスをぶん殴った。
ガキンと硬い音がして、正確に俺の所へ跳ね返ってくる俺のドラゴンブレス。
………まて、待て待て。
動揺して回避する間もなかった。
俺の渾身のドラゴンブレスは、レオナルド侯爵に跳ね返されて、慌てふためく俺に直撃する。
強い衝撃。
カッツ~~ンと、俺に炎の弾丸がぶつかる音がして、ついでシャアアアアと、何かを焼く音がする。
煙の匂いと、赤く黄色く灼熱する視界。
あ、これが俺のドラゴンブレスの威力か………
熱く、そして痛〜〜〜く、無い。
………アレ?
跳ね返されたドラゴンブレスが直撃した瞬間こそ強い衝撃があったものの、それ以外は熱くもなくダメージを受けた感じがしない。
拍子抜けしたと言うか。
あれ?
あれれ?
おかし〜ぞ。
自分の体を未だにママンに殴られグロッキー状態の頭を除く7つの頭で確認するが、少々焦げ臭いだけで、体に目立った怪我は無い。
………俺のドラゴンブレス弱くね?
まるで煙草の煙を吹きかけられたくらいにしか、感覚が無い。
どうやら俺のドラゴンブレスは俺の竜鱗を突破出来なかったようだ。
………俺のドラゴンブレスが弱いのか?
それとも俺の体が頑丈なのか?
………後者かなぁ?
もしかして俺の今の体、防御力≫攻撃力の防御力に特化しすぎ何じゃあ、あるまいか?
しかし、それにしても………
「むう、解せぬ、何故こんなに俺のドラゴンブレスは弱いんだ?」
「教えてあげようかヒュドラ。オマエさんのスキルには、絶対的に覚悟が足りて無い」




