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19白虎

 

月すら無い夜。

 あたりは暗い。

 近場にある唯一のあかり。誰かが作った焚き火が見える。

 その焚き火のほうへ飛んでいく。ゴッキー。


「う〜ん。暗くてよくわからんな」

「人が三人いるよ」

「アキリアわかるのか?」

「まぁね」


 アキリアの探査力、ゴッキーの感覚器官よりも鋭いのか。

 侮れないな。

 ゴッキーは弱い分、周囲の脅威には敏感なのにね。


「焚き火のあたりはどんな感じだ?」

「ん〜とね。もめてるね。野盗かなんかじゃないかな?」

「野盗か。ま、とにかく行ってみるか」

「いくの? 危なくない? 君は今ゴッキーだよ」

「野盗もゴッキーからは何も盗まないって」

「ハハそうだね」


 失うものが無いって凄い身軽だな。

 失うもの。

 は、しまった。

 リトルドラゴンに変幻したときに、服とか剣とかお金隠した場所、もうわからんぞ。


「アキリア。俺が装備隠した場所覚えてるか?」

「ん? ああ、大体の場所ならね。近くに数百人規模の戦場があるんだから、戦闘終わってても、跡残ってるでしょ」


 あ、なるほど。

 戦場跡に行けば良いのか。

 よかった。

 ま、無くしても、変えの効かないものでもないから、最悪無くしても別に良いけどさ。

 む、焚き火にだいぶ近づいて、俺のゴッキーセンサーにも、ようやくハッキリと人間が映る。

 あれれ?


「ヒゲがいるな」

「いるね。それと輸送隊の隊長さん」

「あと一人は。む、大変だ。あの二人。銀髪の可愛い姉ちゃんをさらおうとしてないか?」


 男二人が、露出高い毛皮のビキニ着た銀髪女と、向かい合っている。

 三人とも手に武器を持ってる。

 ヒゲだけ斧を持ってて、あとの二人は剣だ。


「たしかに、そう見えるね」

「ほんの少し目を離した間に、ヒゲ達、人さらいに身を持ち崩したのか?」

「そうじゃないと思うけど」

「わからんぞ。なんせ、俺がその間にゴッキーになってるくらいだからな」


 ほんと。男子三日会わざれば、刮目してみよってのは本当だよな。

 はたして刮目してみた所で、あいつ等に今の俺が見抜けるかな?


「う〜ん。何か事情があるんじゃない?」

「わかんね。にしても攫われそうになってる、エロ可愛い姉ちゃん」

「かわいいね」

「あの娘。何をトチ狂って、こんな人気のない場所で、毛皮のビキニとマフラ〜なんて格好でいるんだ?」


 あんなん夜に魔物に出くわしたらアウトだろ。


「あれは白虎の毛皮だよ」

「白虎?」

「個体によっては、ドラゴンにも匹敵する猛獣の毛皮だから。並の魔物は近づけない。魔除けになるんだ」

「なるほど。んで、魔物のかわりに、ヒゲと輸送隊の何つったか? バーナード? に攫われそうになってると」


 どんな危険よりも、人間が1番怖いのかもしれんのは、どこの世界も同じか。

 ………なんかトラブルの匂いがして、ワクワクする。

 妙に気が高ぶって仕方ない。


「それでどうするの?」

「ま、行ってみるか」


 焚き火のそばの三人に近づいて、わかった。

 これはあれだ。

 駄目だな。

 ヒゲ達有罪だな。

 だって思ったよりも、女の子がスタイル良くて可愛いかったから。

 女の子の銀髪が、焚き火の炎を受けて幻想的に綺麗だった。


「判決。ヒゲとバーナードに死刑を言い渡す」

「何を言ってるんだい? 君は」

「だってみなよ。あの可愛い銀髪の娘。あんなんに、斧突きつけてる時点でアウトでしょ」

「いや、それだけでは、なんとも」


 見た目が犯罪的なら、犯罪で良いじゃないか。

 だって………。


「あの娘良いなぁ。見ているだけで、ヨダレがでる」

「ああ、なるほど。わかった」

「なにが?」

「白虎の毛皮の影響が、変な方に出てるんだね。君も魔物だからね」

 白虎装備の効果?

 そんな事はない。

 俺はまともだ。


「なんて美味しそうなんだ。齧りたい」

「ヒゲ達よりもコッチを止めないとね。あの娘もゴッキーに齧られるのは嫌だろうし」

「待ってて〜。今齧りにいくよ〜」

「駄目だって。落ち着いて。せめて助けに行くって言ってくれ」


 ドキドキワクワクした気持ちのままに、空に舞う。

 ゴッキーは夜空に羽ばたいた。

 




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