表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

224/306

224、発情期94、レオナルド侯爵

 


 驚いた。

 全く気配に気がつかなかった。

 気がつかないうちに、誰かが勝手に俺の体の上に乗っているんだ。

 白いダブっとしたサイズ大きめの服を着た人間。

 銀色の仮面をつけている。

 肌は全く見えず。

 ただ仮面にあいた2つの穴から、黒く黒く輝く瞳が見える。


「誰だ。お前は!」

「あ、バレちゃった? もうちょっと、君達の話を盗み聞きしたかったのだけれど。つい神をディスる誘惑に勝てなかった!」

「な、ん、だ、と?」

「いや〜神の悪口を神の前で言うって、罰当たりで、楽しいねぇ。癖になっちゃいそう」

「え………お前もアキリアをディスってた?」

「そだよ。神の悪口を言う君の頭達に紛れてディスってれば、何言っても僕はバレないと思ってたんだけど………つい嬉しくなって、油断した。見つかっちゃった」


 俺の首の一本に手をかけてバランスを取りながら、失敗失敗とケラケラ邪気なく笑う銀仮面の人間。

 既視感デジャヴ

 見た事ある。

 なんだコイツ。

 ………格好がグドウ伯爵によく似てる。

 肌を露出させない服装に仮面。

 一度存在に気がついてしまうと、目が離せなくなる存在感。

 そして………特に仮面が色違いながらも………

 グドウ伯爵のつけてた仮面に、よく似ているデザイン。

 声は全然違うけど………

 でも………

 

「お前グドウ伯爵! か? 追いかけて来たのか?」

「違うよ」


 しれっと否定するが………コイツ。

 グドウ伯爵か?

 ………い、いや違う、か?

 姿はグドウ伯爵によく似ている。

 だが

 銀色の仮面から覗く唯一露出した目に、グドウ伯爵のような、追い詰められて狂った、悲壮感と狂気が無い。

 地獄の様な格好いいハスキー声色でもないし。

 それどころか、コイツ………

 何だか暖かい。


 なんだコレは?

 声も………

 それより何よりも、柔らかく優しい目をしている。

 銀色の仮面に空いた2つの穴から覗く2つの輝き。

 宝石の様に綺麗な輝く優しい目玉。

 思えば………俺は、今迄の竜生。

 こんなに優しい目で、誰かに見つめられた経験があっただろうか?

 ふと、そんな事を考えてしまう程には優しい目が、俺を見上げている。

 狂気に満ちたグドウ伯爵が、もしも、こんな目を、できるのならば………

 俺はグドウ伯爵に執着し無かったかも知れないし………

 あるいわ、狂喜して喜んだかも知れない。

 グドウ伯爵から、こんな目で見つめられたらと思うと………それだけで果ててしまうかも知れない。

 

 でもコイツ………格好はグドウ伯爵によく似てる。

 全くの偶然、似た格好をしているとは考え難い。

 てか、本当に誰だコイツ。

 図々しくも、しれっと俺に気が付かれずに、俺の背中に乗ってるし。

 今の俺、巨大なヤマタノオロチだぞ。

 どんな度胸と技量だ、コイツは?


 そうだ!

 困った時の神頼み。

 

「おい、アキリア。コイツ、グドウ伯爵か?」

『違う………………薙ぎ払え!』

「え? 今なんて言った?」


 かつてない程に、切羽詰まったアキリアの声。


『ソイツがレオナルド侯爵だ。薙ぎ払え。絶対に逃がしちゃ駄目だ』

「お、おい。何言ってる? そもそも、お前レオナルド侯爵とは戦うなって言ってたじゃん。言う事聞くつもりは無かったけど」

『事情が変わった。殺るんだよ。イケ』


 おいおい。

 何かアキリアの様子がおかしい。

 テンパってる?


 いやまて、そうじゃない。

 考えろ。

 それどころじゃない。

 コイツがレオナルド侯爵だと?

 俺の目標?

 グドウ伯爵の想い人?


 ここは、ただの田舎街道だ。

 近くに人里すらない。

 何だってそんな所に、俺の目標のレオナルド侯爵が?

 侯爵ってさ、屋敷や城にふんぞり返ってるものじゃないのか?


「いや、イケと言われても、心の準備が」

「へぇ? 狙いは僕だったのか? なるほどなるほど。急に巨大なヒュドラが現れたと聞いて驚いたのだけど。ナルホド。目的は僕か?」


 レオナルド侯爵は、優しく微笑う。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ