175、発情期45、真っ黒変幻
従順なふりをして、夜を待つ。
今までと違って、反抗する気満々だ。
アルマの興味が、俺から他のイケメンに移った為
自由度が格段に上がった。
ドラゴンテイムスキル、弱点がある。
命令されない事には、逆らう事も不可能では無い。
アルマ本人には、感情持ってかれてるので反抗は難しくても。
セーラに従えと言われてるセーラならば、
命令されなければ、逆らえる。
こっそりここを抜け出してやる。
グドウ伯爵領を襲撃だ。
夜
セーラが何時も寝静まる時間。
手に愛用のドラゴンキラーだけを手に、
のっそりと動き出す。
まずはグドウ伯爵領への道案内が欲しい。
ついでに………
静かにイケメン奴隷達が閉じ込められた部屋へと向かう。
当然のように鍵がかけられてる
が、ドラゴンキラーで鍵を切り落とす。
中には、色とりどりのイケメンが十人ほどいた。
思ったよりも多いな。
まぁいいか。
数は多いほうが良い。
「おい。お前等の中で、グドウ伯爵領への道案内が出来る奴、いるか?」
「え? お前ってセーラ様のお気に入りの………」
「そんなのどうでもいいから、質問に答えろ」
「い、いや。俺は無理だ。知らない」
「俺も知らない」
俺も俺も、と結局誰も道案内に使えそうにない。
『そうか。鍵は開けとくから、こっそり逃げろ」
「え? いいのか?」
後ろ手で、ヒラヒラと手を振って、その場を離れる。
アルマに、まとわりつくイケメンなんて放流してやる。
あいつ等逃げれば混乱するし。
………俺の発見を遅らせる煙幕になるかも知れないし。
しかし、道案内はゲット出来なかった。
『くそう。アテが外れた』
『諦めようよ。復讐とか八つ当たりとか』
『………』
『ねえ、なんとか言ってよ』
『しょうが無い。カルナに頼るか?』
アキリアを無視して、慎重に歩く。
この建物内の警備状況は、把握してる。
けれどもイレギュラーは起こりうるし。
イケメン放流したし尚更さ。
放流したイケメン共が見つかったら、ドサクサ紛れで逃げても良い。
お目当てのカルナの部屋の前に立つ。
カルナなら確実に道案内が出来るはずだ。
鍵のかかったドアノブをドラゴンキラーで切り落とす。
『………………カルナ寝てる』
『真夜中だからね〜』
『ま、良いか。騒がれても厄介だ。このまま起こさず、連れてく』
『え? そんな器用な事出来るの?』
『たぶん』
『本当に?』
『この間。豚人間や小鬼を仕留めまくってたときに、生物の取り扱い方覚えた』
『豚人間や小鬼と、その子同類扱いなの?』
『うん………まぁ』
生物には違い無いし。
『………………福音スキルで、セーラって子に告げ口して、君の計画止めてやろうと思ったけれど』
『まて、ヤメロ。んな邪悪な計画。さらっと、たてるな』
『うん。何だか面白そうだし、辞めとこ』
………危ない所だった。
アキリアに見張られてる以上。
あんまり意に沿わぬ行動はとれないか。
厄介だ。
アキリアが福音でセーラに通報。
セーラにペタペタスキル発動。
2手で摘みだ。
………………ヤバイな。
アキリアの意に反して、グドウ領虐殺はむりかな?
グドウ伯爵暗殺に、作戦を変えるべきだな。
そんな事を考えながら、
首につけられた、忌々しい首輪を切る。
ついでに太ももに書かれた
【セーラ】
の名前を皮膚ごと切り落とす。
ちょっと血が出た。
『痛たたた』
『ねぇ。君さ、馬鹿なの?』
『コレでいんだよ。忌々しい。竜変幻スキルを使えば、多少の傷は治るしな』
『………自傷行為は見てて痛いから止めてよね』
『なら、俺が名前書かれてるときに、セーラ止めてくれよ』
『死んだ魚みたいな目で、なすがままセーラの名前を書かれてる君を、見るのが楽しくて………』
『アキリアに何かを期待した俺が間違いだった』
ベッドで眠るカルナを、起こさぬ様に、慎重に肩に担ぐ。
成功。
カルナの部屋の窓を開け放つ。
綺麗な満月。
月の光に照らされた静寂の夜。
さほど大きく無い街並み。
それだけに、夜も静かだった。
いい夜だ。
「竜変幻」
窓から大きくジャンプ。
地面に落ちる前には、竜変幻スキルを開放する。
想いの強さが、変幻出来る竜の強さに比例するスキル。
失敗すれば、命を落とすと言われたスキル。
命を賭けるに値するスキルかって?
力、夢、快感?
それとも憧れ?
それが命に釣り合うか?
久々に思い出した、竜姿を想う。
答えは出てる。
カッコいいと思ってしまった、首の無い竜の姿。
あの姿に、今の俺は何処まで近づけるだろうか?
少しドキドキする。
満月の夜よりも黒く、
闇夜よりも妖しく、
夜空を力強く、自由に舞う竜皮の翼
そんな竜姿に憧れる。
憧れの姿そのままに………
変幻には成功した。
黒い竜。
アレ???
おかしいな?
思ったよりも、巨大になってしまった。
2階建ての家くらいの巨体だぞ。
それ以外は思い通り。
ま、まぁいいか?
大は小を兼ねると言うし。
戦闘には有利だし。
良いのか?
巨大な黒竜と変幻した姿で、夜空へ舞う。
巨体のせいか?
凄い速度だ。
「ひ、ひゃあああああああああ。なに、なに、なにさ〜〜〜」
なんかナビゲート装置カルナが目をさまして騒いでた。




