221、発情期91、待ち伏せ
てか、あぁ。
破壊してしまった周囲を確認してたら、騎馬が見えなくなっちまった。
逃げられたか。
まぁ特に仕留める理由ないし、良いけどさ。
『しっかし、逃げる騎馬兵隊1人も始末出来ないのに、君は本当に、レオナルド侯爵とやらと戦う気?』
「悪いか?」
『グドウ伯爵よりも強い相手でしょ? 勝てるわけ無いじゃん』
「ぐ。た、戦ってるうちに、この体に慣れるはずさ」
………でも念の為。
少しは体に慣れる練習しとく。
ちょっと休憩がてら、長い首をウネウネさせて遊んでみる。
8本の長い首の使い方がネックなんだよなぁ。
それさえなれれば、格段に強くなれるはずさ。
ーーーーーー
ちょっと休んでから、ゆっくりと移動を再開すると………
げっ!
「困った」
『そりゃあ、ねぇ』
「まさか、こんな事になるとは………」
『いや、予想できたでしょ』
街道を歩いていると、遠くに、ずら〜〜〜っと人間達が集まって並んでいた!
数は数十人くらい?
集まった人間達は、手にいろんな武器を持っている。
こっちを見て騒いでるのがわかる。
「あれ、アイツら俺狙ってね?」
人間達には、あんまり身なりに統一性が無いので、兵士では無いのかな?
傭兵か冒険者か自警団か?
そんな感じがする。
『君は、ちょっと暴れすぎたんだよ』
「あ〜。指名手配でもされたか? にしても動きが速い」
暴れてから、そんなに時間もたってないのに。
『………君みたいな目立つ巨体が、大暴れしたら、そりゃあ大慌てで対策取るさ。近くに町とかあったら、住民には緊急の恐怖でしか無いし』
「あ〜あ。俺、悪いドラゴンじゃ無いのに」
『どの口で言ってんの? 街道ボッコボコに破壊して、馬に乗った人間を追いかけ回してれば、こうなるさ』
「………ちょっと調子にのりすぎた」
『どうする? キルす? チョロす?』
「だからな。オマエそんなに好戦的になるなよ。俺は、あの人間達に興味無いよ」
『でも………あの様子じゃスルーしても追いかけて来るんじゃ』
………う〜ん、たしかに。
無視して迂回しても、駄目かなぁ?
強行突破しても追いかけて来るかなぁ?
「ぶっちゃけ始末するしか無いかぁ?」
『君もそう思うだろ』
「話しあいで何とかならんかなぁ?」
『話しあいって? 君が? 脳筋の君が?』
「誰が脳筋か?」
『君』
「今の俺を見ろアキリア」
『ん? 何か今までと違うの?』
「口が8個に頭も8個。どちらも1つしかない人間なんて、8つの頭脳と口先で、言いくるめられるはず」
『………』
「沈黙するなよ」
アキリアの奴、黙り込みやがった。
てか、アキリアに脳筋だと思われてたか?
ムカつく。
俺はアキリアよりも頭良いぞ。
何せ、8個も頭があるからな。
ズカズカと無遠慮に人間達の元へと歩み寄っでいく。
………
ひゅんっと何か飛んできた。
………矢?
「あ、アイツら。攻撃してきやがった』
『そりゃあそうだろ。君が近づけば、びびって攻撃するよ』
「野蛮人め」
『そもそも、君に意思疎通出来る知能あるとか思わんて』
「あ! そうか」
そりゃあ巨大な魔物や動物相手に話しかける人間なんていない。
それなら………
こっちから話しかけて、敵対する意思が無いと伝えればよくね?
会話が成立する相手を攻撃するって、なかなか精神力必要になるし。
散発的に飛んでくる矢や石。
別に大したダメージにもならないので、無視して人間達へ近づいていく。
そして………8つの口で
「攻撃をヤメて、ひれ伏せ人間共」
「さもないと、ぶち転がすぞ」
「家族もな」
「家も燃やす」
「ボッコボコにしてやる」
「アキリアへの生贄にしてやろうか?」
「食うぞ」
「愚か者共め」
8つの口で、それぞれ人間達との意思疎通を試みた。
『話し合いじゃなく、脅迫じゃないか! と言うか、変な脅迫混ざってた。僕を巻き込むのヤメテ。そんな生贄いらない。僕への嫌がらせ駄目。絶対に』
おかしいな。
人間達と意思疎通をとろうとして………
どうやらアキリアとの意思疎通に失敗した。




