267、発情期137、わがまま
………いや、いっそアキリアを協力者にしたてあげれば良いのか?
………8つの頭をフル回転させたが、それは難しいと言う結論しかでなかった。
アキリアを説得して協力させる?
現状アキリアの本当の所の感情や、利害関係が何処にあるのか読みきれない。
さらにコイツはナチュラルに嘘をつく上に、元神の視点、考えや価値観など、俺にわかるわけもない。
つまるところ、アキリアの地雷の在処がわからないから怖いのだ。
だから………
「おいアキリア」
「なんだい?」
「そう言えば、お前。神に戻る実験とやらはいつやるんだ?」
「ん? なんでそんな事を………聞くの?」
そんなモノ、今のアキリアと一緒にいる状況を、一刻も早く終わらせたいからに決まっている。
が………声にはださない。
気分を害されると、何をされるかわかったものじゃないからね。
てきと〜に誤魔化す。
「いや、お前の事だから、もう再神化準備は終わってるのだろ?」
「まぁ、そうだけども」
「なんだ? やらない理由があるのか?」
「せっかく作った、この体を自慢したい。堪能したい。下等生物に見てもらいたい」
「………」
わりかし、くだらなくて駄目な理由だった。
「あとね。一応グドウ伯爵を勧誘して、彼女で神化実験してから、自分で試したいかな」
「………そんな事を考えてたのか?」
「一応、僕でも変幻スキルを大失敗すれば10%くらいの確率で完全消滅するからね。不要なリスクは消しておきたい」
「ちょっと待て!」
「なんだい? レオナルド侯爵」
「グドウ伯爵は神を嫌っている。オマエラ邪神や神の使徒竜の言う事を聞くとは思えんが………」
「う〜ん。そこなんだよね〜」
「私が思うに、グドウ伯爵を計画に組み込むのには無理がある」
「神に逆らう強さがあるからこそ、実験に適任だし。それだからこそ説得が難しい。どうしたものか?」
「グドウ伯爵と付き合いの長い私の知る限り、説得は無理だと思うが………」
「うんうん、そうだね。そこでレオナルド侯爵。君の出番だ」
にこやかに微笑むアキリア。
にこやかに微笑む人形姿のアキリアは不気味だった。
「何?」
「君が説得するんだよ。幸い彼女は君に夢中だ」
「おい、待て」
「色仕掛けでもなんでもして、彼女を僕に従わせるんだよ」
「何をおかしな事を………言っている?」
「全くだ。ふざけるな。アレは俺の物だ。アキリアにもレオナルド侯爵にも渡すものか」
「君達は、グドウ伯爵を僕の手駒へと説得する為に、生まれてきたのかも知れない」
「!!!」
「いや、勝手に決めるな。図々しいにも程がある」
くそう。
やっぱりアキリアは駄目だ。
自分勝手すぎる。
世界中の存在が、全てアキリアの為にあると、ごくナチュラルに思ってやがる。
思い上がりもはなはだしい。
なんて勘違い。
世界中、全ての存在は、俺の為にあるっていうのに。
世の中の事を全くわかっていない。
この世のプレミアムな存在である俺を、そして俺のモノを自分の為に意のままに操ろうとは………どうしてくれよう?
アキリアの為に俺がいるんじゃ無い。
俺の為にアキリアがいるんだ。
なぜ、こんなにも簡単な理屈を、今だにコイツは理解していないのか、さっぱりわからなかった。
やっぱり自分で自分の事を神だとか言ってた奴だしなぁ。
頭がおかしいのかも知れない。
そんなわけで………
その辺の事をアキリアに、よくよく言い聞かせてみたのだが………
だが、話は全くの平行線で、アキリアには全然理解してもらえなかった。
が………
とりあえず、レオナルド侯爵は我々の為に犠牲になっても仕方ないという1点では、アキリアと妥協出来たのだった………




