277、発情期147、教?
「とりあえず、ドラゴンの事は後回し………豚の率いる皇国軍からどうにかするとしよう」
「後回しってオマエなぁ。それにあんな大軍どうにかって………どうするんだ?」
「こうする」
そう言うとレオナルド侯爵の右手が白く輝きはじめた。
それと同時に
「アッツ。熱っちい。馬鹿、やめろ」
レオナルド侯爵が右手に産み出した白い光の玉。
それは、恐ろしく強い光と熱を持っていた。
ヤマタノオロチである、直接触れてる訳でも無いのにさ、俺の体が火傷しそうなほどに。
つ〜か俺の背中に乗ってるのに、そんな物騒なもの生み出すな。
それに。こ、コイツ!
竜鱗の防御力を簡単に突破出来る攻撃方法を持ってたのか?
なんてこった。
知らずに、とてつもない危険人物を、うっかり背中に乗せていたぜ。
不意打ちで、こんな熱いものを背中に食らってたら………
ちょっと命がやばいかいかも。
こ、この背中の危険人物をどうしたものか?
8つの首でレオナルド侯爵を見ながら考える。
そんな俺の不安を他所に、レオナルド侯爵は………
「それ!」
ますます輝きと熱量を増していく光の玉を、空高く頭上に放り投げた。
白く輝く光の玉が頭上で炸裂した。
空高くで。
光の玉は轟音と眩しい光りを周囲に撒き散らす。
そして光の玉は消える事なく、空中高くに留まり白い光を放っていた。
まるで2つ目の白い太陽ができたかのように。
「なんだあれ? 何をした?」
「見ての通り、敵と味方に私がここにいると知らせてやった」
「なにそれ?」
「これでも私は王国でも皇国でも、ほぼ不敗の有名人でね」
「自慢?」
「白い太陽は私の代名詞みたいなもの。あれで私の存在を知れば、王国兵はイキリたち、皇国兵は動揺する」
「ほ〜〜〜」
たいした自信だ。
「ましてや、今は巨大な多頭ドラゴンに乗ってるし、皇国兵に与えるインパクトは相当なものだろう」
「う〜む………」
不敗の侯爵がデカイ多頭ドラゴンに乗って戦場に現れたら………
敵は慌てるか………
「なんだ? なにか文句が?」
「いやぁ、早速人間達は、何やら僕等に気がついて動揺してるように見えるけれども………」
「そだな」
アキリアの指摘に軍隊へ目をやると、明らかに慌てて陣形を変えてる様子が見えた。
………そんなに俺が怖いのか?
ちょっとショック。
「なんだ、私の思い通り動揺してるようだが。とうしたドラゴン。元気が無いな」
「いやぁビジュアル的には、コッチが悪者っぽいなぁと」
「………お前のせいだよドラゴン。多頭の竜は悪側と昔からイメージが決まっている」
「大丈夫大丈夫、元神の僕がいるからコッチ側が正義さ」
アキリアがあっけらかんと言うが………
「元神って、大体悪魔じゃね?」
「!!!」
「確かにそうだ。元神って大抵落ちぶれた敗北神っぽいし」
「敗北神! ぼ、僕は違うぞ。全て計画の上で神の座から一時的に降りただけで………」
「諦めの悪い負け犬は、みんなそう言うんだ」
「負け犬? ………神罰をくれてやろうか?」
「だから、もう神じゃないだろうに」
「ううう、下等生物になったばっかりに、こんなにも馬鹿にされるなんて、神に戻ったら二人まとめて神罰をくれてやる。お仕置きだ」
「俺、そんなのいらん。レオナルド侯爵だけで我慢してくれ」
「私もいらんわ」
「神様からの贈り物は、全て有り難くもらうものだよ」
「「いらない」」
「それでも君達は敬虔なアキリア教徒かい?」
「!!!」
「なんだ、その禍々しい称号は? そんないかがわしい新興邪教宗教に、勝手に入信させるな」
「偽神のかけらレオナルド侯爵は、我が教団に捧げられる生贄」
「………それ本当にやめ!」
「我が教団の高位聖職者であるヤマタノオロチは狂信的十字軍」
「………オマエ〜。俺を変な役職に勝手につけるな」
「勝手に? 使徒を持たない僕が永年手塩にかけて育てた君は才能の塊ぞ。とっくに君はアキリア教団の高位聖職者さ」
やべえ。




