188、発情期58
………ヤバイ
本格的にヤバイ。
カルナがやばくなってる。
「姉さんが、ああなったのは義兄さんのせいさ」
「違う。きっとアレは産まれた時から、ああいう生き物だ」
「責任逃れしないで。逃げてんじゃないさ〜」
「な、なんで、そんなに俺と姉をくっつけたがる?」
「そ、ソレは………」
「セーラを見ろよ。お前の仮説が正しければ、セーラ。竜に、なりかねないぞ。良いのか?」
セーラドラゴンなんて爆誕しようものなら、何が起こるかわからんぞ………
マジで………
「竜になられる方が、魔女になられるよりも百倍マシさ〜」
「ええ〜???」
「姉さんの、あの姿が、義兄さんのせいなら。義兄さんアンタ、姉さんの魔女化を止めれる救世主さ〜」
カルナの奴。
全力でセーラを、俺に押し付けようとしてやがる。
………俺には理由は理解でき無いが。
たぶんセーラの母親の魔女。
ちょっとだけ話を聞いただけだが………魔女。
それが相当なトラウマを、カルナに植え付けているのだろう。
だからセーラの魔女化に、危機感を覚えてると予想する。
「お前な。魔女の変わりに、セーラドラゴンになられちゃ、本末転倒だろうが?」
「少なくとも姉さんが竜になったら………」
「なったら何だよ。何が起きると思う?」
「最終的には………美竜の雄集めて、逆ハーレム作ろうとするだろうから、人間様は安泰さ〜」
「おま、お前。ふっざけんな。それ、俺とか、犠牲者第一号待ったなしじゃね〜か」
「人類の美少年、美青年、イケオジ。各種イケメン様の為に犠牲になるさ〜」
「ふっざけんな。同性として、その辺は、むしろ絶滅して構わない。セーラの奮闘に期待する」
「あ〜。今、義兄さん。全人類の半分。女を敵にまわしたさ〜」
「知るか」
「民主的に、多数決とったら、義兄さんと姉さんとくっつくべきに、票が集まるさ〜」
「そんな民主主義が、あるものか。俺、生贄じゃないか?」
「姉さんが魔女化したら、私の将来の恋人とかが、生贄になる〜。それだけは避けないと〜」
「お、お前等………」
カルナさんの頭が、相当に、やばい事になってる。
コイツは、比較的マトモな人間だと思ったけども。
………姉に尻尾がはえた事で、おかしくなったか?
………
………………
カルナ壊れた???
いや………
無理もないか。
正直言ってこの状況。
俺の頭も、いつおかしくなるか?
全く分からない状況だモノ。
だってほら、耳をすませば、聞こえてくる。
グドウ伯爵の、呪いに満ち溢れた叫び声が……、
やっぱ生きてたかぁ。
もう、アイツも、怖くてたまらないんだ。
「卑怯者共が〜〜〜
1対1の勝負ならば、決して負けないものを〜〜〜
私に勝てないと見るや、
次から次へと湧いてきて、
使徒複数人がかりで、私を押しつぶそうとは………
タダでさえ、神の寵愛を受けた、貴様ら使徒が!
卑怯者共め。
不公平だ。
理不尽だぁ。
………………
負けぬ。
まけられぬ。
神にも呪われ、見捨てられた私を………
複数でいたぶるとは、
何処まで、何処迄も、どこまでもぉぉぉお〜
かみは、私をさいなみ、いじめぬけば気が済むのだ
〜〜あぁ。
許せぬ、ゆるせぬ」
グドウ伯爵の姿はまだ見えない。
だが、絶叫は聞こえてくる。
聞く俺の心と頭がおかしくなりそう。
怨念の満ちた声が怖い。
キクダケデ不安になる声。
でも
………
なんと、
なんとなんとなんと
グドウ伯爵からは、そう映るのか?
俺達が!
いや
一理あるぞ。
これ!
ヒャッハーからすれば、大切な誰かの敵討ち。
俺からすれば、ヒャッハーの敵討ち。
セーラは俺を傷つけられた仕返し。
だが、グドウ伯爵からすれば………
ああいう理屈に、なるのか?
『いい〜。本当にいい。想像以上だ。やっちゃえグドウ伯爵。卑怯な半魚人の使徒共を皆殺しだ〜〜〜』
はしゃぐアキリア。
『おい。待てアキリア。皆殺しの中に俺も入ってね?』
『だって見てみなよ。あの執念。決意。ただの呪われた人間なのに、不屈の闘志。カッコイイ。僕、惚れちゃいそう』
『そもそもな。セーラは、お前が連れてきたんだろ。お前も恨まれてるぞ。神を呪ってるし』
『そんなのどうでもいいじゃん。相手の気持ちは関係ないよ。僕がどう思うか? それだけが重要だし」
駄目だコイツも。
頭が、ぶっ飛んだ発想してやがる。
まるでストーカーの発想だ。
どこが慈悲深き女神???
邪神改め、ストーカー神とでも名付けてやろうか?




