202、発情期72、ヤマタノオロチ
浮気の責任をなすりつけられつつあると知り、驚愕するアキリア。
ようやく気がついたか?
俺の罪は、お前の罪だ!
「そうだよ。頑張れ」
『駄目だ。ソレは駄目だよ』
慌てるアキリア。
………………
無理も無い。
だって………
「気がついた? 俺の言葉を否定する材料は特に無いだろ?」
『き、君ねえ』
「俺の身代わりに責任かぶって、セーラに潰されてくれ」
『されるか〜。てか、ふざけないでよ』
「本気ですが、何か?」
『きみ………!!!』
「全ての記憶を、アキリアに再び取られたんだ。仕方ない。コレはもう仕方ないんだ」
『取ってない。僕そんな事やってない』
「一度、記憶取ってるし前科あるし、お前有罪」
『で、でも。今回は無実だ』
「しかも余罪も有るだろ、お前」
『!!!』
セーラとの会話を盗み聞いた限りでは、
コイツが、俺に内緒で俺に何かをしてるのは、知ってるぞ。
具体的には、何されたか知らんけど………
「あのセーラが、お前と俺の、どっち信じると思う?」
『!!! 汚いぞ。そこまで落ちたか』
「自業自得だ。諦めろ。俺が落ちたとすれば、堕落だの堕天だの、落としたのは、お前だろ。お前のせいだ。お前が悪い」
『!!!』
「最悪の場合。お前は、俺と一緒に地獄に落ちるんだ。一緒に挽肉、ハンバーグにされようぜ」
力強く宣言する。
アキリアには、何やら随分とイロイロ、もてあそばれた気もするし。
ここらで、1つ反撃できたかもしれない。
ちょっとだけ、胸がすっとした。
『サイアクだ。やっぱり君は最悪だ』
「そんなに褒めるなよ」
『褒めてない。炭酸の抜けたジュースみたいに、ヘタレ竜になったかと思ったら。酷い。悪魔だ。鬼』
「何とでも言えよ。気にしない」
『気にしてよ。何だ君? 急にやる気出して、何があった?』
「恋………俺みたいなのに動機とか、与えたらそりゃあ」
………伯爵の影響か?
何か胸がときめく。
心がワクワク。
『二又野郎。クズ男。浮気竜。女の敵』
「俺はドラゴンだ!」
『??? それがどうかしたの?』
「ヤマタノオロチって知ってるか?」
八本の首を持った怪物。
ヤマタノオロチ。
『うん………』
「オレ、ヤマタノオロチかも知れない」
『どゆ事だよ! さっぱり意味がわからない』
「二又とか、どうでも良いだろ。ハチマタ迄は赦されるドラゴンに、俺はなる」
『………』
「………」
一瞬無言。
『馬鹿だろ、君は。大蛇って、竜じゃ無くて蛇だし』
「細かい事は気にするな」
『ソレに、ハチマタ? そんなの刺されるよ。女舐めんな』
「刺されるのが怖くて、恋愛が出来るか〜!」
『できるよ。君のそれ恋愛じゃ無い。恋愛はもっと綺麗なモノで、君の、それは汚いモノだ』
「ヤレヤレ。お前は、真の恋愛と言うものを、どうやら理解して無いな。コレだから………」
『僕を責めるの! いや、絶対に君が間違ってるよ、ソレ』
「全く。馬鹿と話すと、話が噛み合わなくて困る。半魚人の言うとおり。アキリアって馬鹿だったんだなぁ」
ヤレヤレと、大袈裟に首を降る。
『僕が馬鹿? 馬鹿は君だろ!
壊れてるのか、君は!
………
………………
………………………
あ!!!
そう言えば。
この竜………
壊したの僕だった』
………
おい、待て。
「誰が壊れてるって。俺は正常だ」
『壊れた人は皆そう言うんだよ。狂人に自覚症状など、無いんだから』
「人を何だと………まぁいい」
『いや、良く無いよ。君の行動は、問題だらけだよ』
「グドウ伯爵は、俺が何とかするから、セーラへの対処は任せるぞ」
『知らない。知らないよ。どうして僕が、君の浮気の尻拭いを………』
「慈悲深き女神様。慈悲深く頼む!」
『ちょっと、それ慈悲深き女神の使い方間違ってるって』
「いや、これ以上無く、正しい使い方だろ」
『浮気の尻拭いをする慈悲深き女神が、何処の世界にいる?』
「………ここの世界? アキリアは、俺の浮気の尻拭いをする為に、慈悲深き女神になったのかも知れない」
『神を、何だと思ってるんだ。君さぁ〜』
「使い捨ての身代わり人形?………」
『君さぁ、………』
心底あきれる声。
だがそれくらいでは怯まない。
「発情期スキルをくれたのは、お前だし」
『!!!』
「おかげでヤマタノオロチになれそうだ」
この事実だけで、アキリアは無罪では無いと主張したい。




