243、発情期113、負ける気のしない二人と勝てる気のしない二人
竜に裸エプロンで目玉焼き作れって………
セーラの奴………性癖どうなってやがる?
1番恐ろしいのは人間かも知れないと、本気で少し考えた。
「聞きたくないって………いや、それは別に悪く無い事かと」
「竜物虐待だよ。北極条約違反だよ。俺のプライドがズタボロのズタズタになるもの………」
「知らない知らない」
「毎朝、首輪をハメられて、エプロン着せられて目玉焼きを焼かされ続けると………うっかり俺は、目玉焼きを焼くために、竜に生まれたのかも知れないとか、本気で思うようになるんだ!」
尊厳も何もあったものじゃない。
まるで洗脳、駄目絶対………
「ヤメロ! 聞きたくない」
「しかも目玉焼きの卵が………たまに竜の卵だったりするんだ………」
「うっわっちゃ〜。同族食い?」
「食べるのはセーラ。俺はセーラの為に作るだけ………」
「セーラって誰………いや、大体想像できたけど」
「アイツは、たまに酷い事する奴なんだ。アキリア〜がんばえ〜〜」
再び空へと魂の叫びを放つ。
と………
『聞こえてますよ。ドラゴンさん!』
「!!!」
ビクンと体が跳ねる。
ヤバイよ。
聞かれていたよ。
てか、反射的にセーラに恐怖してしまった。
………
なぜだ?
もうヤダ。
俺は最強種の1角、ドラゴン様のはずなのに、たかが人間の雌に、なぜ怯えなけりゃならん?
どうして………こうなった?
『ヤレヤレ。僕との戦闘中に、盗み聞き、よそ見とは余裕だね?』
『そう余裕でもないですけど』
『まぁいいさ。偽神の欠片を砕く前の、ウォーミングアップの相手としては訳にたちそうだし』
『あら? この後何かご予定がおありで?』
『そうなんだよ。だから………手早く済ますね』
『あらあら、それはご予約の相手には可愛そうな事ですが、約束を破る事になりますね』
のほほんとしたセーラの声。
『なんで?』
『だって邪神アキリアは、今ここで滅びるのですから………』
『ハッ………やってみなよ! 無理だけどね』
「………」
二人共余裕である。
どうしてあんなにも余裕や自信があるのだか?
余裕で、しかも物騒な事を言ってるな〜。
って思ってたら……
俺の隣で………
「頑張れ〜! 誰だか知らないけど、邪神アキリアを、やっつけてくれ〜」
レオナルド侯爵が、天に向かって、声援を送っていた。
………
「ふっざけんなよ! アキリアが負けたら、オレが酷い目に会うんだ! オマエ聞いてたろ」
「こっちは、このままだと、アキリアに殺されてしまう!」
「!!!」
「アキリアが死ねば………私が何もしなくても生存のチャンスが………」
「オマエ最低だなぁ〜。神の命と竜の尊厳を犠牲にしても、自分だけは助かりたいってか?」
「………そう言われると、そうだけども。オマエに最低呼ばわりされるのは、複雑な気分というか。何かおかしくないか?」
「人間の、しかも病で余命の少ないオマエが、竜である俺の為に生贄になるべきで、断じてその逆は有り得ない」
「………オマエ。私には侯爵として、責任がある。此処で死んでなどいられない!」
ヤマタノオロチの俺と、人間のレオナルド侯爵は、体格差があるにも関わらず、おたがいに醜く罵りあって、最終的に首を絞めあった。
………追い詰められてんなぁ〜レオナルド侯爵。
俺もだけれども!
「そんなに死にたくなのか? ここで生き残っても、余命そんなに無いだろうに」
余命がたぶん数年とかそんなだろコイツ。
生きる事に執着するなぁ。
俺なんて………いや、思い出すとろくな死に方してないな。




