22道中
ふらふらと白い人影を追跡しながら空を飛ぶ。
やはり白い人影の後をつけるだけでも、気分が高揚してくる。
この調子ならリトルドラゴン形態に戻れるのも、そう遠くは無いだろう。
「う〜ん。よし、慣れた」
「何がだい?」
「もう大丈夫。白虎装備に近づいても、混乱しない自信できた」
「え?ホントに?」
「ホントだ。信用しろ」
感覚的にだいぶ落ち着いたのがわかる。
ま、ワクワク感はあるけどね。
それも慣れた。
俺は冷静だ。
「酔っぱらいの大丈夫ほど信用できないからな〜」
「誰が酔っ払いだよ。そもそも俺は元々ドラゴンだし、適応力高いんじゃね?」
「あ〜。たしかにゴッキーって適応力高いよね〜」
「おい。ゴッキーじゃ無い。ドラゴンだ」
「今の君を見て、ドラゴンだと思う人はいないだろうね」
「………まぁいい。飛ぶの疲れた。持久力無いわ、この体。俺、楽をする」
「へ?どうするの?」
「こうする」
ブ〜ンと、飛び。女の子の白虎装備に張り付いた。
「あ、ゴッキーに張り付かれてる」
「楽チン楽チン」
「最悪だ。バレたらちょっとしたパニックになるね。かわいそう」
「バレなきゃ良いのさ」
人間に乗って移動する。う〜む。素晴らしい。
可愛らしい女の子ならなおさらだ。
「アキリア。この子どこに向かってるか、わかるか?」
「たぶん街じゃないかなあ?」
「そうか。結果オーライだな」
「でもね。君のマッマの首がある街とは、違う街に向かってるよ。いいの?」
なんと。
この辺2つも街があったのか。
「え?マジでか」
「うん。」
「ま、いいか。別に」
「いいの?」
「マッマの首見て、もしも俺がブチ切れたら、街ごと全滅するんだろ」
大惨事だ。
俺も死ぬかもしれんが。
「スキル。デイジーカッター使えばそうなるね」
「なら。この子は、一つの街の危機を救ったんだ。救世主として崇め奉られるべきだね」
「………」
「正直認めたくは無いけれど。この前の戦闘で思った。俺はブチ切れたら、デイジーカッター使いかねん」
そんなんなったら大変だ。
主に俺の命とかが。
「君はそんなに危ない奴ではないと思うけど」
「いや、ゴッキーの身体になって悟ったよ」
「なにを? ねぇなにを悟ったの? ゴッキーから何かを悟った人類なんて、初めてじゃないかな?」
ゴッキーから悟った哲学者や偉人って誰かいたっけ?
便所ネズミから悟った人は、古代中国にいたな。
人生は能力でも才能でもなく、その生きている場所とポジションで決まる。
だっけか?
「制御できない力を持つと、いつか必ず暴走する。暴走するまで力を手放せずね」
「う〜ん」
「だから全生物は身の程を知って………ゴッキーになるべきだ」
「ちょっと待って。結論がおかしい」
「アキリアが変幻スキルを配ってるのも、それが真意だろ」
「違うよ」
「全生物ゴッキー化計画を推進する神アキリア。俺は、アキリアの恐ろしい真実に気がついてしまった」
なんて奴だ。
邪神じゃ無いかと疑ってはいたが、まさかの全人類ゴッキー化計画を企む、ゴッキーの神だったとは。
俺はトンデモナイ計画の片棒をかつがされていたのか。
「違う違う。何だよそれ。それじゃ僕狂ってるよ」
「ゴッキーの神。アキリア」
「今までいろんな名前つけられたけど、君ほど酷い二つ名で僕の事を読んだ奴はいないよ。覚えときな」
「しまった。真実を知った俺を、口封じする気だな。今のうちに、真実の書とか作って、記録しておかねば」
「しなくていいよ」
アキリアの、げんなりした様子が伝わってきた。
「む、そういえば俺は、今何語で話してるんだ?」
「ゴッキー語だよ」
「人間とは会話も無理なのか?」
「そうだねぇ。可能なら白虎ちゃん今頃大騒ぎだよ」
そうだろうなぁ。
ゴッキーと会話できたら、病院直行コースだ。
にしても白虎ちゃんて。
白虎の毛皮着てるだけで、この子は白虎では無いけれども。
アキリアこの子に興味無くなったな。
扱いがぞんざいだ。