275、発情期145、共食い
「だ、駄目だ。ドラゴン。共食い、それは駄目だ」
「え? どうして?」
「基本方針として、国とその為政者は、自国民の命を最優先に考える。そうで無くてはいけない」
「そう? 人間は人間じゃん。自国も敵国もあるものか」
「それが有るんだ! 敵国の国民はどうなっても良い」
「ふ〜ん」
結構エグいな。
「だが自国民は守らねばならない」
「なんで?」
そこがわからない。
「自国民を滅ぼす奴は自国を滅ぼす。敵国民を滅ぼす勇気の無い奴は、敵国に自国民を滅ぼされる」
「えぐ!」
「そうだ。だから、自国民を大切にしない、敵国民を燃やせない。そんな奴等は国や軍の指揮をとってはいけないのだ」
「………じゃあ、俺は大丈夫よ。敵味方関係なく薙ぎ払うから」
「!!!」
「………流石、僕の育てた理由だ! 立派に育ってくれて嬉しいよ」
「どこに大丈夫な要素がある? このドラゴン完全にイカレてるではないか? 人の話を全然理解して無い」
なんて言い草だ。
それじゃ俺が間抜けみたいじゃないか。
頭が一つしか無いくせに………頭が8つもある俺を馬鹿にするとは………
「その竜は、イカレては無いよ」
「そうだ。俺はまともだ」
「この竜は………ていうか僕はこの竜にただ、油断すると、死ぬぞと言うか………無限ゾンビアタックプレイみたいな竜生を繰り返しおくらせたと言うか………。それで頭のネジが緩んでるだけで、イカれてはいない」
ずいぶん歯切れの悪いというか遠回りな言い方をするアキリア。
「ソレをイカれてると言うのでは?」
「アキリアお前、俺にそんな事を………」
てか、俺の過去を結構覚えてるじゃないかコイツは………
セーラに記憶を渡したとか何とか言ってたくせに。
アキリアめ。
まさか俺、また騙されてる?
「結果的に、ちょっと僕にも予測不能な考え方を、この竜が、たまにするようになっただけで………この竜はイカれてはない」
アキリアは異様に、俺がイカれて無いと強調するが、俺がイカれてると何か不都合でもあるのだろうか?
「だけ? そんな狂った感性を、この国に持ち込まれて、共食いなどやられてたまるか!」
「そんな事を、今更言われてもねぇ。今更過去は変えられないし。でも、う〜ん」
「アキリアも俺に文句があるのか?」
「育て方を間違えちゃったかもな〜とは、僕もたまに思う」
「くそぅ。私は王国の為に、この竜も仕留めなければならないのか?」
俺の背中の上で、何やら物騒な事を呟くレオナルド侯爵。
何気に怖いんだが?
人の? じゃなくて竜の背中に乗ってる状態で怖い事言うな。
いきなり背中を刺したりしないよな?
「わかった、わかったよ。王国の人間を殺さなきゃいいんだな」
「ああ」
「わかったから、俺を狙うとか怖い事言うな」
せっかくの手駒とやり合うとかありえない。
「本当に、理解したのだろうな?」
「あぁ。ようするに、自国で自国民の人間に共食いさせるのが悪いんだろ」
「当たり前だ!」
「わかったよ。俺が折れてやる。他国の人間を、自国の人間に食べさせれば文句は無い訳だ」
「何言ってる!!! 文句おお有りだ! おおたわけ!」
「えぇ」
「何をどう考えればそんな気色の悪い発想になる?」
「………むう。敵国に略奪と何が違う? さじ加減がわからんのだが………」
「まずは共食いと言う発想をやめろ」
「うん流石の僕もドン引きだよ。思ったよりもイロイロ壊れてるね。この竜は」
「………でもなぁ。基本的には俺達は食う為に生物を殺すわけで………」
「人間に、それを強制するな。気色悪い」
「でもなぁ………食べもしないのに、同族で殺し合う人間のほうが、よっぽど気持ち悪いとおもうのだが………」
「「!!!!!!」」




