262、発情期132
ケチリアは続けて言う。
「同一バフでスキルスロットを埋めたがる連中は、わけわからないんだよ」
「そうなの?」
「極振りスキルでロマンを追い求める連中は、頭おかしいのが多いからさ」
「知らんがな」
「アイツらリスク度外視で、変な事をやるからさ。実際に戦って見ないと、強さがさっぱりわからないんだよ」
「その言い方だと厄介な変態じみた感じしか、しないんだが」
ママン………
「実際それに近いかな?」
「でも、それなら強いとは限らないんじゃ?」
「肉体強化にロマンを求める極振りタイプには、ハズレが殆ど無い」
「例外なく強いって事?」
「確かに私が戦った時、豚の戦闘スタイルは戦いはパワーって感じだった」
と、口を挟むレオナルド侯爵。
いや、その表現は、よくわからんぞ。
言いたい事は何となくわかるけども。
「強いって言うか、弱いのがいない。だから、ほぼ間違いなく強い。と言っても強さの程はわからないけども」
「………そうかぁ〜。厄介な………」
「だからさ。うかうかしてると、グドウ伯爵死んじゃうよ」
………
大丈夫だ。
その為に、それに対する対抗手段として、俺はレオナルド侯爵を説得したのだから。
その為だけに、レオナルド侯爵を使い捨ててしまっても良いとすら、思ってるのだから。
対豚ママン用使い捨て人型最終決戦兵器レオナルド侯爵。
俺の恋路の為に華々しく俺の目的を果たして散ってくれ。
酷い事を言ってるようだけども、コイツ恋敵だしなぁ。
てか、そういう使い道が無ければ、とっくにアキリアをけしかけてコイツの命無いだろうから………
俺にしては寛大だよな?
………
………………
う〜む。
それにしても、アキリアの言葉で、やや不安を覚えた。
できるだけ急いでグドウ伯爵の下へと戻らねば………
なので、首を伸ばしてレオナルド侯爵をくわえて再び俺の背中に乗せる。
レオナルド侯爵は、大人しく俺のなすがママされている。
子猫をくわえる母猫の気持ちとはこんな感じだろうか?
………
「よし。じゃあとりあえずグドウ伯爵の所へダッシュだ」
そう言って再びドカドカと走り始めると………
「あ、待って。僕をおいていくつもりか?」
「むしろ、ついて来る気か?」
「モチロン。面白そうだし」
そう言って、アキリアはラクラクと俺の走る速度についてくる。
住宅に匹敵する巨体の俺。
その走る速度に、軽くついてくるとは………
アキリアの人間サイズの人形体。
やっぱり高スペックなのは間違いないな。
「………実体を持ったアキリアを連れて行くの、なんかやだなぁ」
「なぜ?」
「トラブルの匂いしかしない」
「………君さぁ、鏡見てから言いなよ」
「どういう意味だ?」
「そもそも君はトラブルなんて恐れてないでしょ」
「………」
む、言われてみれば、それもそうか?
思えば厄介事を避ける努力をした覚えがあまりない。
その事に今更ながら戦慄する。
「ね! 君は頭も心も壊れてるんだから」
「失礼だな。おい!」
「君はトラブルなんて気にもしない、と言うか、人生どうでもいいやって舐めてるタイプでしょ」
「無茶苦茶言うな。コレでもイロイロ考えてるわい」
「イロイロ考えてる人が、あれだけ目をかけてきた僕を裏切って、海神の使徒になったりするもんか」
「………なりゆきだ。まだねに持ってるのか?」
「その態度が舐めてるって言うの!」
「そもそもアキリアに目をかけられた記憶もあんまり無いしなぁ」
「………記憶を奪った弊害が、こんな所で、でちゃったか………」
「つ〜かさ。その記憶は………記憶を奪われる前の俺。俺はアキリアに感謝してたのか?」
「………モチロンサ」
「どっちかと言うと、根拠はあまり無いが反抗してたんじゃないか?」
「………ソンナコトナイヨ」
「オマエの酷い仕打ちに耐えかねて、裏切ろうとしたから記憶を消したとかじゃ………」
「チガウヨ〜」
「ちょっと一部でも良いから記憶を戻してみ」
「そんな恐ろしい事、できるわけ無いじゃないか」
「………お前さぁ。8つも頭がついてる竜を騙すなら、もうちょい頭を使おうぜ」
駄目だコイツ。




