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176、発情期46



「なになに? コレはどうなってるさ〜」


 ひゃあああああああああ

 と愉快な悲鳴が聞こえる。

 空を飛ぶ巨大竜となった俺に、掴まれてるカルナが騒ぐ。

 無理もない。

 目を覚ましたら、いきなり上空。

 地面は遥か下。

 結構なスピードも出てるし、そりゃ怖いか?


「慌てるな。カルナ」


 速度を緩めて、カルナへと話しかける。

 この体、小回りは効かないが、安定性バツグンだ。

 空中でも、無理なくホバリング出来そう。


「え? え? アンタ義兄さん?」

「そうだ。落ち着け」

「こ、これが落ち着いていられるか〜〜〜」

「ちょっと、お前に用があってな」

「それより。降〜ろ〜せ〜〜」

「ちょっとグドウ伯爵を粉微塵にするから、案内してくれる?」

「………………なんて?」

「グドウ伯爵を始末するから案内しろ」


 巨大竜と化した俺の手。

 それに掴まれて、暴れてたカルナ。

 大人しくなったは良いが、驚いた表情でコチラを見ている


「義兄さん。アンタ本気さ?」

「この体を見ればわかるだろ。洒落や冗談で、こんなんなるか?」

「り、理由を聞いて良い?」

「双子の兄弟が、グドウ伯爵に返り討ちにあって殺された。アルマに売られ、アルマ俺以外のイケメンに夢中。セーラにプライドを傷つけられた」


 俺の心は真っ黒だ。


「え? ちょちょっと」

「大あばれしなけりゃ、気がすまない」

「あ、あ〜〜〜姉さんのせいで、また一人。人が壊れた〜〜〜」


 またってなんだ?

 またって?

 何アイツ?

 前科あるの???


「セーラの奴、そんなに頻繁に人間壊してるのか?」

「………姉さん、魔女の娘だから………」

「………」

「人間を追い込んで壊す悪い癖が………」


 何処かで聞いたような話。

 どっかの慈悲深いとか言ってる奴と、なんか、かぶる。


「そうか。でも、俺は壊れて無いぞ」

「いやいやいや。伯爵襲撃しようとか、完全に壊れてるさ」

「意味もなく貴族を襲うのは、竜の習性だ。気にするな」

「気にするさ〜」

「俺はまともだ」

「壊れた人間は皆そういうさ」

「失礼な」

「壊れてる自覚ある奴は、本当は壊れてない。本当に壊れてる奴は、自分はマトモだと、言いはるさ〜」


 なんか失礼な事を言われてる気がする。

 が

 根本的にカルナは間違えてる。


「人間は大変だなぁ〜。俺はドラゴンで良かった」

「いやいやいや。義兄さん。アンタ、ドラゴンだろうが、なんだろうが、立派に壊れてるさ」

「どうでもいいからさぁ。さっさとグドウ伯爵領の方向教えろ」

「こ、断ったら?」

「………………」

「いや、いう。言います。あっちです」


 カルナの指差す方向へ、ゆっくりと翼を傾けて軌道修正。

 普段は閉じている、オデコについてる第三の目。

 それでいてカルナを睨んだら、素直に教えてくれた。

 巨大な三つ目のドラゴン。

 意外に怖いのかもな。

 に、しても。

 よく一瞬で方向がわかったな、カルナ?

 元々なんだかんだで、教える気があって、答えを用意してたか?

 ま、カルナは姉思いだから………

 双子の仇討ちとかには、弱いのかも知れん。

 夜空を飛びながら、目を細める。

 空は良い。

 満月にまでも手を伸ばせば、届きそうな気分だ。

 モヤモヤしていた気分を一瞬だけ忘れる。

 グドウ伯爵とか言うのをぶっ飛ばせば、更にいい気分になれるだろうか?


「チャッチャと伯爵ぶっ飛ばして、朝までには帰るぞ」

「な、なんでさ?」

「アルマにまとわりつく、忌々しいイケメン共を放流したからな。朝になればバレるだろうから。俺がいなかったら、犯人にされる」

「アンタ。何をやってるさ〜?」

「あいつ等。どうせ逃げ切れずに、捕まって罰を受けるぜ。いい気味だ」


 アルマを誑かす悪いイケメンには、罰こそがふさわしい。


「アンタ、何やってるさ〜?」

「悪いイケメン退治』

「姉さんにバレて、怒られるのアンタさ〜」

「セーラが俺とイケメン。どっちの言う事を信じると?」

「信じる。信じ無い。関係ないさ〜」

「何で?」

「姉さんを、そんな雑な嘘で騙せるわけないさ〜」


 あ………確かに。

 セーラ、アイツ頭良かったよなぁ。


「………………どうしよう」

「私、知らない」

「………カルナも居なくなれば、犯人お前」

「ちょっとまつさ〜」

「それが嫌なら、必死で解決方法、思いつけ」

「義兄さん。アンタ無茶苦茶さ〜」


 だ、大丈夫。

 夜はまだ長い。

 朝までには、まだ時間がある。

 考える時間は山程あるんだ。


 俺の中で、途端にグドウ伯爵のボスランクは格が下がった。

 伯爵よりも、その後の言い訳のほうが手強そうだ。

 ………どうしよう?

 ま、最悪、本当にカルナに罪を擦り付ければいいか?



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