251、発情期121、説得成功
レオナルド侯爵………
上手く誘導すれば、俺の代わりにコイツ………
俺の抱える問題の、いくつを解決してくれるんじゃあるまいか?
そう思ってしまう。
弱い考え。
自力救済至上主義の俺が、他人の力を当てにする、だと?
ありえない。
自分の力への自信のゆらぎ。
それは………竜の誇りを容易く傷つけかねない。
希望は未来に、後悔は過去に、努力は現代にあるもんだ。
そう考えて獲得した自力と誇り。
それでも………そんな竜でも………
他人の力をあてにしたい程、周囲の状況が狂ってやがる。
くそう
大体どうしてこうなってる?
考える。
………………
………トラブルの大体は、グドウ伯爵とセーラだ。
両者ともに問題が多すぎる。
………問題を抱えてる女とは寝るな、命取りになる、とは良く言ったものだ。
現に今、だいぶ追い込まれている。
………セーラがアキリアと潰し合ってくれてるのは、嬉しい誤算だが………
なんだけれども下手したら状況が更に悪化しそうでもある。
アキリアとかは、もうちょい俺の事を考えてくれたら………
セーラも竜に対する尊敬とか思いやりとか………
グドウ伯爵は………
よそう。
考えても無駄な事を考えるのは………
解決策は侯爵にも言ったじゃないか。
「強く、なればいい。強くなるしか無いんだ」
侯爵に言うようで、実は自分に言い聞かせる。
ぶっちゃけ状況に追い込まれたら、自分が強くなるのが、最も手っ取り早い解決策だし。
「………」
「悩み落ち込む暇があれば、どうすれば良いか考えろ。心身ともに強くなるって、そういう事だろ」
「………………そう、かもな。………ヒュドラ、ありがとう」
うん。
実はお前を励ましてるわけじゃないんだが。
………銀色仮面は、お礼を言って笑った。
………
………………
そんな侯爵を尻目に、大言壮語した俺は………
はてさて………しかし俺は。
いくら考えても、アキリア、セーラ、グドウ伯爵、豚ママン、半魚人を、どうにかする手を、全く思いつかなんだ。
思いつかないから………
この目の前の哀れな侯爵を………
取り敢えず突撃させて、状況が好転しないか見てみようとか、考えてるわけだけれども………
いったい、どうすれば良いのだろうか?
いっそ、この侯爵、全員まとめて自爆とかしてくれないかなぁ?
………セーラとかグドウ伯爵は、半殺しくらい弱体化させてくれると、助かるのだが………
都合よく侯爵を使いたい。
もしかすると、俺がこの侯爵を見ているような目で………
アキリアは俺の事を見ているのかも知れない。
もしかするとセーラとかグドウ伯爵とかすらも………俺の事を。
なんかそんな気がする。
確信は持てないが、あんまり、この仮説は外れても無い気が………
そう思うと、腹がたった。
アイツ等、人の心とかあるのか?
こんなに善良な竜を、なんだと思ってやがる。
あいつ等は思いやりとか、人様を大切にする慈悲の心とか情けとか、そういうモノが決定的について欠けている。
全く困ったものだ。
だが取り敢えず前進だ。
悩んでも仕方ないのだ。
………今はグドウ伯爵の元へと駆けつけて、なんとか豚ママンの魔の手から救わなければ。
その為に侯爵を最大限利用しなければ………
「さぁレオナルド侯爵。俺の背中に乗れ」
「なんだって?」
「騎馬ヤマタノオロチの俺。騎手レオナルド侯爵と言う、恐るべきライダーの爆誕だ」
「………」
「俺達が力を合わせれば、豚ママンなど敵では無い。はず。たぶん」
「お前さん。私の力も豚母親の力も知らないだろ」
「うん。知らんがな」
「………ふう。まぁ良いか。命が助かる希望が見つかっただけ、状況がマシ前進したと、とらえよう」
そう言って銀色仮面は、ヒラリと俺の背中に飛び乗った。
「おう。前向きに行くぞ。飛ばすぞ」
「海神様への紹介は頼むぞ、本気で」
「任しとけ。対ママンへの協力は頼むぞ」
「前向きに善処する」
高速で走り始めた俺は、グドウ伯爵の元へと来た道を戻る。




