178、発情期48
カルナと他愛のない事を話しながら
夜空を飛んでいると。
「そろそろ目的の城が見えるはずさ〜」
「城?」
「グドウ伯爵は、問題児だから………反乱に備えて、小城に居を構えてる」
「おま………それ確実に、何度も反乱起きてる奴の用心じゃ?」
「ま、まぁ、あんまり、いい噂を聞かないさ」
「あ〜やっぱり。具体的に、どんな奴?」
よく考えてみると。
目標のグドウ伯爵の事を、殆ど知らない。
「グドウ伯爵は2代続けて横暴で、強いって噂さ」
「2代続けて?」
「先代が数年前に、自分の子供。現当主に討ち取られたさ」
「ええ〜?」
「討ち取った子供は、そのまま2代目グドウ伯爵を襲名したとか………」
「それは………何処の蛮族の話だ?」
「ま、まぁ。兎に角。その後のお家騒動にも、勝ち残ってる強者さ」
「だろうなぁ。ヒャッハー仕留めるくらいだし」
と言うか、
ヒャッハーが恨んでたのって、時期的にみて先代じゃね?
いや、知らんけど。
どっちにせよ、目標は意外と有能なのかね?
脳筋?
戦争バカ?
内政無能、戦争有能?
そんな感じなのかなぁ?
「ま、気をつけるさ」
「………もしかして。いや」
「???」
「どうでもいいや。遠くからドラゴンブレス連打で、城ごと廃墟にすりゃ、問題ないだろ」
「義兄さんアンタ………」
「この巨体だ。ブレスの威力範囲も多分凄いぞ」
こちとら5Mを超える巨大竜だ。
小さい城なら、ブレス連打で廃墟にすりゃいいや。
グドウ伯爵の生死は問わない。
スッキリすれば、それで良い。
早く帰って反射的にイケメン放流しちまった、アリバイ作らなきゃだし。
ヒャッハーも、それだけすりゃ、満足するだろ。
特に奴に義理があるでも無し。
実は………なんと言うか。
この時点で、俺は大分気が晴れてた。
夜空を飛びながら、カルナと会話をしているうちに、大分ストレスが発散されたようだった。
やはり空は良い。
夜風が気持ちいい。
満月も綺麗で良かった。
だから………って、あれ?
あれれ?
おかしいぞ。
「ん? んんん〜〜〜?」
「どうしたさ?」
「なにか、黒いモノと明かりが見える気が………」
「へ? あ、確かに明るい。あれ目的の城じゃ?」
………よく目を凝らしてみる。
おかしい。
明らかにおかしい。
目的のものらしい城。
どっからどう見ても、かがり火の明かりが多い。
「おい。あれ、戦闘準備してないか?」
「た、確かに」
『君が大量虐殺しないように、グドウ伯爵とやらに、知らせといてあげたよ』
『お前のせいか〜!』
………福音スキルで、アキリアの声が聞こえてくる。
アイツ、マジか。
わざわざ俺の襲撃知らせたんか?
『非戦闘員逃して、戦闘準備しとくだけでも、犠牲者減るだろうしねぇ。僕の仕事は大分楽になるし』
『お、お前………表立って俺の邪魔を〜〜〜』
『君が悪いんだよ』
『なに〜?』
『君が僕へ嫌がらせしようとするから』
『おま………お前〜〜〜』
『嫌なら今から引き返せば良いじゃん』
『………』
『復讐なんて、何の意味もないよ』
『いや………でも』
『大体、君のマッマ殺した相手を見逃したくせに』
『………いや、それは………』
言われて見ればそうだけど。
アルマは………
なぁ?
『なのに、返り討ちにあった双子? そっちの敵討ちはやりたいとか。君はアホなのかい?』
『………………』
『どうなんだい? 復讐とか、やめる気なぁい?』
『………………せっかくだから、潰しとく』
『おい。せっかくって君は………』
「義兄さん。一体何を言ってるさ?」
「セーラに負けた邪神が、俺の頭の中に話しかけてくる」
「じゃ、邪神? 姉さん何やってるさ〜」
『ちょっと君は、何言ってるの? 僕負けてないよ。邪神でも無いよ』
「あ〜〜うるさい」
「邪神の言う事に、耳を貸しちゃいけないさ〜」
『あ〜。この子。僕の事を邪神扱いしてる〜。訂正してよ』
「邪神が城攻めるの、やめろって、うるさくてなぁ」
「ただちに邪神の言う事聞いて、家に帰るさ〜」
「お前………」
「城を廃墟にするとか、義兄さんのほうが邪神さ〜」
『そうだ、そうだ。なかなか良い子じゃ無いか』
あ〜〜〜うるさい。
俺は口を大きく開ける。
ブレスの準備。
目標は小城。
小うるさい二人を黙らせるには行動が一番だ。
ブレス発射。
手応えは、抜群。
巨体にふさわしい重厚感。
目標まで、かなりの距離があるが、コレは当ったな。
満足して、結果を見届ける。
と、小城に命中したと思った俺のドラゴンブレスが、何かに弾かれて軌道をかえた。
「あ、アレ? 何だ? 何が起こった?」
『………』
『アキリア。お前………』
『知らない。僕はなにも知らないよ〜』
嘘付け。
絶対何かしやがったな、コイツ。




