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253/306

253、発情期123、黒い人形

 黒い渦巻きからニョキっと黒い左腕が生えている。


「ヒュドラ、アレを攻撃しないのか?」

「オマエ、あんなヤバそうなのに先制攻撃とか、正気か?」

「ヤバそうだからこそ、先制攻撃を狙うのだが」


 レオナルド侯爵の言う事には一理ある。

 が………


「くっそ、勇気あるなオマエ」

「他に手があると?」

「ヤバそうなら、逃げるべきだ」

「逃げてどうなる? どうせ病気で余命の少ない命だ。命に関わる危険は出来るだけ避けるが、同時に楽しむ。短い人生やれる所までは、やろうじゃないか」

「お〜い、頭大丈夫ですか? コッチにはアホほど余命があるんだよ。危険な思想に巻き込まないでくれ」

「………一緒に逝こう………相棒」 


 侯爵の言動がおかしい。

 ………コイツもしかして異常事態にテンパって無いだろうな?


「誰が相棒だと、ふざけるな!」

「オマエと、しばらく一緒にいたせいで、どうやら私の性格が多少? いや、かなり歪んでしまったようだ」

「俺のせいにするな」

「オマエが、まいた種だ諦めろ。と言うか、私の性格を歪めた責任、どうとってくれる?」

「し、る、か! オマエの性格は元々歪んでたんだろ。俺のせいにするな」


 確かにコイツ説得するために、洗脳じみた訳のわからない事を言ってた自覚はあるけど………


「情けない。ヒュドラともあろうものが責任逃れなんてするんじゃない」

「!!!」

「そんなだから逃げるなんて事、考えるんだ。そもそも敵かどうかわからないのに、ます逃げる事を考える? なんでさ?」

「お、おまえ〜」


 くっそ〜臆病者扱いされた。

 竜である俺が………

 でも、空中に明らかにヤバ目の腕生えてるとか、突然の異常事態みたら、逃げる事を考えるだろ普通。

 明らかに強者のオーラが腕からビンビン出てるし。


「私達の短い人生。最後まで諦めずに楽しもう」

「いや、だから俺の竜生は長いんだって、勝手に俺をまき込むな!」

「ハッハッハ」


 俺の胴体に乗って、ほがらかに笑う侯爵。

 コッチはそれどころじゃ無いのに。

 くそうコイツ、テンパってるかと思いきや、余裕あるでやんの。

 コイツと言いグドウ伯爵と言い、病で余命短い奴は、覚悟がおかしい。

 こんな奴に覚悟決めろとか言ってた自分が恥ずかしいわ。


「う!」


 目の前の黒い渦みたいな物から、はえてきた腕がジタバタと動いた。

 その度に黒い渦が大きくなる。

 そして大きくなった渦から片方の腕だけでなく肩が………

 更には黒く磨き抜かれた金属の顔が現れ、黒い渦からこちらに抜け出てこようとしていた。

 ヌルヌルテカテカした光沢の黒い人形。


「なんだ? コイツ腕だけの存在じゃなくて、渦からコチラに移動中だったか」

「敵意は無さそうだけども? いや、良くわからないな。ゴーレムか?」


 ゴーレム?

 能面の用な顔。

 意志の感じない人形じみたと言うよりも人形、か?

 黒いマリオネットが、片手と顔だけを、扉に挟まった猫の用な様子でジタバタさせている。

 ふと、黒い人形の顔がこちらをとらえ………

 ………

 突然俺のほうを向いた途端に………その目に火が灯った。

 瞬間………

 意志の感じられなかった黒い人形に、何かが宿る。

 ギラリと

 明確に存在感を示す赤い赤い目。

 それがコチラに何を訴えかけるように見てくる。


「うわ!」


 こっわ〜

 ………不気味で怖い。

 人形?

 人形の口が………不気味なほど三日月の形に裂けて………

 1言喋った。


「やられちゃったよ」


 と、黒い人形からアキリアの声が響きやがった。


「………」

「………」

「え? え? お、お前アキリアか?」

「そうだよ。僕以外の誰だと?」


 いっきに気が抜けた。


「脅かすな。なんだよ? その姿は」

「セーラって娘にさ、手酷く噛みつかれちゃってね。緊急避難用の、この神器の中に逃げて来ちゃった。てへ」

「嘘だろ〜〜〜〜〜〜なんで負けてんだ〜〜〜」


 8本首の俺の絶叫が、田舎の街道に響き渡った


 

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