263、発情期133
アキリアの奴、嘘をつくのに嘘を突き通す気配が全然無い。
バレても良いやというスタンス?
って言うか、バレるのを楽しんでやがる。
バレるのを前提で、嘘をついてる気配すらする。
普通、嘘とは弱者の為の武器だ。
強者には嘘で偽装する必要が無い。
そんな事しなくても勝てる強者には、嘘など時間の無駄だからさ。
でも、アキリア。
コイツは嘘をつく。
つまり………アキリアは神の中では弱者でしかないのか?
それとも、たんに嘘をつくのがが好きなのか?
………
たぶん後者かな?
………きっと俺は、過去にもコイツに嘘をつかれて、碌でもない目にあわされてきてる気が………
なのに、嫌いになれないのはなぜだろう?
………コイツに魂の一部を奪われているから?
それとも別の理由だろうか?
機会があったら、聞いてみたいと思ってしまった。
が………
きっと嘘で、かわされてしまうだろう。
そんな気がした。
走りながら、そんな事を考える。
………うむ。
わからん。
元々自分の事を神だとかいう、頭のおかしい奴の考える事など………
それを予想して、仮に予想が真実だとしても、理解しようとする事自体が無駄じゃあるまいか?
ハ………!
危ない危ない。
危うく、自称元神を名乗る頭のおかしい奴。
いつの間にか、そんなモノの考えを理解しようとか、考えてしまった。
頭のおかしい奴は、頭がおかしいから頭がおかしいのであった。
理解なんてしようと思うと、自分までおかしくなってしまう。
………走りながら、横を追走してくるアキリアを観察する。
黒くて速いアレに似ていた。
キチガイの真似をして大路を走れば、すなわち真似した方もキチガイだ………
だっけ?
そんな言葉が頭をよぎる。
危うくアキリアの思考を理解しようとして、俺までも頭がおかしくなるところだった。
危なないなぁ、考えるな。
やめだやめ。
世の中、何処に地雷が埋まっているかわからんね。
怪物と戦うものは、自らも怪物にならない様に、注意しなければならない。
そんな大袈裟な事じゃないが………
自称神を名乗る者の側にいて、いつの間にか、自分も神だとか言い出す。
もしも自分が、そんな事になっていたら………
それは、もう目も当てられ………………
ハ………!
なんか、嫌な事に気がついてしまった。
最近知人が神と戦ってたんだ。
セーラ………
………アイツと、次に出会った時に………
セーラ………
アイツ、自分が神になったとか言いだしたら………どうしよう!
………
………………
アキリアの奴、アイツ何してくれてんだ?
あ〜駄目だ。
深く考えるな。
確定もしてない不幸な未来。
そんなの事を思い悩むのは無駄だ、無駄。
そんな事よりも、確定してない幸福な未来の事を考えて、そっちに向かって進むんだ。
しかし、余計な厄介事を増やしたであろうアキリアを見てるとムカムカしてきた。
なにか、仕返しができないだろうか?
「お、そうだ。時間が惜しいので、走りながら、アキリアの新しい体の強度を試していいかい?」
「どゆこと?」
「こういう事だ! ミギャン」
「む?」
俺は口から不意打ちでアキリアにブレスを発射する。
が、ヒラリとアキリアに華麗にかわされた。
走りながら、ブレスを撃つと狙いがさだまらない。
命中率かなり悪い。
動いてる相手を狙う練習が必要だなコレは。
「続いて行くぜ」
「ちょっと待って、どうしていきなり攻撃してくるの? 反抗期? また反抗期が来たの?」
不意討ちされた事を怒るでもなく、トンチンカンな事を言うアキリア。
また反抗期?
また?
また反抗期ってなんだ?
俺は前にも、こんなに突発的にアキリアに攻撃を仕掛けた事があったのか?
だとしたら………
きっと俺とアキリアは、だいぶ碌でもない過去持ってるな。
………いや、考えんとこ。
怖い怖い。
アキリアも怖いけれども、過去の自分が何をやらかしたのか、予想するだけで頭が痛い。




