256、発情期126、レオナルド侯爵、やるのか?
アキリアを、ひっぱって黒い渦からコチラへ引きずり出そうと………
一本の首を伸ばす。
と、その伸ばそうとした首根っこを後ろから掴まれた。
………?
なんだ?
振り向くと、伸ばそうとした俺の首根っこを掴んだレオナルド侯爵が、アキリアを真面目な目をして見つめている。
………
んんん?
なんだ?
あ、そうか。
8つの頭で考えて、合点がいった。
レオナルド侯爵の奴、アキリアが弱体化して身動きが取れない今なら………
とか考えてるな、たぶん。
………やるのかレオナルド侯爵?
やる気なのか?
今このタイミングで?
アキリアを?
………ど、どうしよう?
確かにアキリア打倒の千載一遇のチャンスも知れない。
確実にアキリアは弱体化しているはず。
だが………
レオナルド侯爵にとっては、自身の命を狙うアキリアを仕留める機会。
思わず転がり込んできたチャンス?
かも知れない。
が、
俺は、そもそもアキリア打倒なんて特に考えてなかった。
いや、でも………アキリアは、ここで始末出来るものならしておいたほうが良い?
のか?
………いや、でもなぁ〜。
突然のことで悩む。
アチラをたてればコチラがたたず。
………俺はどっちの味方をすればいいのだ?
レオナルド侯爵は、ようやく説得できた手駒、まだ使い道がある。
アキリアは………うん、なんだろな?
一応イロイロスキルとかくれてるけども、ソレが俺の利益になってるかと言うと………
謎、本気で謎。
いや、でもなぁ〜
今の所は直接的な害よりも利益のが大きいし………
いや、たぶんだけれども。
正直アキリアに一体全体何をされてるかわからないから、判断できない。
何かとてつもなく酷いリスクを抱えてる可能性がある。
一方の………レオナルド侯爵………彼の危険性があるとすれば、彼を放置してた場合の偽神の害とやら………
ま、それは気にしなくても良いか。
話を聞いたかぎりじゃ、アキリアがなんとか出来なくても、他の神がなんとかするだろ?
たぶん。
俺には関係ないリスクだよね?
それよりもレオナルド侯爵を放置してくと、グドウ伯爵を取られる危険が………
それは不味い。
デモ、始末するにはまだ早い。
どうにかもう少しレオナルド侯爵は利用したい。
う〜む。
悩む。
アキリアとレオナルド侯爵。
俺にとって、どちらが生きるべきか死ぬべきか、ソレが問題だ。
我ながら思考の非道がすぎる。
8つも頭があると、際限無く人でなしな考えが浮かんでくる。
頭が良すぎるのも考えものだ。
そう考えて何気なくアキリアを観察する。
アキリアが入っている人形の体をよく見ると………
素材が謎の黒い金属で出来た硬そうな体。
妙な艶と圧力感があってメッチャクチャ硬そうだ。
そもそもアレに勝てるのか?
………んんん〜。
ふと気がついた。
てか、思い出した。
アキリアが前に閉じ込められていた、黒いマッチョな像の事を………
「なぁアキリア」
「なんだい?」
「もしかしてお前、その黒い金属の体は、まさか以前封印されていた黒い像と同じ材質でできているのか?」
「んん。 あ、よくわかったね」
「やっぱりそうか」
「忌々しいアレに近い金属で出来た像を、稼働式にできたら、動き回れて強くていいな〜って思った結果がこの体さ」
「なんてこった。じゃあ簡単には破壊出来ない硬さじゃないか」
前回はアホほど力を込めた攻撃も通用しなかった。
「まぁそうだね〜。しかも何となくグドウ伯爵によせて作ってみた」
「そんな余計な事するな」
「あ、そうだ。前に君が持ってた、この国の国宝級ドラゴンキラーがあれば、なんとか傷がつくかって感じ」
「まて、まさかそれは第三王子が持ってる魔剣の事じゃないだろうな?」
レオナルド侯爵が話に食いつく。
あ、馬鹿やめろぉ。
剣を無くした俺のミスがバレる。
「そうだよ。その竜が持ち出して、最近落とした国宝級魔剣だよ」
あぁ、アキリアの奴、俺のポカをバラしやがった。
「落とした? え? 何を言ってる? アレはこの国1番の宝なのに!」
「父親の物は俺の物。俺の物を俺が無くしても、仕方が無いと思うんだ」
焦る内心を隠し、何事も無かったかの様に平静を装う。
下手に騒ぐと、怒られそうだし。
ソレが何か?
ってふうに誤魔化してみる。




