195、発情期65、無力化
くそぅ。
もう………やるしか無い。
カルナシールドは使わない。
ああ、は言ったが、アレは俺にメリットが無い。
実際はカルナ、盾にもならないだろう。
グドウ伯爵からは、怨みや怨念を感じる。
ソレは使徒や神に対するもので、ああ言っときゃ、カルナは安全だろ。
………たぶん?
問題は伯爵にロックオンされてる、俺だ。
どうやっても追いかけて来そうな執念を感じる。
危機回避するには、勝つしかない?
か?
逃げても、後ろから貫かれそうだし。
勝算は………
勝算は………
1番の希望は………グドウ伯爵の疲労。
正面からの撃ち合いで、既に前回負けてる。
普通に戦っても勝てそうに無い。
それなら、セーラとの戦闘中に漏らした、伯爵の弱気疲労発言に、かける。
幸いコッチは、まだまだ元気。
となれば………良し、決めた。
大きく息を吸い込む。
「ミギャン」
「………」
先手必勝
火炎弾を吐き出すドラゴン、俺。
上空から、地上へと落ちる火炎弾。
伯爵は右手で俺の火炎弾を打ち払う。
既に、この手札は見せた。
対処されるのも織り込み済み。
例え、跳ね返されても、知った事か。
コッチも伯爵の反射スキルは、織り込み済みだ。
自分のドラゴン鱗。
ソレを穿け無いレベルの手加減した火炎弾を吐き出す。
コレなら跳ね返されても、問題は無い。
根くらべだ。
伯爵のスキルも多分使えば使う程、消耗するはず。
正直、マトモに勝てそうに無い以上、奇策に走るしか無い。
が………
特に良い手が思いつかなかったから、体力的勝負。
先手必勝で押し切る。
ブレス連打で伯爵には、反撃の暇を与えない。
連戦で疲労してる伯爵には、何もさせない。
先手必勝、連続攻撃で、体力切れ迄追い込む作戦だ………
「ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン。ミギャン………」
「………」
上空から、延々とブレスを撃ち続ける俺。
地上でソレを全て、片手で弾き続ける無言の伯爵。
正確に俺へ跳ね返される火炎弾は、ほぼ無い。
伯爵にも、それ程の余裕は無いか?
伯爵は、仮面の上に無言。
黙々と片手で火炎弾を弾くから、よくわからない。
俺のドラゴンブレスのコスパと、伯爵のブレスを弾く防御スキルのコスパ。
どちらのコスパが良いか?
疲労で余力少ないのは伯爵、のはず。
しかし、伯爵の防御スキルのコスパが、コチラより良ければ、俺が先にバテるかも。
コッチが先に息切れしたら………
そうなれば、もう………戦闘は絶望的。
一か八か逃げるしかない。
逃げ切れるか不明だけど………
「ハァ、ハア、ハァ。おかしい」
「ふふふふふふふふふ。何が?」
不気味に嬉しそうに嗤う伯爵。
だけど、それどころじゃ無い。
一気に押し切る気が、もう………息切れしてしまった。
ありえない。
こんなにも早く、疲労する筈が無い。
狩場の戦場で、レベリングしていた時でさえ、こんなにも早く息が切れたことなど………
目の前には嗤う伯爵。
「俺に、何か………したのか?」
「ふふふふふふふふふ。私の産まれ付きの呪い。弱化効果のスキルは、私だけで無く、周囲の者にも悪影響を与える」
「え?」
「貴様達、使徒には効果が薄かったらしいが、それでも多少は効き目が………と言うよりも、ようやく効き目が見える程、弱ったと言うべきか………」
「デ、デバフスキル」
「大抵の者は、私の前では、長時間立つことすら出来ない」
「な、何だそれ?」
「貴様等、使徒共は、少し元気が良すぎだ」
「………………」
「何時もよりも、スキルが弱い実感は無かった?」
「………特に無い? しいて言うなら、かけられてるテイムスキルの効果が弱くなってた? くらいかな?」
「テイム? ふふふふふふふふふ」
不気味に嗤うグドウ伯爵。
あ、何だ?
なんか嫌な、感じが………
「私が完全に解いてあげよう。有り難く受けとれ」
グドウ伯爵が、こちらに右手を掲げる。
セーラにしたのと同じ動作。
「しまっ………」
途端に………
空中から落下。
地面に激突してしまう。
痛い痛い痛い。
いや、それどころか、力が抜ける。
巨大な体も、硬い鱗も、翼さえも
………徐々に消えていく。
「何だ竜の使徒。貴様………人間だったのか?」
「竜変幻が………解けた」




