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24.邂逅、前夜


 ゴッキースタイルの俺は、チゴヤ商会の中を探索していた。

 広い。

 ただ、ただ広い。


 カルナとかいう、白虎の毛皮を着た乗り物は捨ててきた。

 なにせ、汗をかいたと風呂へと向かったからだ。

 ゴッキーにお湯は天敵。

 レベル38を持ってしても、危険だ。

 風呂場までついていけば、まず生きて帰っては来れないだろう。

 仕方なく、乗り心地の良い愛機を手放したのだ。

 風呂へと、ついていくことにも心を惹かれたが、俺は紳士である。

 覗きはしない。

 アキリアとは違うのだ。

 ちょっとだけ、綺麗なあの子の裸には未練があったけれども。

 俺は紳士なゴッキーなのだ。

 そんな事を考えながら、カサカサ進む。


「にしてもデカイ建物だな。アキリアこの中になんかオモロイもの無いか?」


 ………ん〜。変だ。アキリアからの返事がない。


「福音発動」


 鐘の音が鳴らない。

 福音スキルが発動しない。

 なぜだ?

 ………今までこんな事は一度もなかった。

 呼ばなくても、向こうから来てたのに。


「ま、いいか。便りの無いのは良い証拠っていうしな」


 アキリアGPSが使えないのは不便だが。

 建物内の探索にGPSは、いらんかな?


「む………」

「………」


 廊下を我が物顔で歩いていると、セルバンテスとかいう執事と目があった。

 さっきは気が付かなかったが、凄え。

 この執事めっちゃイケメンじゃね〜か。

 初老。銀髪。尖った耳。

 思わず見惚れてしまう。

 同性なのに、心がトキメク。

 この屋敷の人間は、顔採用してるのかな?

 つ〜か


「あれ? コイツエルフじゃなかろ〜か?」


 転生後エルフ初発見か?

 しまった。

 こんな時にアキリアいないと確認できないじゃないか。

 イケメン執事は、なぜか優雅に白手袋を装着し始めた。

 次の瞬間。

 神速の動きで、俺を掴みに来やがった。


「危な」


 間一髪かわす。

 が、


「コイツ、ヒゲやバーナードよりも速い」


 とんでもない強敵との命をかけた戦いが始まった。

 なんて事だ。

 理不尽だ。

 俺は、悪い事はまだ何もしていないのに。

 カルナとかいう、可愛らしいネーチャンの風呂すら、紳士的に覗かなかったのに。

 このイケメン執事は、この俺を即座に殺しに来やがった。

 使用人の客に対する躾がなってないぞ、この商会。

 速い。速すぎる。

 この執事。

 こんな事なら、風呂を覗いとくんだった。


「く、レベル38ゴッキーの俺を、ここまで追い込むとは」


 逃げ切れん。

 イケメン執事は、阿呆ほど速かった。

 そのスピードをいかし、巧みにこちらを追い詰めてくる。


「こうなれば奥の手だ」


 ゴッキーは部屋の扉に少しでも隙間があれば、

 ドアを開けずに入る事ができる。

 それを生かして、タイミングをはかる。

 一瞬イケメン執事セルバンテスの視線が外れた隙を狙い、廊下から、部屋の中へ逃げ込んだ。

 

「ふ、頭脳の差で俺の勝利だ。どこに消えたかわかるまいて」


 とか気取って言ってみた。

 だが、怖いので部屋の外にしばらく出られんぞ、コレ。

 仕方ないので、薄暗い部屋の中をゴソゴソする。


「いい匂いだ」


 なんだかとても落ち着く匂いがする。

 すると


「ありがとう」


 と、返事が帰ってきた。

 あれ?

 俺今ゴッキーだぞ。なんで会話できるの?

 会話した相手もゴッキーかな?

 キョロキョロと、ゴッキー探すが見当たらなかった。


「誰だ? 何処にいる」

「こちらです。ベッドの上に寝ていますよ」


 ベッド?

 う〜む。

 そう言われてもな。

 ゴッキーにとって、ベッドの高さは驚異なのさ。

 羽を広げてブーンと空を飛ぶ。

 上からベッドを見下ろした。


「………………コレは」


 息をのみ絶句する。

 ベッドの上に寝ていたのは、やせ細った人間の女だ。

 まるで疫病神かゾンビのような顔をしている。

 とても長い金髪だけが、

 かろうじて生きている人間らしさを感じさせた。

 いい匂いが、そのやせ細った体からしているのが不可思議ではある。


「驚かせてしまったらすみません」

「いや。まぁ………」

「醜いでしょう。私はもうすぐ死ぬのです」

「なんと」

「ですが、死ぬ前に最期に貴方に、会う事ができた。嬉しい」


 俺、なんかしたっけ?

 ???わけわからん???


「どういう事だ?」

「私は、これで神からくだされた、最低限の役目を果たすことができます。よかった」


 よかった。よかった。と、はらはら女は涙を流しはじめた。

 ようし。わかった。

 わけわから無い事がわかった。


 たぶんアキリア案件だ。これ。

 アキリアが、何かやりやがったな。

 声が急に聞こえなくなったと思ったら、これだ。

 こんな罠を仕掛けてくるとは。

 でも具体的に、どんな罠だ。

 これ?





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