248、発情期118、まき餌
レオナルド侯爵に俺の真意。
俺の為に死んで欲しいと、思ってる事さえわかってもらえれば、あとは………
「そうだよ。オマエには頭が上がらないよ。本当良い奴だなぁ、お前って………」
「ヒュドラ………駄目だ、こいつ。このヒュドラやっぱり狂ってる」
「失敬な、訴えるぞ」
「このヒュドラと話してると、こっちまで頭が、おかしくなりそうだ!」
「恋に狂ってるのさ。何せアキリアからもらった発情期スキルせいで俺まさに今、発情期だからな!」
ポーズを取る。
首を伸ばし両手を広げ、できるだけ体を大きく見せる。
「発情期スキル? なんだそれは?」
「強制的に心身ともに、発情期の姿、精神状態になるスキルだ」
「くっそ。発情期のヒュドラに出会うと、こういう理不尽な事がおきるのか?」
「んん?」
発情期のヒュドラとの遭遇?
なんだよ、その微妙な状態異常モンスターとのエンカウントは?
言われてみると………
状態異常、発情期とのモンスターとの遭遇は………確かに、なんかやだな。
「怪物が無差別に暴れまわる反抗期に、ヒュドラと出会ったほうが、まだマシだったか………」
反抗期?
………まぁ似たようなもんか?
発情期も反抗期も………どっちも馬鹿やらかす時期だよね〜。
楽しいけれども怖い時期だ。
発情期に入った知人とか見てると、笑えるよね〜
しっかし、侯爵。
コイツに強引に言う事を聞かせるのは難しいか?
冷静で頭悪くないぞコイツ。
コイツを動かすには何か餌が必要だな。
ん………
「そうだ! オマエさんが協力してくれるなら、海神を紹介してやるよ」
「海神………様?」
「そそ。この国の御本尊。守り神? 疫病神? でも無いか。ま、俺は奴の使徒だからさ。紹介はできる」
「何を………企んでる?」
「海神は神だけども馬鹿だからな。うまく騙せば、お前さんの呪いだか病気だかを治してくれるよ」
「………本当、か? いや、でも海神様も私を始末しょうとするのでは?」
「そこはわからんけど………アイツは馬鹿だからさ。ソレも含めて上手く言いくるめれば、長生き出来るかもよ」
これは嘘じゃない。
アイツなら騙されれば、何でもやる。
問題は………アイツ常識が無いから、上手く騙さないと………俺は竜に再転生したかったのに人間にされたし。
ヒャッハーなんて、今頃下手したらナメクジ転生だしなぁ………
あ、俺のせいか?
愛すべき馬鹿ならともかく。
普通の馬鹿を馬鹿にすると、諸共に馬鹿な結果になるので、馬鹿にはあんまり近寄りたくは無いのだけれども。
馬鹿な神と関わるのは、案外命がけだったりする。
「………本当に………治るのか?」
「まぁなぁ。俺に出来るのは紹介までで、その先は自分で海神を上手く騙せれば、の話だけれども」
「………」
自分の顎に手をあてて、侯爵は黙り込んだ。
全身動きやすそうでヒラヒラした白衣服。
銀色仮面が、そんなポーズ取ると絵になるな。
悩んでるのか?
だが………
「選択肢は無いだろうに。俺の知る限り、最もオマエの生き残れる可能性が高いのは、たぶん海神を騙して体を治す事だ、と思う」
「………しかし邪神アキリアは………」
完全に邪神認定かアキリアは………
まぁ必殺宣言を受けた侯爵の立場からしたら無理ないか。
自分の命を狙ってくる神とかいたら、俺でも邪神認定するわ。
「体を治しても、アキリアに殺られては意味が無いと? 発想が逆だ」
「逆?」
「アキリアをどうにか出来ても、体を治せなければ、オマエには先が無い。アキリアよりも体が先だ。そうだろ?」
「………まぁ。そうだね」
あっさり頷く伯爵。
………俺の言葉を信じたか?
甘いな。
それとも信じる他に選択肢が無いから、嘘だろうと真実だろうと、レオナルド侯爵に………
何もしなくても先が無いなら………
嘘だろうと、飛びつく他はない。
 




