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207/306

207、77、なな


 やる事は決まった。

 恋敵を殺る。

 だがその前に、腹が減っては戦はできない。

 牢屋の中で残りの食事を。

 ………

 ガツガツ。

 牢屋番の男が持ってきた大量の食事を食べる。

 皿の上にのった、最後の魔物肉まで、たいらげる。

 趣の違った素朴な料理は、口にあった。

 

「御馳走様。美味しかった」

「そりゃ良かった」


 手を合わせて、行儀良くご馳走様をする。

 俺は何時も御馳走様と、手を合わせる訳ではない。

 が、美味い物に出くわした時は別だ。

 美味い物と料理人には敬意を払うべきだ。

 それが、食いしん坊の流儀だと思う。

 竜は強い者と、美味しい者に敬意を………

 あれ?

 食べて美味しい者と、美味しい者を作る者かな?

 ………………

 考え込むと、何だか物騒な考えに思い至りそう。

 ま、どうでも良い。

 が敬意をはらう。


 兎にも角にも満足した。

 ぽんぽんとお腹を叩く。

 満腹になったおかげさまで………気力も満ちた。

 ヤレル。

 腹が満ちたおかげで………

 ………自信。

 根拠の無い自信が、腹の底から溢れてくる。


「………じゃ、恋敵のレオナルド侯爵ヤッテ来るわ」

「待て待て待て。だから辞めろって」

「やめない」

「落ち着け」

「落ち着かない! ちょっと暴れて牢屋破壊するわ。まきこまれて死ぬなよ」

「待て待て待て。お前、本気か? くそ。やべぇ、本気っぽい」


 ワタワタ慌てて、その場を離れる牢屋番。

 それで良い。

 少し話して情がうつった相手。

 そんなのを巻き込むのは後味が悪い。


 牢屋番が視界から消えたのを確認してから……、

 集中

 竜変幻スキルには、集中力と覚悟が絶対的に必要だ。

 ここからは、他人に気を使う余裕など無い。

 竜変幻スキルに必要なのはイメージ力だったか。

 スキルのコツは少し掴んだ

 イメージ。

 強敵を仕留めれるイメージ。

 そしてヤマタノオロチのイメージ。

 伯爵、………欲しい。

 いや、それよりも………

 侯爵、………嫉妬、

 強さ。

 恋? 愛? いや、やはり嫉妬心か。

 具体的には熱、灼熱。


 手に入らない伯爵。

 自分が欲しいものを、欲しいとも思わぬ侯爵。

 俺が手を伸ばしても届かない者を、粗末に扱う侯爵。

 許せん。


 せめて、侯爵が伯爵を大事にしていたとしたら……、

 伯爵はたぶん、ああいう哀れな狂い方には、ならなかったのでは、ならなかったのでは?

 ならなかったのでは!

 やはり許せん。


 しかし………

 ………仮に伯爵と侯爵が、仲良くしてたとしたら。

 それはそれで許せん。

 許せん。

 嫉妬熱。

 醜い自分の嫉妬心。

 ………醜い自分の感情を楽しむ。

 噛み砕く。


 グドウ伯爵の在り方を、美しいと思ってしまいました。

 そのせいで心が焦がされる。

 まだ見ぬレオナルド侯爵………

 嫉妬!

 嫉妬心に焦がされる。


 嫉妬心に焦がされる使徒。

 嫉妬使徒。

 あ、何か行けそう。

 イメージ出来る。

 嫉妬に焦がされる8本首のヤマタノオロチ。

 イカれた幻想。


 そのイカれたイメージのままに、竜変幻スキルを解き放つ。

 【10%の確率で死ぬよ】

 自称神の言葉が頭に浮かぶ。

 ………でも気にはしない。

 俺はアキリア言う所の壊れた竜。

 死ぬ事を恐れない。

 そんな物を恐れていては、竜とは言えない。

 竜生を楽しめない。

 リスクを楽しめてこその竜。


 ………ふと思った。

 死んでも生き返るから、死を恐れないのか?

 死を全く恐れないから、生き返るのか?

 今の俺の体は人間。

 今の俺の心は自由な竜だと思っていた。

 けれども、もしかしたら?

 ………俺の心は今ですら、

 もしかしたら、俺の心は竜のものでは無く

 死んでも蘇るドラゴンゾンビの、それかもしれない。

 ………

 ………………

 まあ良い。

 細かい事は気にしない。

 竜でもドラゴンゾンビでも、どっちでも大差は無いよ。

 細かい事は気にしない強さと、おおらかな心。

 最強種ドラゴンの特権。

 リスクを………死すらを恐れず、何度も挑め蘇れ。

 リスクを楽しめドラゴンゾンビ。

 






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