21対人後。○○最強説
火力発電太は、自分が混乱していた時の事を、アキリアから聞かされた。
「なんとそんな事があったとは」
「白虎装備の退魔スキルが、君の何かと反応して混乱したんだろうね」
「むう。それは厄介だな。うかつに近づけん」
「あ、それも一種の退魔効果なのかな?」
どういう事だ?
あ、そうか。
「俺が近づくと混乱する。だから近づきたくなくなるって退魔効果?」
「かもねぇ」
「また、厄介な」
「ま、もう近づかなきゃ良いんじゃない?」
「そだなぁ」
う〜ん。
正直あんな可愛い生き物見たの初めてだったから、追いかけたい気もするが。
今、俺がゴッキーだしね。
追いかけたところで、会話もできないし。
意味ないね。
潰されそうだし。
まずは変幻スキルを、まともに使えるように戻りたい。
「………このまま、もう少し北に行くと街があるよ」
「街に行けば、ゴッキーからもとに戻るための、なにかきっかけあるれば良いけどさ」
「………いっそ白虎の毛皮着てた娘にさ。ついてったほうが精神力の回復早いかもね」
「へ?なんで」
「君さ。今、だいぶ自信を取り戻してない? 心折れてた面影ないよ」
「言われてみれば………………ヒゲ達に勝ったしなぁ」
「変幻ためしてみなよ」
確かにやろうと思えば、人間には変幻できそうだ。
そのくらいには、気分が良い。
だが。
「まだリトルドラゴンには、なれそうにないし」
「そこまで精神力回復してないかい?」
「うん。それに装備無しの全裸人間状態で、このヘンの魔物に会うと思うとゾッとする。俺ゴッキーで行くよ」
「ゴッキーで行くよ。は、新鮮な言葉だね。そんな事を言うのは君くらいだよ」
なんかアキリアあきれてるな。
「ほっといてくれ。この体だと魔物に狙われないし。強いんだぜ、この身体。まるで恐怖を体現したかのような、人類の天敵」
「ゴッキー過大評価しすぎでしょ。それ」
「人類がどれだけ強力になろうが、最終的には人類のほうが先に滅びるさ」
汝、人類がゴッキーを覗くとき、ゴッキーもまた人類を覗いているのだ。
「………それはあるかもね」
「つまり。ゴッキー最強説をここに推したい」
「だいぶおかしな事言ってるね」
「人間、ドラゴン、ゴッキーの三種族を体験した俺が言うんだ。間違いない」
経験者は語るのだ。
「あ、駄目だこれ。まだ混乱してるね」
「ゴッキーが皆立ち上がり、人類に宣戦布告すれば。その日。人類は恐怖に包まれることになるだろう。滅びるかもしれない」
「どうすれば、もとに戻るんだろね。この患者さん」
取りあえず、街を目指す。
途中で白虎毛皮のビキニ見かけたら、ついていこうって方針になった。
「そういえば、ゴッキーや人間以外に変幻できないの?」
「う〜ん。そだね。やって見るか。変幻発動。狼」
再戦を誓った我がライバルの姿を思い描く。
アレは良かった。あれになりたい。
………………。
すると、そこにはツヤツヤと、エラく艶のある黒光りする、ゴッキーがいた。
ゴッキーレベル38にふさわしい艶だった。
「やったね………またゴッキーダネ」
「なんでだ?」
「きっと、イメージ力が足りないんだよ」
「う〜ん。そう言われてもな」
「君は今ドラゴン。前世卵。前前世人間だからね。その三つは無意識にイメージできるはず」
「ああそうかもな」
「でも、それ以外はイメージするのが難しいのかもね」
「ゴッキーは? 俺は前前世より前に、ゴッキーだったのか?」
「アレは妙にインパクトあるから、元人間なら誰でもイメージ出来るんだなコレが」
「まじで?」
「どの世界の人間からも嫌われてるしね。アレをイメージしてごらん」
ゴッキーを頭に思い描く。
めっちゃ簡単だ。
ゴッキーが、カサカサ歩く音までイメージ出来た。
なんでだよ?
なんで簡単にイメージできる?
「やっぱりゴッキー最強じゃね?」
「だからね。僕は人間経験者に、変幻スキルを配るのが好きなんだよね。皆心折れると、簡単にゴッキーになるんだもの」
「アキリア最悪だ」
性格が悪すぎる。
が、俺以外の人がゴッキーになって、凹んだ姿を想像すると、笑けて良い気分になってくる。
なんでだろ?
「ゴッキーを気に入る君には、がっかりだよ。もっと絶望感出してほしかった」
「我と戦う人間には、絶望をふりまいてやる」
「………………それも良いね」
とかゴッキー話に花が咲いた。
何だか不気味な花だった。
「あれ、白虎の毛皮の娘、あっさりいたよ。見つけた」
「俺にはわかんないな」
「あの白いの。白虎の毛皮は白いから、夜に目立つんだよ」
おお確かに、暗闇の中。白いものがいる。
「ああ、ホントだ。目立ちすぎてるな。ゴッキーの黒色分けてあげたい」
「それはもらっても困るよね。きっと』
「むむむ。このままじゃヒゲに見つかるかもな」
ヒゲ達も追ってくるだろね。
「どうするの?」
「齧る。じゃなくて」
「また混乱しかけてる?」
なんか漲る。
全身に力が…………。
「ああ、そうかも。近づくとテンション上がる」
「う〜ん。それ徐々に精神力が回復してるのかも」
「まじか〜」
「白虎とドラゴンは、仲悪くてよく戦ってるし、近づくと本能が目覚めるのかもね。君はゴッキーだけど」
「何? それだ。よし。あまり混乱しないくらいの距離。つかず離れずついていって、精神力回復を狙ってみるか」
ドラゴンに戻れるくらいに精神力回復したい。
エロ可愛い白虎ビキニ娘の後を、ゴッキーが追跡し始めた。
ヒゲ、バーナード、ゴッキーの三人に追われるとは。
いったい前世で、なんの悪さをして、こんな罰ゲーム受けてんだろ?この子。
きっと美人なのが悪いんだ。
可愛い娘は、男に追いかけられる運命さ。